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コラム:佐藤久理子 Paris, je t'aime - 第69回

2019年3月27日更新

N・W・レフン、カルト作無料配信サービス仏語版開設をパリの映画祭で紹介

ホドロフスキー監督と久しぶりの再会を交わしたニコラス・ウィンディング・レフン監督 ホドロフスキー監督と久しぶりの再会を交わした
ニコラス・ウィンディング・レフン監督
(C)Kuriko Sato [拡大画像]

パリで毎年3月に、映画博物館(シネマテーク)と市内の映画館を使って開催される「Toute la memoire du monde(世界のすべての記憶)」という映画祭がある。国際修復映画祭とも呼ばれ、プリントの痛みが激しい旧作、名作を、後世に残すために修復し、紹介するもの。いかにも映画が文化として尊重されるフランスらしいイベントだ。第7回目の今年は、ニコラス・ウィンディング・レフン監督が主賓として迎えられたほか、イエジー・スコリモフスキ、ステディカムを発明した撮影監督ガレット・ブラウンらが招待され、それぞれトークをおこなった。

ここまで読んで、1970年生まれの比較的若めのレフン監督が修復映画祭の主賓に選ばれたのを、意外に思う方もいるかもしれない。だが実は、今年彼が選ばれたのにはわけがある。昨年7月に彼が個人的に開設した、世界の名作、カルト作を無料で紹介するストリーミングのサイト(https://www.bynwr.com/)の、フランス語版を開設することになったためだ。

画像2 (C)Kuriko Sato [拡大画像]

レフン監督といえばマニアックな映画ファンとしても知られ、自身がセレクションした映画のポスターを集めた写真集を発売したこともあるほど。ストリーミング・サービスは、そんな彼の映画愛が高じて、お気に入りの作品を多くの人に届けたい、という思いから作られた。誰でもサイトに登録すれば無料で作品が視聴できるという、太っ腹な心意気が沁みる。しかも投資家やクラウドファンディング、あるいは広告等に頼るわけでもなく、すべて経費は自分の懐から出しているというから驚きだ。

映画祭の期間に合わせ、フランス語サイトは3月16日にオープン。この日はサイトで順次公開となる4本の作品を寄りすぐり、シネマテークでオールナイト上映を敢行した。なかでも特に、若き日のデニス・ホッパーが出演しているカーティス・ハリントン監督作「Night Tide」(1961)は面白く、なぜこれまで本作が見過ごされていたのかと思うほど良くできている(サイトでは6月に視聴可能になる予定)。

オープニングには、レフン監督が敬愛するケネス・アンガーの「スコピオ・ライジング」とトニー・スコットの「ハンガー」が上映され、後者に主演したカトリーヌ・ドヌーブも駆けつけた。ドヌーブは本作の撮影を回想し、「とてもいい思い出です。残念ながら数年前に他界されましたが、トニー・スコット監督と仕事ができたことも、デビッド・ボウイスーザン・サランドンと共演できたことも、素晴らしい経験でした。ボウイとはほとんど撮影現場でしか顔を合わせなかったので、素顔を見られなかったのが残念でした(笑)。とても挑発的でエロティックな作品で、気に入っています」と語った。

画像3 (C)9Thierry Stefanopoulos [拡大画像]

一方レフン監督は本作について、「僕がニューヨークにいた14、15歳の頃、ブロードウェイのダウンタウンの映画館で、この映画と『地球に落ちて来た男』を2本立てで上映していたので見たのを覚えています。とても印象的でした。映画とは真のアート・フォームですが、とくに『ハンガー』の場合、既成のフォームに反抗するところがあり、その点でとてもパンクな映画。当時のニューヨークのきらきらした感じも良く出ていて、僕の若い頃の大きな部分を占める作品です」と語った。また最後に、「母がドヌーブさんによろしくと言っていました」と言い、ドヌーブが笑顔を見せる一幕も。

映画祭では他にも「プッシャー」シリーズを含むレフン監督の作品群が上映された他、彼がとりわけ影響を受けたという、ティント・ブラスの「カリギュラ」ロングバージョン、ラス・メイヤーの「ファスター・プシィキャット!キル!キル!」、5歳のときに見て以来影響を受け、アマゾンで撮った新作シリーズ「Too Old to Die Young」にも引用しているというジョン・ヒューストンの「ファット・シティ」、そして敬愛するアレハンドロ・ホドロフスキーの「エル・トポ」が上映された。

ホドロフスキー監督と久しぶりの再会を交わした彼は、以前チョコレートをリクエストされたことにならって、「エル・トポ」の中で監督が靴をかじるシーンに合わせ、靴の形をしたチョコレートをプレゼントした。ホドロフスキーは靴にかぶりつくお茶目な一面を見せながら、レフン監督と熱い抱擁を交わし、喝采を浴びた。

5日間の短い映画祭は満席の回が続出し、1万2000人を超える集客を記録したそうだ。(佐藤久理子)

[筆者紹介]

佐藤久理子

佐藤久理子(さとう・くりこ)。パリ在住。編集者を経て、現在フリージャーナリスト。映画だけでなく、ファッション、アート等の分野でも筆を振るう。「CUT」「キネマ旬報」「ふらんす」などでその活躍を披露している。著書に「映画で歩くパリ」(スペースシャワーネットワーク)。

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