コラム:編集長コラム 映画って何だ? - 第24回

2019年12月17日更新

編集長コラム 映画って何だ?

イザベル・アジャーニ主演「ポゼッション」、ブッ飛びの変態映画です

2019年12月某日、新橋の地下室で凄い映画に出合いました。「パラサイト 半地下の家族」ではありません。「1917 命をかけた伝令」でもありません。「ポゼッション」という1980年の映画です。今年スクリーンで見た映画の中で、間違いなく、一番ブッ飛んだ映画でした。

この映画を見るにいたったのは、allcinemaという映画サイトを運営している、スティングレイの岩本社長と久々にお会いしたことがきっかけです。情報交換のためのMTGを終えて、帰り際に岩本社長が私に尋ねてきたのです。

「あ、そう言えば『ポゼッション』の試写状は届いてますか?」

「えっと、確認します。『ポゼッション』ってどんな映画でしたっけ?」と私。

「イザベル・アジャーニですよ!」

この「ポゼッション」という映画が、正直どんな代物なのか分からなかったのですが、イザベル・アジャーニは私の中学生時代のアイドルです。岩本社長の気配に何か並々ならぬモノを感じながら、自分のデスクに戻りました。

画像1

ありました! 「ポゼッション」の試写状が。

不気味な笑みを浮かべたイザベル・アジャーニが、確かにそこにいます。やや、年齢不詳にも見えますよね。

そして私は、何の予習もせずに、新橋のガード下にある「TCC試写室」というレトロな試写室に出向いたわけです。かつてのアイドルの主演作を見るために。説明し忘れましたが、スティングレイはallcinemaという映画DBサイトを運営する傍ら、カルト映画の配給事業やDVDの発売も行っているのです。

試写が終わって……もう、ブッ飛びました。トンでもない変態映画。しかもイザベル・アジャーニ、身体張ってるなんてもんじゃない。当時25歳。裸も絡みも思いっきりです! しかもその相手が……△#●凸※凹(説明不能)

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もしも私が彼女の父親だったなら、悲しくなって泣いちゃうかも知れないレベル。「いくら仕事とはいえ、そこまでしなくてもいいんじゃ……」

監督は、アンジェイ・ズラウスキー。ポーランドからフランスへと亡命した監督です。映画のあらすじを、allcinemaから引用してみましょう。

私生活のない女」など、狂熱的な愛をスキャンダラスに描く亡命作家ズラウスキが、愛に憑かれ妄想の魔物とファックまでする役をアジャーニに演じさせた、半分オカルト映画のような異様な作品。長い単身赴任を終え、妻アンナのもとに戻ったマルク(どこか「ピアノ・レッスン」での役にも似通うS・ニール)は、妻の冷やかな態度に傷つく。ようやく、その不倫相手ハインリッヒと対峙するが、彼から“第三の相手”の存在をほのめかされたマルクもまた愛に苦しむ。だが一人息子ボブの通う学校にやって来たマルクはそこで妻と瓜二つの教師ヘレンと出会い、彼女に強く惹かれていく…。(引用おわり)

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冒頭、「パラサイト 半地下の家族」と「1917 命をかけた伝令」の名前を出しましたが、この2作品は今度のオスカー候補作にして、かなりの変態映画。しかし、同じ時期に試写で鑑賞した「ポゼッション」は、これらとは遙かに別格の変態性を発揮しているという……。アンジェイ・ズラウスキー、恐るべし。

この映画、ただの変態映画ではありません。81年のカンヌ映画祭コンペ部門に出品されており、何とイザベル・アジャーニが最優秀女優賞を受賞しています。そりゃそうだよなあ、頑張ったもんなあ。二役こなした上に、△#●凸※凹だもんなあ。

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81年当時、日本で流れていた岡本太郎のCM「芸術は爆発だ!」ってのを思い出しました。70年代、80年代って、映画の芸術としての地位は、今と全然違ったんだな。映画も、爆発してた時代だったんだよなって改めて思います。

今回の「ポゼッション」は、HDリマスターによって画像が大変美しく甦っています。これが映画館で見られるなんて、日本人は何て幸せなんだよ。

「今どきの映画は、何を見てもちょっと刺激が足りないよ」って人は、どうかこの映画を見逃さないでください。爆発してますから。20年1月4日より公開です。

筆者紹介

駒井尚文のコラム

駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。

Twitter:@komainaofumi

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