「栄光と自由を奪われた柔道家のプライド」TATAMI regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
栄光と自由を奪われた柔道家のプライド
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『SKIN/スキン』のガイ・ナッティヴ(ナティーヴ)監督が、『聖地には蜘蛛が巣を張る』でカンヌ映画祭女優賞を受賞したザル・アミールと共同でメガホンを取ったスポ根ドラマ…というよりサスペンスドラマとして括った方が適切。イランの柔道代表選手が国際大会でイスラエル代表との対戦を棄権するよう政府から命じられたという信じがたい実話をベースにしており、緊迫感がある上に柔道の試合を劇的に魅せている。ボクシングやMMAなどと比べると地味だが、やっぱり柔道も格闘技の一種。柔道経験者の自分としては、初めて画的に生える柔道映画が観られたという喜びがあった。
『SKIN/スキン』ではネオナチグループから脱退しようとする青年を描いたが、本作はまさに宗教からの解脱。ネオナチ青年はグループ脱退の証として顔中のタトゥーを剝ぎ取ったが、柔道家もまた最後にある物を剥ぎ取る。それは栄光と自由を奪われた柔道家のプライドだ。
イラン・イスラム政権が強いる抑圧と支配を痛烈に批判した骨太な一本。観る事が出来た東京国際映画祭出品作の中でもトップクラスの出来栄え。日本での一般公開を切に望む。
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