コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第154回
2011年10月7日更新
第154回:新ドラマ「ニューガール」、ついにズーイー・デシャネルの時代到来!
「あの頃ペニー・レインと」以来、僕はズーイー・デシャネルにひそかに注目してきた。大きな瞳をしたお人形さんのような顔立ちで、独特の雰囲気を持っているので、風変わりな女の子を演じさせたらピカイチだ。でも、映画の中ではいつも誰かのガールフレンド役止まりで、主役を張ったことがない。だから、タイトルキャラクターを演じた「(500)日のサマー」を見たときには、ついにズーイーの時代が来たと興奮した。しかし、その後、共演のジョセフ・ゴードン=レビットが「インセプション」や「50/50 フィフティ・フィフティ」、「ダークナイト・ライジング」と活躍の幅を広げていくのとは対照的に、ズーイーを取り巻く環境はほとんど変わらなかった。個性が強いことに加え、コメディを得意としているため、ハリウッドが用意する役にはなかなかはまりづらいのかもしれない。
2011年秋、ズーイー・デシャネルがようやくにスポットライトを浴びることになった。米FOXで放送開始となった新ドラマ「ニューガール(原題)」で、主役を演じているのだ。
ズーイーが演じるのは、風変わりな女の子ジェス。失恋のショックで家を飛び出した彼女は、見ず知らずの男3人が暮らすアパートに転がり込む。ジェスはルームメイトたちと些細な衝突を繰り返しながら、友情を深めていくというシチュエーションコメディだ。新時代の「フレンズ」といえるかもしれない。
ドラマの魅力はなんといっても、キュートで不器用でエキセントリックなジェスのキャラクター像だ。「かわいらしい」という意味のAdorableと、「まぬけ」という意味のdorkを掛けあわせたAdorkableと宣伝されているけれど、まさにその通りだと思う。そのイメージは、「自分のために書かれたようなキャラクター像だと思った」と本人が証言するように、ズーイーそのままだ。ただし、当の本人はここまでエキセントリックではないらしく、13歳のころの自分を思い出して演じているという。
多くの新ドラマが苦戦するなかで、「ニューガール」はアメリカで好調な滑り出しを見せている。毎週、ズーイーに会えるのは嬉しいかぎりだ。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi