コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第168回
2012年2月3日更新
第168回:「24」と「HEROES/ヒーローズ」が合体? 新ドラマ「TOUCH」を最速レビュー
「24 –twenty four-」以来となるキーファー・サザーランド主演の新ドラマ「TOUCH(原題)」の全米放送がスタートした。当初、サザーランドはテレビへの復帰を考えていなかったというが、製作総指揮のティム・クリングに「TOUCH」の構想を聞かされると、引き受けざるを得なくなったという。クリングといえば、「HEROES/ヒーローズ」のクリエイターとして有名で、「HEROES」はあいにく途中から迷走してしまったけれど、野心的であったことは確かだ。そして、「TOUCH」もまた、大胆なドラマなのだ。
サザーランドが演じる主人公マーティンは、空港で荷物係として働くシングルファーザーだ。妻を同時多発テロで失ってから、息子のジェイクをたった一人で育ててきたが、どれだけ努力しても息子と心を通わせることができずにいる。いまや11歳になるジェイクは生まれてから一言も言葉を発せず、ノートに数字を書き込むことにしか興味がない。感情らしきものは見あたらず、父親にすら触れられることを極端に嫌がっている。
ジェイクが度重なるトラブルを起こしたことで、マーティンの養育能力が疑われ、ジェイクは養護施設に入れられることになる。
その後、マーティンがダニー・グローバー演じる教授と出会ったことから事態が一転する。教授によれば、ジェイクは特殊能力を持ちあわせているというのだ。ジェイクは万物のパターンを見抜く力があり、その能力を使って、人と人とを結びつけたり、来るべき不幸を阻止しようとしているという。言ってみればジェイクは予知能力者なのだが、あいにく数字でしか意志を伝えることができない。かくしてマーティンは、息子が提供する数字をヒントに、点と点を結びつけていくことになる――。
サザーランドがこの役に惚れ込んだのは納得だ。「24」のジャック・バウアーとはまるで異なる等身大のキャラクターでありながら、正しい行いをするために全力を尽くすところは同じ。バウアーほどの権力も行動力もないものの、世界をより良い場所へと変えるためにほんのすこしだけ貢献する。
「HEROES」との共通点もある。超能力者が登場するところはもちろん、世界各地を舞台に壮大なスケールでストーリーが展開するところも同じ(初回放送では、イラクや日本、アイルランドが登場する)。超能力者がひとりしか登場しない「HEROES」といえるかもしれない。
第1話は「アイ・アム・レジェンド」や「恋人たちのパレード」で知られるフランシス・ローレンスが監督しているため、映画並みのスケール感がある。今後もこのクオリティを維持できたら、サザーランドにとって「24」と並ぶ代表作になるかもしれない。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi