劇場公開日 2001年6月30日

A.I. : 映画評論・批評

2001年7月2日更新

2001年6月30日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー

スピルバーグのエンタテインメント体質の賜物

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キューブリックの企画をスピルバーグが監督した話題作は、21世紀の「E.T.」というより、21世紀の「ピノキオ」。そして、2人のスター監督のいいとこ取り。確かに、愛をインプットされ、人間になりたいと願うロボットを通して人間存在を問う世界は、キューブリックがこだわったにしては甘い気もする。序盤を覆うキューブリック的な不穏な空気も次第に薄れるし、眩暈もののお子ちゃまな演出も登場。と、キューブリック・ファンには不満もあるだろうが、これはあくまでスピルバーグ作品。それに、亡き巨匠が手がけたならテーマの重さともどもコワすぎただろう世界を、適度にサスペンスフルに仕立て、万人を引きずり込まずにいないのは、スピルバーグのエンタテインメント体質の賜物だ。深みに欠けても、“人間”について考えさせるし。

気になるハーレイ君も、母親の愛を求めるデイビッドの一途すぎる純粋さと切なさを体現してコワイくらい。ぎりぎりオーバーアクトにならない才能には、このまま本物の立派なオトナの俳優に育ってほしいと改めて願わずにいられません。ジゴロ・ロボットを戯画的に演じるジュード・ロウも、俳優としては面白い。美形スターとしての彼を愛するファンには、辛いだろうけど。

杉谷伸子

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