劇場公開日 2024年12月13日

「希望に溢れていた」小学校 それは小さな社会 白波さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0希望に溢れていた

2025年1月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

採点4.3
何とか観に行くことができました。
まず映像が美しくすごく柔らかいです。何だか陽だまりのよう。
カメラは子どもの目線、随所に差し込まれるアップのカット、何とも懐かしい気持ちになりました。
観ていて思うのが「そういえば子どもの時こんな感じだったなぁ」といった懐かしい気持ち。
そして自分の子らが今こんな生活に触れているんだなという、知らない時間を見たような新鮮な気持ち。
またコロナ禍での子らの学校生活はとても興味深かったです。
保育園も小学校もとても窮屈そうで、やっぱりこんな感じで過ごしていたんですね。
運動会や遠足がなくなったり、あってもすごく制限されていて、胸が痛かったの覚えています。
また、子ども達も大きくなった時観たら「そうだったそうだった!」ってなるんでしょうね。

また大人になってこの景色を見ると、少しずつ感じる違和感が散らばっていたりもします。
それは教育方法。時間通りの行動、机の並び、給食の食べ方、靴箱検査など、皆が一つに纏まるを一番とする先生の言葉、その世界は今見るとやはり少し気になるところがありました。
ピークに持ってきたシンバルの女の子は、演奏が上手くできなかった事を他の生徒の前で叱責されていました。これはちょっとなぁ。
そして校外の教授による講義で「協調性の高さは世界に誇れることであるが、それは諸刃の剣でもある」といった趣旨の言葉。これにはドキッとさせらレました。
このシーンを敢えて入れたのは、それを気づかせる意図があったのでしょうね。

少しネガティブな書き方になりましたが、別に全部が悪いとも思わないのです。
そうした中で磨かれた心や技術は、実際日本が世界に誇れる部分だとも思っています。
圧倒的に世界一の正確さを誇る鉄道など、まさにその表れだと思うんですよね。
それに怒られていたシンバルの女の子。彼女はクラスメイトに励まされ、練習の末無事習得していました。
皆に支えられ壁をこえて、その時の彼女の笑顔は素晴らしかったんですよ。
このドキュメントは学校生徒の一年間がうつされているのですが、メインは入学してから2年生になるまでの子ども達。シンバルの女の子たちですね。
一年を通したその成長には本当驚かされるんです。
まるで自分の子を見ているようで、ラストのカットからエンドロールはずっと涙が出ていました。

原題は「The Making of a Japanese」。
確かに作り上げる教育には考えさせられる部分もあるでしょう。
でもそれよりも、映る子ども達の姿は本当に希望に溢れて見えました。
ありのままの、素晴らしいドキュメンタリー作品でした。

白波