「「絶望などしていない」「可哀想と思われたくない」」かづゑ的 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
「絶望などしていない」「可哀想と思われたくない」
十歳でハンセン病を発症して以降、国の「らい予防法」の規定に従う形で80年間を瀬戸内海の小島「長島愛生園」での隔離された生活を余儀なくされて来た宮崎かづゑ さんの生涯を振り返るドキュメンタリーです。
作品冒頭、ご自身の来し方を振り返るかづゑさんの
「絶望などしていない」「可哀想と思われたくない」
の力強い言葉にハッとさせられます。こうした映画を観る時、やはりどうしても我々は「可哀想」の視点に立ちがちだからです。そして、彼女は、
「らいはらいであって、ハンセン氏が作りだしたものではない。らいは、神話にも聖書にも出て来て、神が人間にくっつけた病。だったら、らいになった事は光栄」
とまで語るのです。しかし、その様な強さに辿り着くまでに、我々には想像も出来ない大きな葛藤や苦しみがあったのだろうなとやはり想像してしまいます。
病のせいで瞳孔が開きっぱなしなので常にサングラスをかけ、病のせいで両手の指を失っているのですが、彼女は真っ当な生活を送ります。そして、最後には、
「ちょっと自惚れさせて頂いたら、ちゃんと生きたと思う」
と言ってのけるのです。その言葉がなんと力強い事でしょう。
一方で、ハンセン病は既に治癒可能な感染症となっていたにも拘わらず、患者隔離を定めた「らい予防法」が廃止されたのは1998年のことであり、患者に対して行われた強制不妊手術に対しては裁判闘争が長年続けられて来ました。いつもながら、行政の対応は余りにも遅いのでした。
ただ、この映画に対しては、言わずもがなかも知れませんが気になった点が。ドキュメンタリーにも演出があるのは勿論の事だし、それが問題だとは全く思いません。でも、本作では「感動を喚起するためのTV的(分かりやすい)演出」が幾つか目に付きました。そんな事しなくても、事実の叙述だけで十分心に届くのになとちょっとだけ残念でした。