「よく分からないことが多過ぎて、納得も共感もできない」隣人X 疑惑の彼女 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
よく分からないことが多過ぎて、納得も共感もできない
偏見や差別の醜さとか、疑心暗鬼の愚かさとかをいくらでも描けそうな題材なのに、そうならないのはどうしたことだろう?
Xは人間をコピー(スキャンとトレース)するということだけど、コピーされた元の人間はどうなってしまうのだろうか?同じ人間が2人いるみたいな描写がないところを見ると、抹殺されてしまうのか、あるいはXに体を乗っ取られるということなのか?そうだとしたら、まさしく「侵略」以外の何ものでもないのではないか?
終盤で、台湾人留学生のコピー元と考えられていた麻薬の密売人が逮捕される場面が出てくるが、単なる人違いだったのか、それともやはりコピー元だったのかがよく分からなかった。
あるいは、人間をコピーしたXは、その人間になり切ってしまって、自分がXであるという自覚もないのだろうか?
途中、人間とXの子供だとそうなるといった説明があるが、そうだとしたら、最後にXらしいと判明する人々について、辻褄が合わないことが多過ぎるように思える。
調査会社にリストアップさせたという週刊誌の取材対象にしても、どういう理由でXと疑われたのかがよく分からないし、誰がXなのかは、登場人物の1人が最初に黒い影に襲われた時点で察しがついてしまう。
主人公の記者が、2人の取材対象のうちの1人に恋愛感情を抱き、もう1人をそっちのけにしてのめり込んでいくのは、明らかにジャーナリストとして失格だし、確たるウラも取らずにデマかせの記事を出す週刊誌の編集部もお粗末過ぎる。取材対象の家に押しかけるマスコミの描き方もありきたりで、主人公が言及する「大統領の陰謀」の足元にも及ばない。
この場合、マスコミが伝えなければならないのは、「誰がXか」ということよりも「Xは本当に人間に危害を加えないのか」ということのはずで、そうであるならば、主人公は、マスコミの世界に留まって、Xの安全性を訴え続けるべきだったのではないだろうか?
主人公が想いを寄せる女性も、怪しげな雰囲気や謎めいた感じがなく、ミステリーとしても、サスペンスとしても、一向に盛り上がらない。せっかく、久しぶりの上野樹里なのに、勿体ないとしか言いようがない。
台湾人留学生にしても、あの語学レベルでは、アルバイトどころか留学はとても無理だろうし、それ以前に、ある程度の日本語を学んでから日本に来るのが普通だろう。むしろ、あれだけ流暢に英語が話せるのなら、日本ではなく英語圏の国に留学すればいいのにと、思わず突っ込みたくなってしまった。
ラストの、手首の3つのホクロにしても、どんでん返し的な驚きを狙ったのかもかれないが、観る者を混乱させるだけで、不要としか思えない。
結局、何から何までよく分からないことが多過ぎて、物語に納得することも、登場人物に共感することもできなかった。