劇場公開日 2023年11月4日

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「人それぞれの傾斜」あずきと雨 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5人それぞれの傾斜

2024年5月24日
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鑑賞方法:映画館

横浜シネマリンの最終日、上映後に舞台挨拶(隈元博樹監督、加藤紗希、秋枝一愛、宮本行)があった。
隈元監督によると、井村屋とのタイアップは断られたのこと。映画では中国産の小豆が不作でアイスが製造中止になるのだが、井村屋の小豆は国産ですからという理由だそうだ。
それはさておき、この映画は主役3名と、その周辺のほか2名ほどの2日間の日常、いわゆるスライス・オブ・ライフを描いたものである。
正直、配役同士の絡みはそれほど面白いものではない。ただ物語の中心にいるユキ以外の人物は皆、何かのこだわりを持っておりそれが他の人との関係において微妙な傾斜というか角度をつくる。そこが面白かった。
小豆アイスの終売に抵抗し、もう食べられないからと大量に買い込むノブ。そして彼はユキに出ていくように言われると「雨が降ったら」と意味不明な期限を切る。家出してきたリコは、どんな部屋に住みたいかとユキに聞かれ「眺めの良い部屋」と答える。これも彼女なりのこだわりである。ユキと不動産屋で一緒に働くカナコはそこは自分にとっての居場所ではなくイギリスに行くという。
これらのこだわりは彼や彼女の性格や人生経験の奥底から生まれてきており、何故そのようなことになるのか本人には説明できなくても、行動に固有な傾斜や角度を生み出す。
最後、ユキはノブもリコもいなくなった部屋で一人ぼんやりと過ごす。最早、振り回されないですむことにホッとしながらもこだわりのない自分の人生になんとなく寂しさを感じているように私には思えた。そういうことですかね?と舞台挨拶の質問タイムで加藤さんに聞きたかったのだが、ずいぶんパキパキした人で気後れして駄目だつた😢

あんちゃん