劇場公開日 2024年3月15日

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「潜在的な差別意識」12日の殺人 カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0潜在的な差別意識

2024年3月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

複数の男性と関係を持っていた若い女性が殺害されたという事件の捜査が行き詰まって行く過程において、関係者だけでなく刑事たちそれぞれの潜在的に持っている性差別意識、偏見、信条などがうっすらと見え隠れし、表面的には個人の自由や平等を尊重する代表のようなフランスという国の実状を浮き彫りにする縮図のような作品。

捜査をしているうちに関係者から「犯罪を起こすのは男性で捜査するのも男性」、「殺されたのは彼女が女性だから」などのキーセンテンスが出てくるが、それらを特に掘り下げるわけではなく、何気ない台詞の一つとして織り込まれているだけなので変な押し付けがましさは感じないが、見終わった後にそのテーマ性を深く考えるようになる。
無口で最も常識者と思われる主人公の刑事でさえ、新人の女性刑事に対して「首席で卒業したのになぜ所轄なの」と聞いてしまうところも救いようのなさを感じさせる。

因みに若い刑事が結婚するという話をした時に皆が不思議がっていたが、フランスでは離婚する場合は裁判になりお金と時間がかかるため同棲や事実婚がポピュラーなためだが、またそれを決めつけるような考え方にも一石を投じている。

フランスでは盗聴は合法だと言うことを思い出したが、予算とかそう言うレベルの話で規制される事があると言うことは初めて知った。

同じようなタイミングで上映された「落下の解剖学」同様に本作もミステリーではなく人間ドラマだが、「落下の・・・」同様に抑揚や驚き、感動が少なく、残念ながら自分にとっては観ていて面白い映画というわけではなかった。

グルノーブルの山の景色が非常に美しかったので、自分も自転車で走ってみたいと思った。

カツベン二郎