劇場公開日 2023年10月6日

「主人公の街の人々を愛し、街を脅かす存在に対しての怒りの大きさを感じさせる決着でした」イコライザー THE FINAL 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0主人公の街の人々を愛し、街を脅かす存在に対しての怒りの大きさを感じさせる決着でした

2023年10月8日
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鑑賞方法:映画館

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■イントロダクション
 本作は、元CIAトップエージェントのロバート・マッコールが、19秒で世の悪を完全抹消する闇の仕事請負人(通称:イコライザー)として暗躍する姿を描いた『イコライザー』シリーズの3作目。
 2014年に公開された1作目では、昼はホームセンターの従業員として働くマッコールが、少女テリーを救うためにロシアン・マフィアを壊滅。2018年の2作目ではタクシードライバーに転職し、CIA時代の同僚が惨殺された事件の真相を辿る中で、自分と同じく特殊訓練を受け、悪に転じたもう一人のイコライザーと対決しました。
 マッコールはいつの日も、法や警察が介入できない暴力に苦しむ弱き人々を救うため、とてつもない強さで冷静沈着に悪を抹消してきました。そのマッコールの完璧な仕事遂行ぶりは、まるでアメリカ版「必殺仕事人」と例えられ、今もなお多くのアクションファンを熱狂させ続けています。
 そして遂にシリーズ最終章となる本作!アメリカ・ボストンから遠く離れたイタリアに舞台を移し、ローマ、ナポリ、アマルフィなどで初の長期海外ロケを敢行。シリーズ最大のスケールで物語が展開してゆきます。そして血を血で洗うバイオレンス満載の衝撃のクライマックス。最終章にして、マッコールの怒れる正義がドドンと一線を超えるのです。 第一作から引き続きアントワーン・フークアが監督し、デンゼル・ワシントンが主演。

■ストーリー
 元アメリカ国防情報局(DIA)の特殊工作員であったロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)はイタリア、シチリア島のあるマフィアが管理するワイナリーを襲撃。目的の品を取り返したマッコールは撤収しようとしますが付近にいたマフィア構成員の孫に油断し、銃弾を受けてしまうのです。重傷を負ったマッコールはイタリア本島までたどり着きますが、アマルフィ海岸で力尽き、意識を失います。

 海岸沿いの田舎町アルトモンテでカラビニエリ・国家憲兵をしているジオ・ボヌッチ( エウジェニオ・マストランドレア)は、車の中で意識を失っていたマッコールを発見して地元で長年医者を務めてきたエンツォ・アリシオ(レモ・ジローネ)のもとへ連れて行きます。
 意識が戻ったマッコールは、銃創であることを追求せず、警察などにも通報しなかったエンゾやジオに感謝しつつ、アリシオの計らいで町で療養を行うこととします。
 やがて杖をついて街を歩けるようになるまでに回復。ジオと娘のガビ、地元のカフェの店員アミーナ(ガイヤ・スコデッラーロ)など、親切な町の人々と交流していくマッコールは、アルトモンテの街と人が好きになっていきます。そしてマッコールはこの街を安住の地と心に誓い、イコライザーのスイッチともいうべき腕時計を外すことを決意。そこで穏やかに新たな人生を送るはずでした。
 けれども彼にはまだやるべきことが残されていたのです。
 マッコールはCIAに匿名で連絡し、電話を受けた捜査官のエマ・コリンズ(ダコタ・ファニング)にシチリアのブドウ園の調査を依頼します。
 エマは上司のフランク・コンロイ(デヴィッド・デンマン)に相談し、CIAチームを率いてブドウ園を調べることになるのです。すると、ブドウ園から大量の麻薬と多額の金を発見されるのでした。
 彼女はアルトモンテにいるマッコールの居場所を突き止め、マッコールの目的とブドウ園の実態について連絡を取り始めるのです。
 そして、アルトモンテを買収してリゾート地とする計画を行っていたヴィンセント・クアランタ(アンドレア・スカルドゥッツィオ)とその弟のマルコ(アンドレア・ドレロ)一味の地元民を蹂躙する弱いものいじめに怒ったマッコールは、彼らと一戦を交えることを決断するのでした。けれどもヴィンセントはナポリを拠点とするイタリア5大マフィアのカモッラの頭目の一人であり、強大な軍勢を従えていました。
 この決断がやがてマッコールをイタリア全土を恐怖に陥れる危険と対峙することになっていくことになるのです。

■解説
 先ずは1作目と2作目はその平穏生活から制裁モードへと切り替わっていく姿が順を追って描かれていたのですが、3作目の『イコライザー THE FINAL』は意表を突くオープニングで始まります。とにかくワイナリーにおびただしい死体がる凄惨なシーン。いきなりエンディングから始まるような冒頭で、映画の世界に引き込まれました。
 しかし、状況が全く説明されません。一人の男が恐る恐るワイナリーの部屋の奥へ突き進んでいくと、見慣れない黒人が手下二人に銃を突きつけられてるではありませんか。マッコールです!
 ここから冒頭の見せ場に。彼は腕時計を見て、「9秒だ」とつぶやき、カウントダウンをはじめます。そしていとも鮮やかに、そばに生き残っていた3人を、予告通り9秒で殺してしまうのでした。現場に佇むマッコールは余裕でワインを飲んでいるわけですが、それがまるで生き血を飲んでいるように見えて、とても不気味でした。
 ここでポイントなのが殺しの秒数。このシリーズの名物は、マッコールの殺しの超スピード感にあります。1作目の冒頭シーンではそれが30秒でした。2作目では19秒に、スピードアップし、3作目にはさらに短縮し9秒にまで縮めています。ただ2作目と較べてスピーディーな接近戦は大幅に減少して、映像でカバーしています。主演が御年68歳であることを考えれば、見応えはそれで充分でしょう。
 そして3作目では、最後の殺しはガンもナイフも使わず、わざとたっぷり時間をかけて生殺しするところが、本作らしくないところ。
 それだけマッコロールは街の人々を愛し、街を脅かす存在に対しての怒りの大きさを感じさせるシーンでした。

■シリーズ初見の方へ
『イコライザー』シリーズの初見の方へ、過去2作との連結がハッキリしておらず、ひとつの作品で完結していくスタイルとなっています。なので本作を初めて鑑賞する人でもそれほど問題ないと思います。 本作をご覧になって『イコライザー』ならではのスピードアクションがお気に召せば、前2作もご覧になってはいかがでしょうか。
 過去2作はAmazonprimeでご覧になれます。

流山の小地蔵