52ヘルツのクジラたちのレビュー・感想・評価
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さすがの内容・演者で見入りました
濃密な内容と見事な演者のパフォーマンスでかなり見入りました。映像や音楽もかなりよかったので、映画として作品の質はかなりのものだと思いました。悪くいえば暗くて地味な印象を受けてしまいますが、極力抑えたようなその映像と音響音楽は作品の内容と非常に馴染んでいて、なかなか感動的です。かといって、泣くだけではなかったようなもしかしたら泣けないような色々と深みがある物語でした。ヒール的な役柄を演じた人たちはあまりメリットがないような気がしちゃいましたが、それらが作品をもり立てていたと思えば、まぁ・・・
なかなか意義深い内容ですけれど、悲惨な現実ばかりが強調されている印象で、正直もうこんな世の中嫌だー!なんて思ってしまいます。このドラマで泣いて明日から自分の人生をしっかり生きていこうと思ったり、この事柄は決して絵空事ではないのだからしっかり受け止めあらゆる現実に目を向けていこうと思ったり・・・分かりやすくてよく理解できる作品で、質も高く見応え十分、それ故に難しさも感じます。
染まる
原作読了も、数年前なので細部は記憶が怪しいけど、成島監督が内容を丁寧に描いていて好感。海をたゆたう感覚のテンポを崩さず、過酷なシーンも含めてすんなりと話が入ってくる。社会問題を取り扱いながら、声高に社会派ぶることもなく、ドラマとしてしつかり昇華させていて、感情の揺さ振り方についても後味が良い。
それはさりとて、杉咲花が秀逸。この方、どんな作品にもさらりと溶け込むところが怖い。作品に色を付けるというより、作品に染まる方面の役者さんだと思うが、ここまでいろんな役柄にはまるのだから、多くの監督は自分の作品で撮ってみたいと思うだろう。華奢であどけない顔立ちで、アイドル方面でもいけそうな明るい雰囲気だが、「市子」の恐ろしい難役や綾野剛と共演の「楽園」など、割と過酷な境遇の不幸な役が多い印象なのは、S系の監督達が、愛くるしい顔から恐怖や絶望の表情を引き出したくなるからなのかも。
主人公の人生を助けるミステリアスな岡田安吾役の志尊淳、とにかく友達思いの親友、三春役の小野花梨も、下手すると変に悪目立ちしそうな、キャラクターや立ち位置が難しい役どころかと思うが、うまくハマっていた。それほど出番は無いものの、ベテラン俳優陣も映画を引き締める。倍賞美津子、余貴美子は、それぞれ重要なターニングポイントで途中登場となるが、綺麗に物語の転調を支えていた。こうした演者や演出、物語など、良いチームワークで出来上がった秀作だと思った。
原作読んで無くとも、充分楽しめると思うので、おすすめできる作品です。
永遠の52ヘルツ
海の中でひとり
スイスイと
気持ちよさそうに通り過ぎる誰かとはちがう自分
泳ぎ方も、なにかちがう自分
わかってもらいたいと
願いながら
声をあげることもできない
闇夜の手探り
やがてそれもあきらめる
自分の居心地は自分にしか
わかり得ないのに
もしかしたら
そのおかしさにさえ気がつかぬままの
いのちもある
たったひとりのクジラたち
そこから救いあげることができるのは
本当に聴こうとする存在だけ
そんな人がひとりでも増えれば
今日も誰かを救えるのかもしれない
そして寄り添う人に
また寄り添う人がいてくれたなら
どんなに心強いことかを知る
ふたりの心の前に現れたくじらは
巨大に光る黒い体を空中で捻らせて何を言ったか
〝どうか彼女を幸せにしてください〟
全身に漲る感情は
海原を叩き割る
ざばざばと慌ててうごめく波間に
蹴散らされた海水が
おお粒のしぶきをきらめかせ消えていく
貴瑚は52ヘルツの音に耳をすませて
手をさしのべ愛を救った
晴れ上がる空と海を臨む高台で
笑顔が集まる光景に貴瑚と愛が和む
それは安吾が貴瑚にかけた言葉が辿り着かせた居場所だ
〝抜け出していい〟
〝生き方をかえてみない?〟
そして、そう教えてくれた彼さえも貫けなかった現実
深すぎる海に再び消えた
永遠の52ヘルツの響きを忘れてはいけないのだろう
誤字修正済み
映画化されると知って原作を読みました。物凄く面白くて1日で読破してしまった作品!ほぼ原作通りの映画です。
実母によるネグレクト、家庭内DV、ヤングケアラー等の社会的弱者やトランスジェンダーの心の叫びは同じ悩みを持つ者にしか聞こえない。
52ヘルツという高音域で歌うクジラは少なく、その声は仲間には聞こえない。
人間も同じで弱者の声なき声は同じ悩みを持つ者にしか聞こえない。実母に舌を煙草で焼かれて声を失った少年が、同じ虐待経験を持つ者に心を開いた時に、発する声に涙しました。
主人公の真湖(通称キナコ)、親友の美晴、美晴の同僚でトランスジェンダーの安吾(通称アンコ)、キナコが逃避した大分で出会った少年愛(通称52,本名イトシ)は杉咲花、小野花梨、志尊淳、そして少年役の桑名桃李の演技が秀逸。
ネグレクト、虐待、娘に過剰依存するキナコの鬼母には真飛聖、少年の鬼母は西野七瀬。
腹立つくらいの演技でした。成島監督には「八日目の蟬」でも泣かされた。サスガです。
普通にくらしたい
原作未読です。
映画の告知で本屋大賞受賞を知りました。
試写会にて一足先に鑑賞しました。^ ^
様々な生きづらさを抱えている人たちの話
貴湖(杉咲さん)を軸に
貧困、介護、DV、性同一性障害
ネグレクト…
まだまだ見逃した事もあるかも、です。
人は幸せになれると信じて
頑張って暮らしている。
誰かに相談すること無く、手段も知らず
空回りや、見誤ったり
家族(子供)を傷つけ
あるいは、自分で自分を傷つけてしまう
わからない?見えていない、気付けない
それぞれが、もがく様子を丁寧に表現されていました。
「○○だから」に、縛られて
周囲にSOSを発信する事なく
絶望し孤独にくらしている。
貴湖が、たくさんの問題に直面し絶望する
友達に助けられ、時に一人で乗り越え
強くなり愛情が深くなる様は
見応えあります。
大分の美しい景色や方言…
倍賞美津子さん出演はあまり
なかったのですが、大分弁に
ほっこりしました。
志尊さんよかった
他の役者さんも素晴らしかったのですが
やはり、志尊さん綺麗で素敵でした。
是非映画館で観てください。
今年のベスト3に入る作品
この作品は原作も読んでいましたが、映画は原作に負けず劣らず素晴らしい出来だと思います。
原作から省いてある部分もある反面、さらっとしか描かれていなかった部分を映画では丁寧に描かれていたり、映画として見ごたえのある作品となっています。
なんと言っても、杉咲花さんの演技がすごいです。それとアンさんを演じる志尊淳さんも、悩めるアンさんを見事に演じています。
今年はまだ始まったばかりですが、この作品は今年のベスト3には入る作品だと思います。
必見です。
52ヘルツの歌声は今日もあちこちで聞こえるはず
クジラの歌声って聞くとロマンチックに感じるのに、この52ヘルツのクジラの歌声は泣き声に近いイメージがある。
届かない声を聞くには、同じように届かない声を持つしかないのか。
知った痛みだけを感じていたのでは、この世の不公平も不幸も決して消えないだろう。
杉咲花の貴瑚、すごかった。
貴瑚を廃人の状態から救い出した安吾だけど、安吾の苦悩は貴瑚のそれより見ようによってはしんどかったと思う。
変えられるものと変えられないもの。
心と体は一体化しているので、切り離しては生きていけない。
この世の地獄を生き抜くにはそのままの自分を受け入れてくれる愛が必要だという事をまた思い知った。
原作を読んで思う。
52ヘルツの鯨について考える。
知らなければ気づかずにいた孤独が、仲間がいるかもしれないと知ってしまった時にどれほどの重さでのしかかってくるのかと想像したら、とてもじゃないけど立っていられないわね。
一人で楽しく歌ってた歌が、実は仲間を呼ぶ手段だと言うことに気づいてしまうのだろうか。それとも最初から、仲間を呼ぶために歌ってるんだろか。どちらにしても壮大な寂しさは消えない。
そして貴瑚はそれを自分の境遇と一緒だと考える。
仲間であるはずの家族の中で、一緒に暮らしているのに自分の声が届かないってどんな感じなんだろう。
『ウーマン・トーキング』の時も、同じコミュニティの中で同じ思想を持っていたはずの男性と通じる言葉を女子は持たなかった、言葉がまるで通じない人たちとの暮らしを強要されていた、と私は思ったのだけど、この話を読んだ時にも思った。
こんなに色んなものが発達した今でも消えない児童虐待、毒親、LGBTQ、介護のような社会問題が、貴瑚の人間関係を通して複雑に絡み合っていく様、いや、後半になるにつれ絡まっていたものを解いていく作業になるのか?何より貴瑚の全てを変えたアンさんだけど、アンさんのペンチで掴んで捻るような猛烈な心の痛みと葛藤がとにかく強烈で、読み進めるのが辛かった。
貴瑚の名前は、珊瑚の一部にもなってて、とても美しい意味をもつ素敵なお名前だと思う。生まれた時はきっとすごく大事に思ってつけられた名前のはずなのに。
虐待で亡くなる子どもの名前を見てると、熟考された可愛いお名前が多い。
そういうニュースを見るたびに、生まれた時は絶対みんな生まれてきてくれてありがとうの気持ちで名前をつけたんだろなぁと思わずにいられない。
心から悲しくなる。
いまこの瞬間にも52ヘルツの歌声を放っている人々が沢山いると思う。
出来るだけその声を聞き逃さないように、キャッチできるように、自分のアンテナを日々チューニングし直していかないといけないなと思う。
泣ける映画とかじゃない。
心が痛くて自然と流れる涙もあるのだ。
要ハンカチ・・・本屋大賞受賞作は間違いない
現代的なテーマがこれでもかというくらいに詰め込まれているように感じるが、
声なき声を持つ人、苦しくても声を出せない人がそれだけ多いという事であるし、その声を聴こえるようでありたい、と思わせてくれる感動作だった。
原作小説も読んだ当時泣いたが、それから3年経って時世もアップデートされている中、映画も丁寧にアップデートされていると感じる。素晴らしい。
「八日目の蝉」の成島出監督の演出に進境著しい主演の杉咲花も、共演の志尊淳もそれに応えている。ドラマに寄り添う音楽が涙を紡ぎ、エンディングのSaucy Dogの歌がまた救いになる。
ベタな表現でいうと、絶望からの希望に大泣きしてしまった・・・本屋大賞受賞作は間違いない。
補足:資料で確認出来なかったけど、音楽の小林洋平って「異動辞令は音楽隊!」の人かな。とても良かった。
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