コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第137回
2011年6月8日更新
第137回:最速レビュー スピルバーグの新SFドラマ「テラノバ」とは?
SF+恐竜+スピルバーグ。この組み合わせを聞いただけで胸の高まりを覚える人がいるかもしれない。スティーブン・スピルバーグが製作総指揮を務める「テラノバ(原題:Terra Nova)」は、この秋、全米放送を開始する新ドラマのなかでも最大の注目作だ。
5月18日、ビバリーヒルトン・ホテルでハリウッド外国人記者クラブ(HFPA)向けの記者会見が行われたので、会員になったばかりのぼくも潜入させてもらった。
会見ではパイロット版(第1話)が披露されたのだが、なにしろスケールが壮大だ。物語は2149年のアメリカで幕を開ける。環境汚染と人口増加は悪化の一途を辿り、もはや手のほどこしようもない状態になっている。そんななか、人類の存続を賭けた実験が行われる。タイムマシンを用いて人々を有史以前(なんと8500万年前!)に移民させ、今度こそ人類に正しい歴史を歩ませようというのだ。
「テラノバ」(ラテン語で「新しい地球」の意味)は、太古に移住するシャノン一家を中心にストーリーが展開する。恐竜が闊歩(かっぽ)するジャングルに作られた保護地区で、元警官の父(ジェイソン・オマラ)は警備員、医師の母(シェリー・コン)は病院、子供たちもそれぞれ任務を担うことになる。リーダーは、「アバター」で鬼軍曹を演じたスティーブン・ラングだ。ワイルドで危険に満ちた自然が舞台になっていることも含めて、「アバター」との共通点が目立つが、もっとも似通っているのはテーマそのものだとラングは言う。
「『アバター』は下半身不随のジェイクが、パンドラという異星で第2のチャンスを得る。『テラノバ』は、タイムトラベルした未来の人々全員が、第2のチャンスを得る。セカンド・チャンスこそが、このドラマのテーマなんだ」。
8500万年前の世界には恐竜がうようよしていて、現代人にとっては危険極まりない。おまけに、保護地区にテロ攻撃を仕掛ける謎のグループまで存在するのだ(どうやら、彼らも未来からやってきた人たちらしい)。
核戦争や殺人ウィルスなどによって人類のほとんどが死滅した未来を舞台にしたサバイバルドラマは決して珍しくないが、「テラノバ」は舞台を太古の地球に変えた点が新鮮だ。パイロット版はまだVFXが未完成だったため、現時点ではどれだけ迫力のある映像になるのかは分からない。とりあえずは2011年秋全米放送スタートを楽しみに待ちたいと思う。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi