「世界一危険な難民キャンプの過激思想」BORDER 戦場記者 × イスラム国 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5世界一危険な難民キャンプの過激思想

2024年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

TBSの戦場ジャーナリスト、須賀川拓氏が普段のニュースではなかなか出せないネタを映画で披露している。今、世界の国際ニュースはロシアのウクライナ侵攻とイスラエルによるガザ侵攻で占められているが、ISISの問題は全て解決したわけではない。こうした今ホットではないネタはなかなかテレビのニュースに載せる余裕がないんだろう。
このドキュメンタリーは、世界一危険な難民キャンプと呼ばれる地で、ISISの過激思想が純化した形で残ってしまっていることを赤裸々に映し出している。
恐ろしいのはその思想が戦闘員の男性だけでなく、女性、そして次世代を担う子どもたちに浸透していること。須賀川氏が話をしようと近づいても話が出来ず、敵意を剥き出しにされる。苦労して話にこぎつけても対話が成り立たたない。ISISの教えが全面的に正義で正しいと本気で信じ込んでいると思しき人々がたくさん出てくる。

対話が成り立たなければ、このような分断状況は改善のしようもないように見える。今は下火であるが、この火種は将来かならず大きな憎悪の炎になってしまうのではないか、そう思わせる強烈な内容だった。

杉本穂高