吟ずる者たち

劇場公開日:

吟ずる者たち

解説

日本酒造りが盛んな広島の町で日本で初めて吟醸酒をつくった三浦仙三郎の酒づくりの思いに触発され、酒づくりの道を歩み始める女性の姿を描いた人間ドラマ。東京で夢破れ、故郷の広島に帰ってきた永峯明日香。三浦仙三郎の杜氏の末裔が継いだ酒蔵で育った彼女は、酒づくりに興味はあったものの、養女であったことから実家を継ぐことはそぐわないと、酒づくりを避けて生きてきた。目標を見失っていた明日香は父が家宝とする仙三郎の手記を目にする。明治初期、新米酒造家だった仙三郎は、醸造中に中の酒が腐る「腐造」に何度も見舞われる。さまざまな逆境の中、腐造を起こさずに安定した日本酒醸造技術の確立に研鑽を重ね、ついに軟水による低温醸造法を導き出す。明日香は手記に書かれた、「100回試して、1000回改める」という「百試千改」の思いに強く惹かれていく。主人公・明日香役を「大綱引の恋」、ドラマ「コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」シリーズの比嘉愛未が演じる。

2021年製作/115分/G/日本
配給:ヴァンブック
劇場公開日:2022年3月25日

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映画レビュー

4.0【明治の広島・西条で後世”吟醸酒の父”と呼ばれた三浦仙三郎の「百試千改」の魂は令和になっても、死なず。今作は”一流のモノ作りに必要なモノは何であるか。”をキチンと描いた作品である。】

2023年6月18日
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鑑賞方法:VOD

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ー 令和、東京での夢破れ広島・西条の酒蔵の実家に戻った永峰明日香(比嘉愛未)を軸にした酒蔵の人々と、明治に度重なる”腐造”や次々に家族を喪う境遇に苦しみながらも不撓不屈の精神で、酒造りに取り組む三浦仙三郎(中村俊介)やその妻ソノ(戸田菜穂)の姿を交互に描きながら物語は紡がれる。-

■東京で夢破れ、故郷・広島へ戻ってきた永峰明日香。
 実家は酒造家・三浦仙三郎の杜氏の末裔が継いだ酒蔵で、養女である明日香は幼き頃から酒造りに興味を持っていたものの、実家を継ぐことはそぐわないと避け、東京で暮らしていた。
 そんな折、父・亮治が突然倒れる。

◆感想<Caution! 内容に触れています。>

・明治期の酒造りの難しさー 硬水と軟水では仕込み方法が違う。-という今では酒好きであればある程度は知っている事を、一から見つけ出そうと四苦八苦する三浦仙三郎の姿には、モノ作りを生業とする者にとっては響くものがある。

・三浦仙三郎が次々に家族を亡くし、最後には子が出来なかったため貰い子の娘まで亡くしても酒造りを諦めない姿。そして、低温醸造法を見つけ出すのである。
ー あんな姿を見せつけられたら、昔気質の杜氏でも平伏するよな・・。-

■令和の時代、柵を自ら解き父の想いを汲んで酒造りに勤しむ明日香の前に現れた三浦仙三郎が言った言葉。
 ”儂の酒造りを継いでくれるんか・・。”

<そして、明日香は周囲の協力の下、倒れた父が三浦仙三郎が作った”花心”を現代の嗜好に合わせるように醸造所職員(川上麻衣子)の協力の下、深化させた酵母を使って”追花心”を作り上げるのである。
 今作は”一流のモノ作りに必要なモノは何であるか。”をキチンと描いた作品なのである。>

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NOBU

4.0「吟の滴、ふるふるまわりに」。蔵の中、桶の中で酒の神様が謡う姿が目に浮かんでくるようです。

2022年5月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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もりのいぶき

4.0よかったです。

2022年4月23日
iPhoneアプリから投稿

妻の実家が東広島で、お酒は飲めないが、風景、言葉が感慨深かった。

眠かったが、吸い込まれるよう眠けなく見れた。

三浦仙三郎という素晴らしい人に出会えて嬉しかった。

今度西条に行ったら、安芸津の三浦仙三郎の歴史にかかわるところへ行ってみたい。

個人的に安芸津はジャガイモが美味しいですよー

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とね

3.5日本酒が飲みたくなることだけは間違いない

2022年4月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 比嘉愛未はスレンダーな長身美人で、腕も脚も長くてスタイルはとてもいい。喜怒哀楽の表情もそれなりに上手だ。しかし何故か、存在感がない。本作品の演技もとてもよかったのだが、周囲を圧倒するような存在感に欠けている。三浦仙三郎を演じた中村俊介の存在感と比べると、かなり見劣りする。それがこの美人女優の主演作品が少ない理由かもしれない。演技は既に十分上手い。しかしこじんまりと纏まりすぎている感がある。もっと振り切った演技が出来ればと思う。

 広島は不思議な土地柄だ。有名人を多く排出する一方で、河合克行、案里夫妻みたいなクズの政治家を当選させる。反核、反戦の歴史がありながら、選挙で勝つのはいつも自民党である。総理大臣の岸田文雄も広島選挙区から選出された。去年の総選挙でも広島県で当選した9人の内、6人は自民党である。残りは公明、維新、立憲がそれぞれひとりずつだ。広島県民は何考えとるん。

 本作品にはいい人しか登場しない。ほのぼのとした作品だ。日本酒造りの歴史と苦労を描くが、必ず報われる苦労である。似たようなドラマに、和久井映見が主演した「夏子の酒」がある。尾瀬あきらの漫画が原作である。幻の酒米である龍錦を使って、幻の美酒「龍錦」を造り上げる感動のドラマだった。このドラマでの共演をきっかけに和久井映見と萩原聖人が結婚したという記憶がある。ポジティブなドラマは演者も盛り上がるのかもしれない。その後離婚したけれども。

 米と水と麹と酵母、それに製造環境の無限の組み合わせから、様々な日本酒が製造される。バリエーションとしては、葡萄の品種が1000種を超えるワインには敵わないが、日本酒はその年に作られた酒がすぐに味わえる。それに当たり年というものがないから、毎年が当たり年である。酒造りは麹と酵母の働きがすべてであり、人間はお膳立てをするだけだ。どんな酒ができるかは神のみぞ知るだ。これはいまでも変わらない。酒造りの面白さであり苦労である。

 映画としては平凡だが、家族の愛に溢れたいい作品である。出来上がった追花心(おいはなこころ)が美味しいかどうかはわからないが、鑑賞後に日本酒が飲みたくなることだけは間違いない。

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耶馬英彦
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