「知識量で評価が変わる作品だが、コスプレ映画と割り切る方が良いかもしれない」ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
知識量で評価が変わる作品だが、コスプレ映画と割り切る方が良いかもしれない
2024.2.6 字幕 京都シネマ
2023年のフランス映画(116分、G)
実在の人物であるデュ・バリ夫人を描いた伝記映画
監督はマイウェン
脚本はマイウェン&テディ・ルシ=モデステ&ニコラ・リベッチ
原題は『Jeanne du Barry』
物語の舞台は18世紀のフランス
田舎町の労働者階級に生まれたジャンヌ(マイウェン、幼少期:Emma Kaboré Dufour、10代:Loli Bahia)は、修道院時代に官能小説を読んだりと破天荒な青春期を送り、やがては数々の男と名を馳せることになった
母アンヌ(マリアンヌ・バスレール)の雇い主のムッシュ・デュムソー(ロバン・ヌルーチ)は、ジャンヌを地元の有力者バリー伯爵(メルビル・プポー)に紹介する
デュムソーはジャンヌを国王ルイ15世(ジョニー・デップ)に差し出せば政治的なパイプができると睨んでいた
そこで、バリー伯爵は彼女を宮廷に連れて行き、ルイ15世と会わせることにした
ルイ15世はジャンヌの目の前で止まり、彼女をじっと眺める
思惑は成功し、ジャンヌをルイ15世に引きわせることになったが、宮廷には貴族しか入ることを許されない
そこでジャンヌはバリー伯爵と結婚し、正式な愛人として、宮廷に入ることが許されることになった
だが、それをよく思わないルイ15世の娘アデレード(インディア・ヘアー)、ヴィクトワール(シュザンヌ・ドゥ・ベーク)は彼女をなんとか追い出そうと考える
一方で、彼女らの妹にあたるソフィー(ローラ・ル・ヴェリー)やルイ15世の孫・王太子(ディエゴ・ルファー)はジャンヌを慕い、彼女の宮廷での地位は揺るがないものになっていった
映画が史実ベースのジャンヌの一生を描き、愛人人生とその渦中にあった想いというものを綴っている
ルイ16世の妻となるマリー・アントワネット(ポリーン・ポールマン)の登場によって、その後どうなったかが予見されるのだが、彼女の顛末に関しては字幕で説明するのみになっていた
幼少期から青春期までを駆け足で紹介し、その後の愛人時代を監督自らが演じるという構成になっていて、この役をやりたかったんだろうなあ、というのがよく伝わってくる内容だった
悪く言えば「お金をかけたコスプレ」のようなもので、それでもそこまで自分ファーストにはしていないところが監督のバランス感覚というものになっているのだと思う
物語はあってないようなもので、史実ベースで淡々と物語が進んでいく印象が強い
歴史を知っていればほぼダイジェストだが、登場人物が死ぬほど多いので、ある程度の知識がないとついていけないほどに説明は省略されている
この時代を再現したセットや衣装などが見どころの作品となっているので、それ以外はそこまで強調すべきものがない
それゆえに、この世界観(ベルバラっぽさ)を体感したい人向けなので、この映画でデュ・バリ夫人を語れるほど知識がつくかは微妙と言えるだろうか
いずれにせよ、青春時代からいきなり年齢が一気に上がった印象があったが、16歳から29歳くらいまで一気に飛んでいるので止むなしかなと思う
むしろ、前半の幼少期を全部削っても問題のない作品で、愛人時代の軋轢を持って細かく噛み砕いても良かったように思えた
ルイ15世が惚れ込む理由であるとか、彼が愛人を作りまくる背景とか、娘たちの人物像などはテンプレっぽい感じの演出になっているので、それだけでは物足りない印象がある
あとは、ちゃんと最期のシーンまで描いた方が時代背景が読み取れて良かったかな、と思った
そこを字幕で説明するのなら、他に削れるところもあるだろうというのが率直な感想で、激動の半生の取り捨てが甘いのではないかな、と感じた