劇場公開日 2024年1月26日

「違う惑星に連れてってやるよ。重力を感じないくらいに。」違う惑星の変な恋人 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0違う惑星に連れてってやるよ。重力を感じないくらいに。

2024年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

中島歩、最近どの映画に出ても爪痕が深い。しかもそのキャラの幅が広い。ニヒルな役も陰のある役も人望のある中間管理職の役もお茶目もオトボケも天才もバカも。かつて要潤が独占してキャスティングされていたポジションを、いま中島歩が席巻している。と僕は思っている。そしてこの映画だ。僕の中では中島歩が主役になっている。周りの人間を、その純心からくる姑息でしみったれで理性のない言動で振る舞わす。なのにそれが愛すべきキャラになっている。そりゃ、純真無垢で天然色も強いむっちゃんも惚れるわ。ベンジー色に染まるわ。
そしてそのベンジー中島のキャラを彩る、むっちゃんを含む周りの3人。誰かと誰かの関係性が微妙で、ちょっとズレてる感がまるで、大学のサークル内の恋愛模様を呈している。この中でベンジー中島がちょいと上世代(学内で言えば2つ上の先輩くらい)のせいでかみ合わないもどかしさも憎い。ゆえに、この会話の応酬がいい。
「恋愛は団体戦ってことね。」「いや、個人戦だけどね。」
「じゃあ、せっかくだから秘密増やす?」
「どこの好きのベクトルも交わってないっていう状況なわけね。」
「好きな人の変な意見と、嫌いな人のまともな意見でいったら、好きな人の変な意見の方が肩入れしてしまうかな。」
「輝いていたあの頃を自慢しだしたら終わりだからね。」・・・
’98フランス大会のバッジオのエピソードを引き合いに出すベンジー中島的に例えれば、さながら、パス、センタリング、パスカット、バックラインでの横パスからの意表を突くロングフィード。4人の議論、もしくは2人の会話が、終了時間のみえない試合展開になっている。でも、だんだん4人は敵味方じゃなくチームメイトに見えている。だからこの映画はいいんだろうな。
そして、FWのベンジーじゃなく、サイドバックのモーがとびっきりのシュート、名セリフを決める。「違う惑星に連れてってやるよ。重力を感じないくらいに。」と。

栗太郎