コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第245回
2013年12月18日更新
第245回:2014年、ゴールデン・グローブ賞の行方は?
現地時間の12月12日、ゴールデン・グローブ賞のノミネートが発表された。投票を行うハリウッド外国人記者クラブの一員だから、おおまかな予測はついていたけれど、それでもサプライズがいくつかあった。会員が100人に満たないとはいえ、それぞれ異なる個性や嗜好を持ちあわせているため、同じ映画に対する印象がまったく異なる場合も少なくない。だから、まるで他人事のように結果を楽しむことができた。
個人的にちょっと残念だったのは、外国語映画部門での「そして父になる」の落選だ。カンヌで審査員特別賞を取った作品だし、評判も上々だから、ノミネートに入る可能性はあったと思う。ただ、同じ外国語映画部門に、「風立ちぬ」が入ったのが不運だった。「風立ちぬ」は11月に1週間だけ、アカデミー賞出品資格を得るためにアメリカで限定公開された。これは日本で上映されたものに英語字幕をつけただけのものだったので(英語吹き替え版は2014年2月に公開される)、ゴールデン・グローブ賞のルールでは外国語映画部門にカテゴライズされてしまう。もし、吹き替え版だったら、「そして父になる」が外国語映画部門、「風立ちぬ」がアニメーション部門と棲み分けが可能だったのだが、上映方式と出品ルールの都合で、直接対決になってしまったのだ。
さて、今年のアメリカ映画は豊作だった。いつもなら良作を10本選ぶのに苦労するのに、今年ではらくに15本は挙げることができる。フランチャイズ映画ばかりが目立つハリウッドだけど、こうした良作の製作にゴーサインが出ているのは嬉しい傾向だと思う。
ただし、良作がたくさんあると、選ぶほうもたいへんだ。ノミネート投票の締め切りは12月9日なのに、直前にニューヨーク出張があったので、移動中の飛行機で見逃した作品のDVDを立て続けに鑑賞したり、取材のあいまに分厚い作品リストを何度となくチェックした。ぎりぎりで鑑賞したスパイク・ジョーンズ監督の「ハー(原題)」が個人的には大当たりだったので、それまでに仕上がっていたランキングを書き直したりした。そんなメンバーのこだわりが大いに反映されたノミネート結果なので、映画を選ぶさいの参考にしてもらえたら嬉しいと思う。
なお、ゴールデン・グローブ賞授賞式は14年1月12日だ。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi