チェンソーマン レゼ篇

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劇場公開日:2025年9月19日

解説・あらすじ

2022年にテレビアニメ版が放送された藤本タツキの大ヒットコミック「チェンソーマン」の人気エピソード「レゼ篇」をアニメーション映画化。テレビアニメの最終話からつながる物語で、主人公デンジが偶然出会った謎の少女レゼに翻弄されながら、予測不能な運命へと突き進んでいく姿を、疾走感あふれるバトルアクションとともに描き出す。

「チェンソーの悪魔」との契約により「チェンソーマン」に変身し、公安対魔特異4課所属のデビルハンターとして悪魔たちと戦う少年デンジ。公安の上司である憧れの女性マキマとのデートに浮かれるなか、急な雨に見舞われ雨宿りをしていると、レゼという少女に出会う。近所のカフェで働いているというレゼはデンジに優しくほほ笑みかけ、2人は急接近する。この出会いをきっかけに、デンジの日常は大きく変わりはじめる。

テレビアニメ版に引き続きMAPPAがアニメーション制作を手がけ、テレビアニメ版でアクションディレクターを担当した𠮷原達矢が監督を務めた。テレビアニメ版のオープニングテーマも世界的ヒットを記録した米津玄師が主題歌を手がけ、エンディングテーマでは米津と宇多田ヒカルがコラボレーションした。

2025年製作/100分/PG12/日本
配給:東宝
劇場公開日:2025年9月19日

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映画レビュー

4.0 アニメとマンガ、それぞれの『チェンソーマン』。

2025年9月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

〇作品全体
『チェンソーマン』を映像化することは、とても難しいことだ。
藤本タツキの描く原作マンガが、個性の塊だからだ。荒々しいタッチ、少ない線で描かれる特徴的な人物、時折みせるシュールで強烈な表情。そしてなにより、ドライブ感あるコマ割りは、別の媒体では同じ魅力を作り出せない。
アクションや仕草を大胆に抜き、疾走感とインパクトをさく裂させるコマ割りは、読み手によってテンポ感が大きく異なる。それを映像化する時、ワンカットの時間やシーンのつなぎ方は、受け手によってさまざまな違和感を作り出す。これは漫画原作の宿命かもしれないが、『チェンソーマン』はその宿命があまりにも大きい。

本作では「青春」と「戦闘」の二つの要素で整理することによって、「アニメ『チェンソーマン』」として巧く再構築していた。
夏祭りでレゼが本性を出すまでの「青春」の描写は、まさしくアニメの文脈だ。原作では藤本節でドライに描かれていたデンジの恋模様を、一人の男の子として演出していたのが印象的だった。
原作のコマとコマの間にある景色が、丁寧に積み上げられたカットによって意味を成していく。例えばレゼを見つめるデンジの表情。レゼの笑顔や横顔を見つめるデンジを多く映すことで、デンジの想いを映していく。原作では短絡的に見えたデンジの思考(それはそれでデンジの個性になっている)だが、レゼを見つめ、セリフや反応に一拍置くことで「青春の心の揺さぶり」を作り出している。
一方で映像演出によって「戦闘」への布石も置かれている。夜の学校での演出が顕著だ。非常灯の明滅やクモの巣、飛行機の演出はアニメ独自のもので、レゼの本性を場面転換や時間経過の演出の中に織り込んでいる。中でも飛行機の演出は見事だった。レゼを襲う男を屋上で仕留めたあと、起き上がるレゼの真後ろには、赤い警告灯を点滅させる飛行機が遠く映る。ここまではよくある示唆的な演出だが、そのあと、レゼの真上を飛行機が通過する。非常口やクモの巣のような「危険の予兆」ではなく、「危険が今ここから始まる」という異常。これを轟音と飛行機の巨大さで表現してみせた。
レゼ役の上田麗奈の芝居には感嘆のため息が出た。デンジの心をほだす、天真爛漫な明るさと優しさ。一方で行き過ぎた「甘さ」は、こちらも後半への布石として絶妙だった。

後半の「戦闘」のインパクトも素晴らしかった。アクションというのは物語に進展を生まない要素だが、『チェンソーマン』では少し異なる。前半で描いたデンジの青さをぶち壊す残酷さがそこにはあり、ぶち壊されたデンジの感情表現にもなっている。ここが尻すぼみでは陳腐なセンチメンタルストーリーにしかならない。
何が起きているかわからないインパクトだけでなく、ミクロな破壊を描いているのも良かった。ビルを突き破るとき、オフィスにある観葉植物やデスクも吹き飛ぶ。車が吹っ飛ぶときにはサイドミラー付近にカメラを置いて、弾き飛ばされる恐怖を描く。「動き」とともにカメラの置く場所が変幻自在。これはアニメの長所といって良いだろう。

「青春」も「戦闘」も、原作の魅力とは少し異なる。「描きすぎ」と思う部分もあるし、原作のドライブ感を潰していると感じる部分もある。何度も言うが、やはり『チェンソーマン』は映像化が難しい作品なのだ。
しかしコマとコマの間を補完するような映像演出には、そのことをしっかりと踏まえたうえでの表現があった。チェンソーをチェーンとして使ったデンジのように、アニメとしての表現の最適化が見事な作品だった。「原作の再現」ではなく「原作の精神を別の形で伝えること」。それこそが『チェンソーマン』レゼ編のアニメ化の価値だったのかもしれない。

〇カメラワークとか
・アニメの文脈への載せ方は上手だけど、そのアイデアはちょっと既視感が強い。瞳を小さくブレさせる表現は『リズと青い鳥』まんまだし、ビルを突き抜けるアクションは『鉄腕バーディー』だ。そろそろ新しい表現が見たい…

・屋上で窮地に立たされるレゼの表情は素晴らしかった。恐怖が強すぎて顔がけいれんして、笑ったように口角が上がったりする。

〇その他
・作劇の話になってしまうけど、裸でプールに入る二人と「水の中だとボムを発動できない」というラストの重ね方が本当に素晴らしい。「青春」と「戦闘」がバラバラにあるんじゃなくて、物語の中で繋がりがある。演技であれ、「水の中」という弱点の中だ。それでもデンジと関わりを深めるレゼに、デンジが何か感じ取っても自然なことだと感じる。

・音楽がうるさい。テレビシリーズの時から思ってたけど、チェンソーの音でかっこよくなってるところをかき消すような感じがした。牛尾さんの音楽も全然あってない。唯一合っているのって劇中劇の映画のシーンくらいだった。アクションシーンの劇伴はシンプルにダサい。マキシマムザホルモンの挿入歌もチープに感じる。インストバージョンを流したらかなりしっくりきそうだなぁと思いながら見ていた。

・声の力を感じる作品だった。上田麗奈以外にも啖呵を切るデンジだったり、同じ言葉を繰り返すビームから伝わる高揚感が良かった。

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すっかん

4.0 流行りのアニメ映画を、基礎知識ほぼなしのおばちゃんが鑑賞してみたら

2025年9月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

斬新

ドキドキ

水曜サービスデー。今日は何を観ようかな?と上映リストを眺めていて、普段ならスルーするアニメ映画にふと目が止まりました。理由は単純明快──オープニングとエンディングで流れる米津玄師&宇多田ヒカルの音楽が聴きたかったこと、そして少し平穏な日常にスパイスを加えてみたかったからです。

観終わった感想を一言でいえば、意外に哲学的で悪くありませんでした。デンジやレゼの行動や選択には、**イソップ寓話『田舎のネズミと都会のネズミ』**のテーマが色濃く反映されています。都会の刺激や豪華さに惹かれる一方で、そこには危険や不安が潜んでいます。田舎の平穏は安心感を与える──この二択がキャラクターを通して描かれ、私自身も「自分ならどちらを選ぶか」と考えさせられました。

さらに、主人公デンジの性格は単純でわかりやすく、行動にも迷いがないので見ていて気持ちがいい。平成アニメの金字塔「エヴァンゲリオン」の碇シンジのように葛藤や内省の多い主人公よりも、令和という今の時代にぴったり合っていると感じました。これがこのアニメの人気の秘密なのかも🤫とおばちゃん探偵は、推理しましたよ。

また戦闘シーンは迫力満点で、テンポの良さとデンジの直感的な行動が合わさり、物語全体にリズムが生まれていました。確かにPG12の規制があるように残虐な描写はありますが、目を背けたくなるほどの嫌悪感はなく、映像の切り返しの巧みさや、時折挟まれるブランク(音のない時間)のおかげで、緊張と緩和が心地よいアクセントになっていると感じました。
そして何より楽しみにしていたエンディングの宇多田ヒカル&米津玄師の「JANE DOE」※(名前がわからない女性の意)が本当に素晴らしかった。映画全体が急にお洒落な雰囲気をまとってくるから不思議です😎ラストからエンディング、その後の小話までが見どころなので、本編が終わっても急いで席を立たないことをおすすめします。

📝まとめ
「流行りのアニメ映画を、基礎知識ほぼなしのおばちゃんが鑑賞してみたら?」

「思いの外、面白かった〜😎🙌」
が答え。

音楽・テンポ・キャラクター・哲学的テーマのバランスが絶妙で、未知の世界に飛び込むドキドキ感とスカッとする爽快感が同居する作品でした。
とにもかくにも、「チェンソー」を頭にするというその発想💡何処から湧いてきたん⁈斬新すぎます😎
普段アニメを観ない方でも楽しめる、流行と感性の両方を味わえるおすすめの一本です♪

*最低限の基礎知識をお勉強してから観ると、さらに楽しめます。

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ななやお

2.0 セクシーダイナマイトはここでは要らない

2025年9月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

アニメ一期の評判の悪さは知っている。

「原作漫画のタッチに忠実でない」、「色味や線の雰囲気が原作よりきれいすぎる」「漫画の荒々しさや粗さが薄まっている」といった批判があった。

アニメ一期の中村竜監督は、漫画「チェンソーマン」をアニメ化するにあたって、暴力やグロ描写を「極端に過剰化する」ことよりも、原作で起こっていることを「起こった通りに」描写したい。見た目の過剰誇張ではないリアリズムを持たせたい、旨のコメント。併せて、登場人物の日常を盛り込むことにより、原作の「余白」、漫画ならではの「コマ」間の飛躍省略を「起こった通り」埋める、そして「新しいアクション」を生み出すことに注力し、原作の「映画」的なアプローチを映像作品に引き上げるため苦心。

アプローチとしては、映画を作る、ということなのだろうが、そのアプローチが、「余白」を好む原作ファンに嫌われ、派手で動きも構図も3DCGの使い方もしっかり考えられたアクションシーンも「違う」、「過剰」と突き放された。

別物なのにね、と思いつつも個人的には笑い飛ばすテイストのグロは要る、ベタ塗りの黒、禍々しさは要る。音楽は要らないが、チェンソーの音は要る。チェンソーの削るような揺れは欲しいが、切れ味は要らないというスタンスだった。(ああ、言ってみれば、「死霊のはらわた」だね)。

個人的にはあまりそそられないレゼ篇だが、製作陣によると、一期の演出スタイルを踏まえつつ、レゼ篇という感情・ドラマ性重視の章を映画フォーマットでより大胆に描き、アクションやドラマの緩急を強め、観客が没入しやすい流れを意図しているとのこと。

原作との比較はなるべくしたくないものの、製作陣の反省を受けての、

「チェンソーマン レゼ篇」





切ない恋物語にゴージャスな映像。贅沢な音楽に、Mervelな市街アクション。キャラクターのデザインもアップや止め画などは、原作の線に近い。登場人物のカクカクした歩き方も、幼さと現実感のなさが表現されていて、製作陣の原作の読み込みも半端ないことが十分にうかがえて素晴らしい。

原作の、読み手の手が止まる構図でありながら、抜群のコマ割のテンポ感を両立させる構成に対し、スピード感として優先するのも映画ならではの解釈。市街を疾走する車を追いかけるボムの動きや、ビームとチェンソーのコンビとの格闘も、Mervel的なものも取り入れて、非常に見ごたえがある。

原作未読、一期未鑑賞の人は完全に置いてけぼりだが、これもサブスク時代では当然の戦略。

なんだけど、老眼、動体視力低下、難聴手前のメンドクサイおっさんは

ずーっと音楽が鳴っててうるさいのなんの。ボムのどかーーーーん、チェンソーのぶうぉーーーーーんの音だけでいいのに。

なんだけど、せざるを得ないこともまあ、わかる。

オレの好きなベタ塗りの黒の背景が、映画向きでないこともわかる。わかるけど、それに代わる禍々しさが若干足らないのは、少し残念。原作にも台風の悪魔が赤ちゃんである説明はないが、その気色悪さはもう少し画で表現してほしかったか。

だが、ボムの「爆弾頭の、生々しい半裸の女性」の肢体があまりフィーチャーされていないのは仕方ないことなのか。顔がチェンソーの男の子、頭が爆弾の女の子。対比であり、これ以上ない相性の良いキャラクター同士が、ぶつかり合う。人間顔の二人の時のプールのシーンにあった感情は、対決の時もそれぞれの与えられた(縛られた)役目を果たすために殺し合っても、最後は体を「重ねる」。

原作もあまりその辺は強調されていないのだが、思春期の子に、プールの方のレゼではなく、「爆弾頭の禍々しい半裸の女の子」にもっとドキドキさせるような仕掛けを打ってもよかったのでは、と思うが、まあ、思春期世代にあらぬ方向の思春期を送られてても困るか。(じゃあ、プールの方はいいのか、という話にもなるが)

総じて、一期の批評から一部反省修正をし、原作に書いてないことはやらない、書いてある通りにボリュームを増す。製作陣の狙った通りの結果になっていると思うが、個人的には、ぶうぉーーーーーん、ばりばりばりばり、いたいいたいいたいの「チェンソー」ならではの絵が今回もあんまりなかったので、この評価。

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しんざん

4.5 主人公とレゼがベースだが、他の人物、設定も大切なので予習が望ましい作品。

2025年9月24日
スマートフォンから投稿

本作はテレビアニメ版の12話から続き物語なので、アニメか原作のどちらかを見ていないと周辺の人物や設定が理解できず面白さが減ってしまうため事前の予習が望ましい作品です。
テレビアニメ版12話の最後に、不意に「田舎のネズミと都会のネズミ」の話をする女性の声が聞こえてきますが、それが本作のタイトルにもある「レゼ」の声なのです。
私はテレビアニメ版しか見ていませんが、劇場版は、テレビアニメ版の110分の特番のような感じで見ることができました。
テレビアニメ版との違いは、テレビアニメ版では後半の戦闘シーンの作画に力が入っていましたが、劇場版では長さも含めて戦闘シーンの作画に、より力が入っています。
また、劇場版では原作漫画に、より準拠した表現になっているようです。
本作のヒロインの「レゼ」ですが、普通に考えながら見ると、なかなかの人物です。
例えば、出会ったばかりの主人公から唐突に「唾液にまみれた花」を手渡され、それを大喜びして受け取るなど通常の作品では見かけないタイプです。
と同時に、主人公も異常な環境で生きてきているので、いろんな感性がぶっ飛んでいるのですが、そんな2人の関係でも自然に見えてしまうほど上手く表現されています。
そして後半の戦闘シーンですが、基本的には作画も頑張っていて良いと思います。
ただ、エッジを効かせ過ぎていて何をやっているのかが分かりにくいカットも散見され、そこで没入感が薄れて、見る側の集中力が途切れる現象が出るように感じます。
その結果、「後半の戦闘シーンが長い」と本末転倒的に、マイナスに感じる人も出たりするため、もう少し全体の交通整理をするなど別の方向で工夫すると、より良かったと思いました。
なお、エンディング以降にも短めのシーンがあるため、スタッフロールが流れても席は立たず、最後のシーンまで見るようにしましょう。

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細野真宏