劇場公開日 2023年12月1日

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「折角の上野樹里が・・・」隣人X 疑惑の彼女 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0折角の上野樹里が・・・

2023年12月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

上野樹里の7年ぶりの映画出演作なので、どうしても観たかった。

【物語】
笹憲太郎(林遣都)はジャーナリストを夢見る若者。新聞記者になりたかったが、高卒の憲太郎には手が届かず、何とか 週刊誌の契約記者として働いている。しかし、これまで採用されるような記事は書けず、このままでは契約を切ると編集長に脅されていた。夢の実現が崖っぷちというだけでなく、彼を育ててくれた祖母の養護施設の費用も滞納している憲太郎は経済的にも追い込まれていた。

その頃世間の関心は“惑星難民X”一点に集まっていた。Xとは紛争により故郷の惑星を追われて地球を救いの地として訪れた異星人のこと。Xが世界中にあふれていることから、最近日本政府も彼らを難民として受け入れることを決定したからだった。

「Xは人に危害は加えない」とされていたが、多くの日本人は未知のXに不安を抱いていた。彼らは擬態する能力を持ち、見た目は完璧に日本人となるため、誰がXなのか分からないことがさらに不安を煽るのだった。

憲太郎が契約する週刊誌は世間の注目を集めるXの特集を大々的に組むことを決める。憲太郎は起死回生のスクープを狙ってX特集チームに志願。チームでは調査機関を使ってX
疑惑のある人間を抽出。憲太郎はその中の一人柏木良子(上野樹里)の調査を開始。しかし、正体を隠して少しずつ距離を縮めていくうちに彼女に惹かれてしまう。 一方で、憲太郎自身“惑星難民X”への不安、疑心暗鬼は人一倍強く、恋心と恐怖の狭間で揺れていた。

【感想】
久しぶりに上野樹里を見られることを楽しみにしていただけなので、文句を言うことも無いのかも知れないが、それでもちょっとガッカリ。
そう、折角上野樹里を主演に迎えるなら、地味でも構わないが、いい作品を観たかった。

ほとんど、予備知識無しで観始めたのだけれど、あまりに突飛な設定で始まるので、最初これはコメディー作品なのか? と思った。
しかし、話が進むとおかしな設定ではあるけれど、コメディー要素は薄いことが分って来て、ヒューマンドラマなのかと思い始める。確かに終盤はそれっぽい展開ではある。通して見れば社会派ドラマの風でもある。

しかし、それぞれが高次元で実現されていれば“凄い作品”なのだけれど、どれもこれもお粗末というのが正直な感想。良かったのは上野樹里のみ。

何となく言いたいことは分かるし、描こうとした主題は悪くないと思う。 万国共通の異民族に対する差別の歴史、最近のコロナ騒ぎのときの自分達の安全を守るために排他的心理が露骨的な出たこと。あるいは急激なグローバル化で日本にも外人が溢れ、「今後どうしたものか?」と多くの人が不安も感じる現代日本社会。
そういう時代景にマッチした主題だと思う。

がしかし、背景描写・演出が陳腐過ぎる。特に編集長発言がコント並にナンセンス。コメディーの中で主題を描くというのなら、それはそれで良いのだが、そんなんでもない。

ヒューマンドラマとしては憲太郎の設定がカス過ぎる。主人公は常に聖人君子やスーパーマンである必要はないのだが、カス過ぎるのはやめて欲しい。共感することができなくなる。俺的には裏切りの背後にあるお婆さんの施設費用未払い問題をそうなる前に「なんとかせえや!」と言いたくなる。
例えば、「そうならないように夜は別の仕事をして稼ごうと思ったが、体を壊して働けなくなり、いよいよ困って自分は彼女より、自分を育ててくれたお婆さんをとるしかなかった」くらいの展開にしてくれたら、共感することができたが・・・

クライマックスの良子の父親の会見シーンだけは感動的だっただけに、そこに至るお話がもう少しまともだったら、記憶に残る作品になっただろうが・・・

泣き虫オヤジ