劇場公開日 2024年4月19日

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「まさかの夢オチ」陰陽師0 ココヤシさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5まさかの夢オチ

2024年4月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

興奮

原作未読だが、野村萬斎さん主演の『陰陽師』2部作はどちらも観ていたし、『ゴールデン・カムイ』で山﨑賢人さんの演技力を再認識していたので、本作を鑑賞。封切日の初回上映で、観客は15人ほど。
本作は「安倍晴明」(山﨑)が陰陽師になる前の陰陽寮の学生(「がくしょう」と読むらしい)だったころの話で、「源博雅」(染谷将太)との出会いが描かれている。幼いころ目の前で両親を殺された清明は、しかしショックのあまり犯人の顔を思い出せずにいる。陰陽博士「賀茂忠行」(國村隼)に引き取られて、その勧めで陰陽寮で学び始める。陰陽寮では陰陽頭「藤原義輔」(小林薫)を頭領に、学生と得業生(学生の一つ上の身分)たちが陰陽師目指してしのぎを削っており、そこで清明はめきめきと頭角を現していく。けれども、清明自身は、呪いだ祟りだといって人々の不安をあおり、それにつけこむ陰陽師という仕事に興味を持てない、合理的な人物として描かれている。
夜中に琴が鳴り出すという怪異現象に悩まされた「徽子女王」(奈緒)が、従兄の博雅に相談する。徽子は幼いころ伊勢神宮の斎宮に選ばれ、両親と生き別れになるというつらい経験をしていたが、その悲しみを笛で癒したのが博雅だ。徽子と博雅は互いに憎からず思っているが、身分の違い(徽子のほうが偉い)からそれを言い出せずにいる。
博雅は、学生ながら優秀な清明に怪異現象の解明を依頼。はじめ断る清明だが、結局引き受けて、博雅とともに徽子女王の館に泊りこみ、金の龍を退治する(結局それは徽子女王が博雅を呼び寄せたいがために無意識に引き起こした怪異現象だった)。
そのうち今度は得業生の一人「橘泰家」(村上紅郎)が夜中に井戸で転落死し、邸内から呪符が見つかる。義輔は犯人を突き止めた者を泰家の後任の得業生に任命すると宣言し、学生たちは犯人探しに血眼になる。けれども、死体を検案した清明は、泰家が喉の渇きを催す蟲毒を盛られて井戸まで誘導され、そこで突き落とされたのだと推理する。
学生たちの筆跡を調べ上げた学生「平郡貞文」(安藤政信)が、呪符の筆跡と清明の筆跡が一致すると指弾する。清明は取り押さえられるが、そこへ博雅が「徽子女王がさらわれた!」と駆け込み――といったストーリー。
清明は凛々しいし、博雅は純情だし、徽子は可憐だ。平安時代の雅な貴族社会の裏側に過酷な階級制度があったことがよく理解できるし、平安京の町並みもオープン・セットとCGを組み合わせて巧みに再現されている。
ただ、描写は説明調で平板だ。また、呪(しゅ)のほとんどは科学的に説明がつくとしてそちらからアプローチしていくのかと思えば、途中で超能力バトルのような様相を呈し、最後はそれらはすべて脳内で起きていたことだとするまさかの「夢オチ」。肩透かし感が否めない。呪術だけでなく格闘技にも秀でている清明は、ちょっとスーパーマンすぎる。
ちなみに陰陽師は過去の存在ではないという。今でも四国あたりには陰陽師の村が存在するとか。

ココヤシ