「型破りの驚愕展開はいいけれど、その先が見えないのが惜しい」ゴールド・ボーイ クニオさんの映画レビュー(感想・評価)
型破りの驚愕展開はいいけれど、その先が見えないのが惜しい
驚愕の展開が用意されているクライム・サスペンスでしょうね、まるで飽きずに予想外の展開が釣瓶打ち。原作が珍しく中国の作家さんとのこと、しかも中国で映像化されたものの日本版とも言えるもの。どおりで展開がちょいと日本人にはキツイもので、大陸のドライな大胆に支配されてます。冷静になればこの少年の極悪非道の桁外れに違和感持つはず、それ程に強烈なのです。しかし、有無を言わせず次々と話がねじ曲がってゆくプロセスは見事なものです。
そう、米国製ならばありそうな呆れる程の無茶苦茶少年少女たち、それが13歳設定ですよ、もろ中学生。情緒過多な日本人の思考を突き抜けております。それにしても多数の登場人物が登場し、ややこしいシチュエーションを短時間で観客に理解させるなんて、相当の技量が必要ですよ。パズルのように次第にはまってゆくのが本作の魅力でしょう。
それが何故に沖縄設定なのか? 日本のどこに舞台設定しようと趣旨が揺らぐことはないけれど、全編沖縄ロケってのもいいものです。しかし、なんとも寒々しい沖縄じゃないですか? 陽光煌めくどころか全編ブルーがかった陰鬱さ。抜ける青空なんて全くありません、終始どんよりが全編を覆う。多分、登場人物たちの暗澹たる気分を意図していると思いたいですがね。
でも、突き抜けたその先に何が見えたのでしょう? 修羅場を通してエゴのぶつかり合いを経て、彼等は何を得て何を失ったのか? 作劇として二転三転の凝った練り込みは確かに素晴らしいけれど、何にも残らないのが勿体なくも残念でしょうがない。女の子の描いた細やかな夢が脆くも消えた喪失感もなにもない。グスタフ・マーラーの交響曲第5番嬰ハ短調が背景に流れるが、主人公の心がまるで伝わらないのです。ここまで描いてくれれば傑作映画になり得たのに。
好青年タイプの岡田将生が悪に染まると、見事な造形となる通説どおりの好演です。対する妻役の松井玲奈がなかなかの蓮っ葉な女をくっきり造形。黒木華の出番が少ないのが惜しいけれど、まさかまさか彼女が最後に・・・なんて展開まで想像してしまいましたよ。北村一輝は勿体ないし、江口洋介の容姿の衰えには愕然とします。子役のなかでは金髪の前出燿志が木村拓哉似でチャラ感じがいいですね。星乃あんなは美形で今後に期待。肝心の羽村仁成の目力はなかなかのもの、よくぞ本作のリーディング・ロールを担ったもので。
タイトルが「黄金少年」と出る、多分原作がそうなのでしょうが、何がゴールドなのか? 若い世代の暴走とでも描きたかったのかもしれませんが、ラストのストップモーションの含蓄も情感が無さすぎました。