あずきと雨のレビュー・感想・評価
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逸脱と受容
加藤紗希のユニセックス的な佇まいに見惚れてしまった。メジャー系リメイクならユキ役は石橋静河だな。
ノブは平均値から少々逸脱した自分の価値観をうまく説明できず諦めているように見える。ユキはアズキもマヨネーズもお断りの「普通の」人でそんなノブの逸脱を受け容れきれない一方で、リコの見晴らしへのこだわりや家出には寛容で同情的に接する。リコとノブは互いに邪魔にならない。そしてノブは、家出娘を突然同居させるというユキの逸脱にほぼ抵抗しない。この受容の矢印の向きが面白い。ユキがリコという迂回路を通じてノブを受容できる(かもしれない)ようになったとき雨が降ってきてしまう。この余韻がたまらなく良い。
人それぞれの傾斜
横浜シネマリンの最終日、上映後に舞台挨拶(隈元博樹監督、加藤紗希、秋枝一愛、宮本行)があった。
隈元監督によると、井村屋とのタイアップは断られたのこと。映画では中国産の小豆が不作でアイスが製造中止になるのだが、井村屋の小豆は国産ですからという理由だそうだ。
それはさておき、この映画は主役3名と、その周辺のほか2名ほどの2日間の日常、いわゆるスライス・オブ・ライフを描いたものである。
正直、配役同士の絡みはそれほど面白いものではない。ただ物語の中心にいるユキ以外の人物は皆、何かのこだわりを持っておりそれが他の人との関係において微妙な傾斜というか角度をつくる。そこが面白かった。
小豆アイスの終売に抵抗し、もう食べられないからと大量に買い込むノブ。そして彼はユキに出ていくように言われると「雨が降ったら」と意味不明な期限を切る。家出してきたリコは、どんな部屋に住みたいかとユキに聞かれ「眺めの良い部屋」と答える。これも彼女なりのこだわりである。ユキと不動産屋で一緒に働くカナコはそこは自分にとっての居場所ではなくイギリスに行くという。
これらのこだわりは彼や彼女の性格や人生経験の奥底から生まれてきており、何故そのようなことになるのか本人には説明できなくても、行動に固有な傾斜や角度を生み出す。
最後、ユキはノブもリコもいなくなった部屋で一人ぼんやりと過ごす。最早、振り回されないですむことにホッとしながらもこだわりのない自分の人生になんとなく寂しさを感じているように私には思えた。そういうことですかね?と舞台挨拶の質問タイムで加藤さんに聞きたかったのだが、ずいぶんパキパキした人で気後れして駄目だつた😢
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