「ニカラグアの女性監督による歴史的な一歩」マリア 怒りの娘 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
ニカラグアの女性監督による歴史的な一歩
ニカラグアと聞いて、すぐさま地図上で南米のホンジュラスとコスタリカの間の国を指させる人はそういないだろう。だが冒頭、首都にある広大なゴミ捨て場の様子を目の当たりにするや、我々の意識は一瞬にして、この遠い遠い国と主人公マリアの感情へと引き寄せられる。廃品を漁る無数の子供たち、その姿を幻想的に照らし出す陽光、水辺をひっきりなしに行き交う馬車・・・そこに描かれる社会状況は極めて過酷ではあるものの、これが初長編というバウマイスター監督の映像力には圧倒されるばかりだ。物語は後半、母と離れ離れになったマリアの怒りと混乱に寄り添う。まだ11歳の少女の前に立ちはだかる現実のなんと非情なことか。そんな中で彼女がふと宇宙へ思いを馳せる場面が胸を打つ。そしてラストに口にするセリフも心を震わせる。取るに足らない小さな一作かもしれない。でも世界とそこで暮らす幼い少女の感情とを確かに繋ぐ、大切な窓ともいうべき作品だ。
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