コラム:細野真宏の試写室日記 - 第84回

細野真宏の試写室日記

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)


第84回 試写室日記 なぜ「今日から俺は!!劇場版」と「コンフィデンスマンJP プリンセス編」は大ヒットしたのか?

2020年7月29日

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今週末は、ランキングを大きく左右する作品がないので、引き続き「今日から俺は!!劇場版」と「コンフィデンスマンJP プリンセス編」が映画業界を席巻しそうですが、そもそも、新型コロナウイルス騒動がまだ残る中、なぜこの2作品は大ヒットを記録できているのでしょうか?

まず、夏休み映画の勝負作だった7月17日公開の「今日から俺は!!劇場版」は、公開6日で興行収入10億円を突破し、公開10日で興行収入20億円を突破しています。

そして、同じく夏休み映画の勝負作だった7月23日公開の「コンフィデンスマンJP プリンセス編」も公開6日で興行収入10億円突破が見込まれています。

これは、期待通りか期待以上の大ヒットと言えると思います。

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今日から俺は!!劇場版」の配給元の東宝が公開初日に行なったアンケート調査では、男女比率は4対6と、意外にも女性の方が多いことが分かります。

客層は、10代以下の子供からシニア層まで非常に幅広い客層になっています。

そして、鑑賞動機ですが、「ドラマ版の『今日から俺は!!』が好きだから」が64.1%と、圧倒的に多かったことが分かっています。

しかも、2018年10月期に日本テレビ系列で放送された「今日から俺は!!」をリアルタイムで見ていた、という人が 82.5%もいることが判明しました。

つまり、連ドラ「今日から俺は!!」(平均視聴率9.9%・関東圏)の出来が良かったので、観客の8割以上が、ドラマのコアなファン層であることが分かります。

次に多かった鑑賞理由は、「ストーリーが面白そうだから」が28.8%で、「キャストが好きだから」は26.8%で、「笑えそうだから」が26.6%となっています。(複数回答可)

これも連ドラの関連と言えるでしょう。

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特に、今の時期は新型コロナウイルスで神経質な時期ではありますが、「コロナうつ」というのも厚生労働省が本格的な調査に乗り出すなど大きな社会問題にもなりつつあるように、多くの人たちは「コメディ映画」で気持ちを発散したい、という欲求の高まりがあり、これにマッチした待望の作品だったと言えると思います。

そのため、「新型コロナウイルス騒動が起こる前に想定されていた以上の成績」を記録しつつあり、今を反映する事象になっていると言えます。

個人的に、少し残念なのは、「福田雄一監督・脚本の作品だから」ということで選んだ人は12.6%と少数であった点です。

日本では、作品について、監督や作家への認識が低いことの表れで、これは今後の課題です。

とは言え、今回の「今日から俺は!!劇場版」が、興行収入40億円を突破すれば、「銀魂」シリーズを超え、福田雄一監督の過去最高の興行収入になるので、これを機に「福田雄一監督作品」というブランド力が確立されると良いですね。

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次に、「コンフィデンスマンJP プリンセス編」の配給元の東宝が公開初日に行なったアンケート調査では、男女比率は37.5%対62.5%となっていて、こちらは「今日から俺は!!劇場版」より女性層が多いことが分かります。

そして、客層は、20代が27.2%と最も多く、続いて50代が26.3%、40代が21.1%、30代が15.0%と、「今日から俺は!!劇場版」よりは客単価が高いことが分かります。

鑑賞動機は、「ドラマ・映画の『コンフィデンスマンJP』が好きだから」が69.5%と、観客の約7割も作品のコア層であることが分かります。

次に多かった鑑賞理由は、「ストーリーが面白そうだから」が36.2%で、「キャストが好きだから」は33.7%(複数回答可)となっていて、作品に入り込んでいる層が多いことから、映画の出来が良いのでリピーターも多そうなことが期待できます。

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このデータから、「今日から俺は!!劇場版」はファミリー層を多く動員できているため、特に週末に強い作品で、「コンフィデンスマンJP プリンセス編」は平日(レディースデイは特に)にも観客を動員できることが予想できます。

ちなみに、初日の満足度は「今日から俺は!!劇場版」は96.5%、「コンフィデンスマンJP プリンセス編」は96.3%と、どちらもほぼ100%に近い異常な数字となっています。

個人的には、「今日から俺は!!劇場版」は、ドラマ版をしっかり見ている人には満足度が高く、そうではない人にはそこまでは響かない可能性もあると思っているため、いまの再放送などで、どこまでコア層が作られるのかに今後の成績が左右されると思っています。

現時点で配給元の東宝は、「今日から俺は!!劇場版」は興行収入50億円突破、「コンフィデンスマンJP プリンセス編」は興行収入40億円突破が狙える、という観測を発表していますが、確かに現時点では興行収入50億円や40億円も決して夢ではない推移をしています。

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さて、実は、この2作品の大ヒットには、新型コロナウイルス騒動も大きな背景にあります。

一つは、共に「コメディ映画」ということで、目には見えにくいが深刻な「コロナうつ」などの対策に非常に合っていたという面があります。

もう一つは、「テレビ局映画」ということが大きく関係しています。

まず、テレビ局は、新型コロナウイルス騒動で、多くの企業がダメージを受けたので広告の出稿が減っている現状があるのです。

そのため、日本テレビとフジテレビは、代わりに自社の映画のCMを流す、という「実弾」を使うことにしたわけです。

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例えば、スタジオジブリの映画は制作費が高いために、その分、CMなどを多めに流していたのですが、まさに「今日から俺は!!劇場版」は(制作費はそれほど高くはないのですが)スタジオジブリ作品並みにCMが流れていて、その「実弾」による援護射撃の効果がかなり大きく出ていると思われます。

「テレビ局映画」の需要と影響力の大きさが、新型コロナウイルス騒動で、より顕在化しましたが、作品の出来(作品力)に加えて、これも2作品の大ヒットの背景にあるのです。

いずれにしても、「コンフィデンスマンJP プリンセス編」は主に都心部を中心に集客をしていて、「今日から俺は!!劇場版」は週末を中心に地方も含めて集客しているので、「共存共栄」という形で、バランス良く日本の映画館・映画業界を活気づける形になってきているのは希望が持てる状況と言えます。

筆者紹介

細野真宏のコラム

細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。

 首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。
 10年連続完売を記録し続けている『家計ノート2020』が遂に完成し、「老後に2000万円が必要って本当?」も詳しく解説!
Twitter:@hosono_masa

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