「わあ、これは面倒くさい映画だなという印象」熱のあとに あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
わあ、これは面倒くさい映画だなという印象
2019年の新宿ホスト殺人未遂事件を題材とした作品とのこと。この犯人の女性は3年4ヶ月の実刑となり服役中であるそうだが、映画の主人公は執行猶予となり保護観察中で精神科の受診を義務付けられているという設定のようだ。
精神科医(木野花)とのやりとりからは主人公は解離性障害のように見受けられた。よく多重人格と同一視される障害だが、症例の一つとして、自分の感情や行動を客観的に観察・評価する主体が現れることがあるそうだ。この場合、自分は絶対的に正しいと思い込むことが多い。
沙苗についても同様で、隼人への愛は究極の愛であり、彼からも自分だけが愛されており、彼を殺そうとしたことさえも愛の行為であるという。彼との関係は、タイトルにあるような人生における「一過性の熱」であるといった考え方は受け入れられず全力で拒否する。
一方、健太とは粛々と結婚し表面上は普通の夫婦関係を築いている。それが解離性障害の一つの面であるわけだが。
気の毒にも、周囲の人たちは主人公に巻き込まれ不幸な成り行きとなっていく。
まあ実際には傷害事件の保護観察対象者の身の回りに事件の関係者を安易に近づけることはないと思う。そういう意味ではこの映画は面倒くさい人たちが話をさらにこじらせた面倒くさい話と読めないこともない。
今回、橋本愛の本作についてのインタビューも目を通した。オファーは企画段階からすでにあったようで、脚本はいわばあて書きで書かれたように思える。誤解を恐れずいうと彼女の理屈っぽい感じに期待感があったわけだ。
驚くべきことに、橋本はこの主人公について肯定的な見方をしており「自分の信じているものを守る強さ」といった言及もある。もちろん役作りには相当の葛藤があったことと読み取れるが、やや入り込み過ぎであり、役への客観視が必要だと思う。その上でもう少し演技がついてくればということではあるが。