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思い切りネタバレするので注意。無駄に長い!
大まかなストーリーは昭和がまだ続いていて(昭和99年!)、日本の本土では戦禍が続いているが、本土から離れた佐渡島はまだ平和で、そこで鍍金流(ときんりゅう)という能の流派の家元のもとで切磋琢磨している兄弟、長男(硲・はざま)、次男(吾潟・あがた)、三男(下戸・おりと)の硲の元に赤紙が来て戦死し、誰もが吾潟が継ぐと思っていたところ、家元は下戸を指名し、継ぐつもりだったのに肩透かしをくった吾潟と、継ぎたくない下戸の二人のすれ違いが周囲を巻き込んでぶつかりあう、という流れで、主役は吾潟、と言われているのに何度見ても三男の下戸(おりと)が主人公に見えてしまう。
話の始まりが下戸の幼少時、海で母を求めるところから始まり、話の中での感情が動くシーンや場面が切り替わってくところのほぼ全てが下戸の感情、情動、動きの表現で表され、主役のはずの吾潟は表現は無くはないものの、基本的に踊っている。
戦地に赴く長男を見送るシーンでは、意味ありげに悪寒を感じるのは下戸、長男の葬式を知って駆けつけ、ショックのあまり走り抜けるのも下戸、継ぎたくない、楽しく兄弟で踊っていたいだけだったんだ、と悩みを打ち明けるのも下戸。ここまで下戸の表現が続けば、主人公は下戸では? しかし、プロモーションや広告、名前の表記、役者さんたちのコメント、全ては吾潟がメイン。見終わった時の疑問が半端ない。
鍍金流には「何はなくとも舞い踊れ」との言い伝え? ポリシーがあり、言葉の通り吾潟はひたすら踊っている。吾潟役の松田さんを推してるので、焚き火の中で感情を殺して踊り続けるシーンは非常に格好いいので何度でも見たいが(と言っても、ちょっと長めに2回シーンとしてあるだけ)、では、なぜ「何はなくとも舞い踊っている」吾潟は後継に選ばれないのか。
口を開かず踊っている吾潟に対して、感情をストレートに出していつも周囲に人がいる下戸で、鍍金流としての立ち位置として地域に溶け込んで続けていくには人を集める下戸の方が適任と目されたのかもしれない。
家元を継ぐ条件に踊りの才能は必要ないとでもいうように、常に踊っている吾潟に対して下戸は最後の衝突シーンの砂浜まで踊るシーンは無く、しかしその砂浜のシーンですら「誰も誰の代わりにはなれないんだ」と結論を出すのは下戸。
主役ってなにするひとでしたっけ?
いや、下戸が語り部なのか?
ドローンを使った佐渡島の空撮の風景、自然は清々しくて気持ち良いし、EDの曲も染み入る感じでとてもいい。しかし、最後の乱闘もなぜ? という疑問が出てくるし。赤紙が中途半端にスマホなのも不思議。古いなら古い、新しいなら新しい、でどこか統一感が欲しかった。長男の出征シーンも佐渡島名物のたらいで出発で、笑いどころなのかも分からない(いや、笑っちゃいけないところ)。
戦禍は届いていないとはいえ戦時中なのにいつも本気で大きめのイヤリングをして気合いの入った編み込みの歌見さんも謎(でも画面の華です。かわいいです)。
下戸の友人が吾潟を評して「なんかいい匂いするし」というのも、きっと能の練習中に着ている着物に焚きしめられた香が体に移っている(下戸に比べてそれだけ練習している)とか、そういう伏線なんだろな、とは思うが、もう少し内面の表現が欲しかった(全く無いわけではないのだが)。
ついでに名前の意味をさっくり調べたら、3人とも佐渡島の土地の名前だそうで。でも、舞踊ってるくせに割り切りが悪くて下戸が結論を出すまで内面ではぐずぐず言ってた吾潟の潟の字には引き潮の時に現れる土地のことらしいので、わかりにくく出てこない吾潟の内面を指すのにはうってつけだったのかも?
終盤の乱闘→競り踊ったあと、収録は同じロケで撮ったのだろうに、最後のシーンですれ違う吾潟と下戸が数年たったように老成して見えたのはさすがだなと、毎度感服してました。
でも、長男には学生時代に赤紙来てるのに、下の二人は社会人になってそうでもまだ赤紙来てなさそうで、そのあたりも謎。戦争終結した……? そして、結局鍍金流は歌見さんが継いだのか(あんなに踊っていた吾潟も辞めてそう)? そのあたりの結論は出ないかもしれないけど、出征という形式ではなく本土に行けるなら戦争は終わったのかもしれない。
ここまで打って、アレは主役じゃないよなー……という根源の感想をぶっちゃけて落ち着きました。
舞倒れは気持ちの良い風景と、青春のぶつかり合いが清々しい映画ですよ⭐︎
きっとまた見ます。
追記:これを書いて、主役と主人公は違う、という知見を得ました。主役=最も注目される役割 主人公=視点中心人物 (AIより) なるほど〜。混同してました。
別だと思って読むと混乱する感想だな。
吾潟って最も注目されてた…のか?
この映画を初見で見た時に集団心理の暴徒化みたいな話を読んでたので、乱闘に流れ込むのはなんとなく納得したのですが、突然人数が増え、周辺の説明がほぼないのでやはり唐突感はあるし、勢いで終わらせた感も消えないのはもったいないとは思う。
どこまでも2人の世界でもよかったのに。