「観ることしかできないけれど」ビヨンド・ユートピア 脱北 みる子さんの映画レビュー(感想・評価)
観ることしかできないけれど
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せめて観て、知ることだけでもしようと思った。
次第に中国という国は!ロシアという国は!と絶望的な気分になってくるのだが、冒頭にかつて日本が占領していた話が挿入されているため、じゃああなたは?何の責任もないの?と責められている気もする。
とはいえ、物理的に海で隔てられてもいない韓国や中国の国民は、普通に真面目な人であれば、何をやっても常に心に重しがあるのではないかと思えて仕方ない。
あの牧師さんは現代のキリストか。本当に凄い人を見た。脱北女性と結婚し、脱北者を助ける過程で首を骨折するなど、まだ若いのに身体はぼろぼろ、同じく支援者であったらしい息子さんが、その苛酷さゆえか亡くなった話には驚く。静かに笑いながら打ち明ける姿は、どんな名優もかなわない説得力。達観した人間は、多くを語らなくなるのか。すでに生身を超越し、危険も感じなくなっているのか。
国家とは、権力とは一体何だろう。同じ現代の地球にこんな酷い人権侵害があるのに、オリンピックやワールドカップをやってもいいのかな。スンドゥブやキムチを味わっていていいのかな。でも平和の大切さをかみしめ、維持しなければならないから、やるべきなのだろう。
大金をもらい活動するブローカー、地下活動家の人々は、確実に命を賭して他人を救っている。中には詐欺がいるかもしれないが、信じるしかない人々を相手に、淡々と、国家が手をこまねいている間に次々と、日々命を救おうとする尊さに打たれるばかり。
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