来し方 行く末

劇場公開日:

来し方 行く末

解説・あらすじ

脚本家として成功するという夢にやぶれた男性が弔辞の代筆業を通じて成長する姿を描いた中国発のヒューマンドラマ。

大学院まで進学したものの脚本家デビューがかなわなかったウェン・シャンは、不思議な同居人シャオインと暮らしながら、葬儀場での弔辞の代筆業で生計を立てている。丁寧な取材に基づいた弔辞は好評だが、本人は中年に差しかかる年齢で、このままで良いのか自問自答していた。同居していた父親との交流が少なかった男性や、ともに起業した友人の突然死に戸惑う会社員など、さまざまな境遇の依頼人との交流を通して、ウェンの中で止まっていた時間がゆっくりと進みはじめる。

「鵞鳥湖の夜」のフー・ゴーが主演を務め、「西湖畔に生きる」のウー・レイが同居人シャオイン役で共演。中国インディペンデント映画界の俊英リュウ・ジャインが監督・脚本を手がけ、人々の人生模様や死生観を織り込みながら描きだす。2023年・第25回上海国際映画祭にて最優秀監督賞と最優秀男優賞(フー・ゴー)を受賞。第36回東京国際映画祭では「耳をかたむけて」のタイトルで上映。

2023年製作/119分/G/中国
原題または英題:不虚此行 All Ears
配給:ミモザフィルムズ
劇場公開日:2025年4月25日

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(C)Beijing Benchmark Pictures Co.,Ltd

映画レビュー

3.5透明感と柔らかさに満ちた映像で紡がれる再出発への道

2025年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

透明感あふれる映像の中で、人の生き様や遺したものを真摯に見つめる物語である。主人公は弔辞の代筆業を担っている。遺族に代わって故人の人となりをまとめる仕事だ。依頼者は北京で日々忙しく暮らす人ばかり。もしかすると10年先にはAIでたやすく代用される職かもしれないが、しかし今依頼が絶えないのは、彼のとても誠実なリサーチ力と、完成原稿のクオリティに定評があるから。案件によっては、遺族から話を色々と聞く中で、故人の知られざる思いを発見することもある。ではなぜ彼はこうして見ず知らずの人について掘り起こすことに長けているのか。ここに本作のもう一つの焦点と、なるほどと腑に落ちる展開がある。終始ゆったりとした語り口で、感情を荒げたり、感動を押し付ける真似はしない。悪人も出てこない。だからこそ、この再出発の物語に安心して身を委ねられる。決して派手さはないが、気がつけば不思議と心にエナジーが溜まっている一作だ。

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牛津厚信

3.5読み手は物語が完結していないと次のページをめくれないように、遺族も故人の人生が完結しないと次に進めない

2025年6月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

癒される

カワイイ

主人公のウェン・シャンは大学院まで進学しながら、脚本家として商業デビューが叶わず、不思議な同居人シャオインと暮らしながら、今は葬儀場での〈弔辞の代筆業〉のアルバイトで生計を立てている。丁寧な取材による弔辞は好評だが、本人はミドルエイジへと差し掛かる年齢で、このままで良いのか、時間を見つけては動物園へ行き、自問自答する。同居していた父親との交流が少なかった男性、仲間の突然死に戸惑う経営者、余命宣告を受けて自身の弔辞を依頼する婦人、ネットで知り合った顔も知らない声優仲間を探す女性など、様々な境遇の依頼主たちとの交流を通して、ウェンの中で止まっていた時間がゆっくりと進みだす(公式サイトより)。

主人公のウェンは脚本家を志しながらも、「多くの仕事を受けたが、全部未完成」である。他方で生業としている弔辞は、故人の人生を完成させる営為である。読み手は物語が完結していないと次のページをめくれないように、遺族も故人の人生が完結しないと次に進めない。弔辞をはじめ、火葬や葬儀といった一連の儀式は、徐々に大切な人の死を形象化し、これからも生きていかなければならないわたしたちを前に進めるためにある、人類が蓄積してきた叡智、あるいは切実な処世術である。

生活のためにだけにやっている弔辞執筆が、常に「テンションの低い」ウェンの完結できない創作に、とても静かに穏やかに反響していく様が、美しい映像で表現されている。内省的で、聡明で、温和なウェンをフー・ゴーが好演。この作品で唯一動的な登場人物であるシャオ・ジンスイ役のチー・シーがよかった。突然、立ち去り、いきなりアイスを買って戻ってくるシーンは素敵。経済発展を続ける中国に現在進行形で起きているであろう、仕事と人間性の狭間の葛藤や、要所に織り込まれるコロナのマスクなどの描写も良かった。あと猫も。エンドロールまでご覧ください。

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えすけん

4.5ゆったりしっとりやわらかい

2025年6月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

新宿武蔵野館で観た時は、ゆったりした雰囲気は好きなのに、エピソード量の割に主人公のウェンシャンが物静かすぎてイマイチ入ってこず。
でも好きな映画のはずだから、ちゃんと観たくて2回目。

故人との関係の長さ深さは人それぞれで、想いもそれぞれ。
接した人の視点で良くも見えるし悪くも見えるから、内容に納得いかないのも分からないではない。
一度観ているから、今回はそれぞれのエピソードがすんなり入ってきた。
感情があまり出ないウェンシャンがファンさんのお葬式で想いが溢れてしまうシーンは良かった。
そしてファンさんへの弔辞が沁みた。
原題のとおり、彼のまわり道は決して無駄ではないし、パソコンに向かう表情は晴れやかだった。

だけどやっぱりシャオインとの関係は分からなかった。そもそも生きてる人なのか?はたまたウェンシャンの心が具現化したものなのか?
おそらく彼女には見えてなかったような。

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コビトカバ

回り道の人生でも

2025年5月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 脚本家の夢破れ、今では弔辞の代筆業で糊口をしのぐ男の物語です。葬儀を通して見る様々な人生と不思議な同居人、そしてまだ捨て切れない夢。それらが繋がって行く終盤の暖かさと、「そういう事だったのか」の驚きに揺さぶられます。原題「不虚此行」とは「この旅は無駄でなかった」の意らしい。遠回りに見えた彼のこれまでの人生も決して無駄でなかったと思いたい。

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La Strada