PLANET OF THE APES 猿の惑星 : 映画評論・批評
2001年8月1日更新
2001年7月28日より日劇プラザほか全国東宝洋画系にてロードショー
SF的醍醐味はそのままにバートン監督ワールドを創造
ティム・バートン版の「猿の惑星」と聞いて、ファンならずとも一抹の不安を抱いただろうが、まずは心配無用。バートン監督らしい映像が随所にあふれ、見所たっぷり。まさに“リ・イメージ”という感じ。画面全体がノワールというかダーク・トーンで。エイプ・シティなんて、まるで「バットマン」のゴッサム・シティのごとし。さらに驚かされるのは、全編通してグラフィカルなバイオレンスに満ちている点。人間のカリカチュアとしての猿の獣性を強調するあまり、リック・ベイカーの特殊メイクの凄さも手伝って、ティム・ロス扮するセード将軍の暴力性は、子供が見たら泣き出しそうな凶悪さ(ま、そこがオトナにはちょいと堪らないけどね)。
来日時の監督の言葉を拝借すれば「アウトサイダー」がこの映画のキーワード。不時着したレオにしろ、奴隷状態にある人間たち、それに猿たちさえも、この惑星にとって部外者なわけで、それは、これまでのバートン作品に共通のテーマ。それに、「猿の惑星」のSF的醍醐味である既成の価値観の逆転/相対化の発想を、新たな物語にソツなく盛り込んでOK。ただ、監督自身を強く投影させたキャラの不在が、やや淋しく心残りだ。
(高橋良平)