「説明すべき設定はスルーで、解決もしないのに突如終わるというディストピアな作品」VESPER ヴェスパー Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
説明すべき設定はスルーで、解決もしないのに突如終わるというディストピアな作品
2024.1.24 字幕 T・JOY京都
2022年のフランス&リトアニア&ベルギー合作の映画(114分、G)
遺伝子技術の先にある歪なディストピアを描くSF映画
監督はクリスティーナ・プオジーテ&ブルーノ・サンペル
原題は『Эра выживания』で「サバイバルの時代」という意味、英題の『Vesper』は主人公の名前から取られている
物語の舞台は、遺伝子技術が発展した近未来の地球で、「新暗黒時代」と呼ばれる時代に突入していた
その世界では、城塞都市(シデタル)と呼ばれるコロニーのようなものがあり、そこに住めない人はサバイバル生活を余儀なくされていた
シデタルから一代限りの収穫ができる品種改良された種子を受け取り生活をしていて、ジャグと呼ばれる人造人間を奴隷のように扱って生きている
そんな中、森に住居を構えるヴェスパー(ファラエラ・チャップマン)は、寝たきりの父ダリウス(リチャード・ブレイク)の世話をしながら遺伝子工学を独学で学んで研究を行なっていた
彼らの住む森は父の兄ヨナス(エディ・マーサン)が支配していて、彼は子どもたちの血液を集めては、シデタルからの物資を独り占めしていた
ある日、シデタルの偵察機が低空飛行しているのに気づいたヴェスパーは、それが落ちたと思われる場所へと向かった
そこにはシデタルの住人らしき女性カメリア(ロージー・マキューアン)がいて、ヴェスパーは何とか彼女を救い出すことができた
同乗者には彼女の父エリウス(Edmund Dehn)がいて、彼はシデタルの研究者だと言う
そこでヴェスパーはヨナスの家にある無線機を使ってシデタルに応援を呼ぼうとするものの、逆に不審な行動を疑われて偵察機の存在がバレてしまう
ヨナスはエリウスを見つけ出し、何を思ったか殺してしまう
そして、同乗者のカメリア探しに奔走し始めるのである
映画は、見たことのある近未来SFで、食料と言う武器を手に入れた下界の人間による支配構造の中で反抗する様子が描かれていく
見たこともない植物などが登場し、イメージはさながら『風の谷のナウシカ』を思わせるものがあり、カメリアは王族の人間のようなビジュアルをしている
だが、彼女はエリウスによって改良されたジャグであり、彼女の遺伝子には「種子の封印を解く鍵」が刻まれていたのである
映画は、既視感満載の世界観と人物描写になっていて、説明すべきものがほとんど説明されないまま終わりを告げる
ヨナスがエリウスを殺す意味もわからないないし、全てが終わった後に、ピルグリムと呼ばれる放浪者の塔の上に昇って、そこから封印を解かれた種子をばら撒く行動も意味不明である
何かが解決したように思えるが、実際には何も解決しないまま終わっているので、何を描きたかったのかよくわからない内容になっていた
種子は手元で育てるべきだと思うし、シデタルの脅威が肌感覚でわからな
ピルグリムと化したとされる母親の行方も放置プレイだし、そもそもあの塔に勝手に昇っても良いのかわからなかったりする
いずれにせよ、リトアニアの映画と言うところに興味を持てないとスルーしても良い案件で、内容はかなりスッカスカな映画だったと思う
遺伝子工学を城下でできる状況も意味わからず、虫もたくさん登場するので、ダメな人はスルー推奨の作品だろう
見終えた後に何も残らないのだが、パンフレットに載っている設定自体は結構頑張っていたと思うので、脚本次第では化けたのかなと感じた