コラム：FROM HOLLYWOOD CAFE - 第218回

第218回：名作が新たな視点でよみがえる、注目の海外ドラマ「ベイツ・モーテル」

続編やスピンオフなど、映画の世界では人気作品のフランチャイズ化がすでに常識となっているなか、その波がアメリカのドラマにもやってきたようだ。ディズニー傘下の米ABCで放送されているファンタジードラマ「Once Upon a Time」には、ディズニーのお姫様映画のキャラクターが多く登場するし、CWで放送中の「The Carrie Diaries」は「Sex and the City」の前章だ。また、今年4月から米NBCでスタートする「ハンニバル」は、「羊たちの沈黙」などで有名なハンニバル・レクター博士を題材にしたドラマである。トマス・ハリスの「レッド・ドラゴン」を下敷きにしていて、アンソニー・ホプキンスの当たり役として知られるレクター博士には、「007 カジノ・ロワイヤル（2006）」で血の涙を流す悪者を演じていたマッツ・ミケルセンが扮している。

ついでに言えば、現在パイロット版が制作中の「S.H.I.L.D.」は、もちろん「アベンジャーズ」のスピンオフである。

これらのドラマが生み出された背景には、過去のライブラリーからさらなる収益を絞りだしたいという権利者側のビジネス上の事情がある。しかし、企画を託されたクリエイターは、単純に旧作をリサイクルせずに、それぞれ独自の視点を持ち込んでいるのだ。

たとえば、3月18日からA＆Eで放送開始となる「ベイツ・モーテル」だ。タイトルでピンときた人もいると思うけれど、これはヒッチコックの名作「サイコ（1960）」の前日譚を描くドラマだ。「サイコ」といえば、これまでに続編やリメイク映画、テレビ映画などさまざまな展開をしているから新鮮味を感じないかもしれないけれど、これがなかなかよく練られているのだ。

「ベイツ・モーテル」は、ノーマン・ベイツの青春時代を舞台にしている。ノーマンを演じるのは、「チャーリーとチョコレート工場」で知られるフレディ・ハイモア（実際には21歳だが、高校生を演じている）。ノーマンと母ノーマ（ベラ・ファーミガ）の親子は新しい街に移住。モーテルを購入し、人生の再スタートを切ろうとするものの、さまざまな不幸に襲われてしまう、というのが基本設定だ。

「サイコ」を見た人ならば、この変態親子にどんな末路が待ち構えているか知っているだろう。しかし、「ベイツ・モーテル」は、母子をきわめて同情的に描く一方、モーテルをめぐる壮大なミステリーを用意している。古いカーペットの下に隠されたメモ帳がきっかけで、ノーマンは闇のなかへと足を踏み入れていくのだ。「LOST」の制作総指揮を務めたカールトン・キューズがこのドラマを手がけているとあって、毎回、続きが気になるクリフハンガーが用意されている。キューズ自身は「ベイツ・モーテル」を、「ビバリーヒルズ高校白書」と「ツイン・ピークス」と「LOST」をかけあわせたドラマだと説明している。

「ベイツ・モーテル」を見る限り、今後もスピンオフドラマのブームは続きそうだ。同ドラマの日本放送は未定。