劇場公開日 2004年6月5日

「君は「切腹」を見たか?」21グラム KIDOLOHKENさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0君は「切腹」を見たか?

2022年2月24日
PCから投稿

ハリウッドで海外映画ベスト10をやると必ず入ってくるのが橋本忍脚本の「切腹」。この映画は見事な FLASH BACK 脚本によって作られており、それがミステリー効果抜群でとても面白く仕上がっている。時間を過去に遡ったり現代に戻したりして何が起こってるかよくわからなくするのはミステリーにはとてもよく合う。それに対してこの21 グラム はミステリーにする要素はないのにフラッシュバックをいたずらに使って客を混乱させているとしか言いようがない。普通に頭から描いていくと面白くないのであえて客を混乱させることによって集中力を高め、飽きさせないようにする作劇術だ。客は結局何がどういう順番なのかということを知りたいので最後まで見るだろう・・と。だがこの21グラムは最後まで見てもしっくりいかないものになってしまっていた。テーマが重いので酷評も受けにくいし・・・ある意味、姑息な映画だ。
ただ脚本はいただけなかったが、撮影は素晴らしかった。露出をやや抑えたローキーな画像が美しかった。派手な色が全く使われていないので気がつきにくいかもしれないが見事な照明と露出それに手持ち撮影によって素晴らしい写真が撮れていた。そして、ここぞという場面でだけ赤みのある色を使っている。それが上手く決まっていた。そして何よりもそのカメラによって写された主演俳優が魅力的だった。
だから最後まで見なくてもいいけど途中まで見る価値は十分にある作品だと思った。

タンバラライ
KENZO一級建築士事務所さんのコメント
2022年3月13日

 KIDOLOHKENさんへ
全くの同感です。
小林正樹監督と橋本忍脚本の「切腹」は私の生涯映画ベスト10の一作品ですが、
「切腹」のフラッシュバックは本質論的に作品を成就させているとすれば、
「21グラム」のフラッシュバックは興行手法論的に作品を貶めていると言わざるを得ないように感じました。
イニャリトゥ監督は優秀な監督だと思いますが、この作品は残念でした。

KENZO一級建築士事務所