コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第104回
2008年8月4日更新
第104回:「24」「LOST」が不在の合間をぬって、新作TVシリーズが続々
ご存じの人も多いと思うけれど、アメリカのTVシーズンは秋に始まって春に終わる。「24」や「LOST」など連続性の高いドラマは、冬のシーズン途中から開始することもあるが、どのドラマも春にはフィナーレを迎えてしまうことに変わりはない。
ドラマ放送が休止となる夏のあいだ、メジャーのネットワーク局ではリアリティ番組が花盛りだ。「America's Got Talent」(NBC)や「Big Brother」(CBS)、「I Survived a Japanese Game Show」(ABC)、「So You Think You Can Dance」(FOX)など、どのネットワーク局もリアリティ番組を垂れ流している。
その一方で、USAやTNT、AMCといったケーブル局は、最近、この時期を狙って新ドラマをぶつけてくるようになった。おかげで、夏のあいだもドラマを楽しめるようになったのだ。
サマーシーズンに放送される番組のなかで、いまもっとも話題のドラマといえば、ゴールデングローブ賞を受賞した「Mad Men」だろう。AMCで現在シーズン2が放送中の同ドラマは、批評家の評価が非常に高く、エミー賞の作品賞にもノミネートされている。1960年代のニューヨークを舞台に広告代理店の男たちを描くドラマで、たとえば第1話のあらすじは、タバコの有害性が認識されはじめたなか、主人公はタバコ会社のためのプレゼンを練らなくてはいけなくなる、というもの。いまや過ぎ去ってしまった“古き良き60年代”を忠実に描きながら、キャラクターの葛藤や倫理観がきちんと描かれているのが魅力だ。ちなみに、タイトルの“Mad Men”とは、広告業界人を指す業界用語だという。
個人的にお勧めなのは、こちらもこの夏にシーズン2に突入した「Burn Notice」だ。突如、CIAをクビになったエリートスパイが、探偵稼業で生計を立てながら、解雇された原因を突き止めようとするというスパイコメディである。毎回、主人公が依頼された仕事を解決する、という探偵ドラマのフォーマットに従いながらも、元スパイなのでその解決方法が意外性たっぷりで、しかも、マイアミを舞台にしているので、あっけらかんとした開放感がある。どこかの批評で、「『マイアミ・バイス』と『冒険野郎マクガイバー』を掛け合わせたよう」と書かれていたけれど、まさにその通り。主役のジェフリー・ドノバンはあいにく知名度がないが、タフでセクシーな恋人をガブリエル・アンウォー(「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」)、相棒をブルース・キャンベル(「死霊のはらわた」シリーズ)が演じている。重厚なドラマを求める向きにはお勧めしないが、夏場にはこのくらいの軽さがちょうどいいと思う。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi