コラム:細野真宏の試写室日記 - 第50回
2019年12月10日更新
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。
また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。
更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)
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第50回「ジュマンジ ネクスト・レベル」【最速レビュー】。ソニーの株価も動かし得る作品になったメガヒット作「ジュマンジ」の最新作。日本ではどう動く?
2019年12月4日(吹替版)・3D@イマジカ試写室、6日(字幕版)・2D@ソニー試写室
今から2年前の2017年12月20日にアメリカで「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」が公開されました。アメリカでは落ちの少ない興行を維持し、公開3週目の段階で(1週前から公開されていた)メガヒット作「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」のV4を阻止する形で1位になり、その後も、公開4週目、5週目、7週目と計4週にもわたって「週末興行収入ランキング1位」になったメガヒット作「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」。
もちろんアメリカだけでなく世界中で大ヒットを記録して、それまでのソニー・ピクチャーズの独自製作・配給作品で、過去の「スパイダーマン」シリーズを抜き去るなど、歴代1位にまでなったのです!
ちょうど日本では、公開が2018年4月6日(金)からだったので、実は、この「試写室日記」を立ち上げるに当たって、当初のラインナップに想定していたくらいに、私はこの「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」を気に入ってました。
ただ、残念ながら忙しくて、この「試写室日記」では紹介できなかったのですが、「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」の日本での興行収入は12.4億円と“作品のポテンシャル”から考えると、少し残念な結果に終わってしまいました。
これは、日本では作品の面白さを多くの人たちに伝え切れなかった、ということなのでしょう。「映画の宣伝」というのは本当に難しいものなのだな、と実感しています。
そこで、本作の続編「ジュマンジ ネクスト・レベル」では、ゲーム性の面白さを中心に宣伝を展開しているようですが、果たしてこれが上手く新規のターゲット層に刺さってくれるかどうか注目ですね。
さて、作品の出来ですが、これは、申し分のない出来でした!
前作で「ゲーム内で、3回死んだら本当に死んでしまう」という、あの命がけの凄まじい体験を一緒に乗り越えた4名なので、高校生から大学生になっても、強い絆で結ばれていたんだな、と納得できました。
そして、タイトルにもあるように“ネクスト・レベル”のため、さらにミッションもハードになっています!
高いミッションを超えるためにも「仲間」が欲しいところですが、本作「ジュマンジ ネクスト・レベル」では、意外な登場人物が加わったりもします。
前作の「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」では、「アクション×笑い」というイメージでしたが、本作では「アクション×笑い×感動」といった感じで、さらにレベルアップしていると思います!
「吹替版」と「字幕版」ですが、私は、前作では字幕版だけしか見なかったことも関係しているのか、字幕版の方がすんなりと入り込めました。
また、吹替版のゲスト声優が、適任かどうか気になってしまうという人は、たぶん字幕版の方がいいような気がします。
勿論、あまりゲスト声優などは気にならない、という人は、吹替版も見やすくて良いと思います。
さて、肝心の興行収入ですが、「ドクター・スリープ」の苦戦からも分かったように、「40年前の作品の続編」といったようなハードルの高さがないので、その点では安心できます。
そして、「ドクター・スリープ」とは違い、必ずしも前作の「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」を見ていなくても楽しめるようになっている点も安心材料です。
ただ、強いて言うと、前作の「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」を見ていた方が、より楽しめる面はあるので、いくら1年半前の公開作品とは言え、新規需要を増やすためにも、地上波の援護射撃が欲しいところです。
地上波では、日本テレビ系の「金曜ロードSHOW!」で放送されるようですが、もし「ジュマンジ ネクスト・レベル」の公開日の12月13日(金)に放送されるのなら、日本での興行収入は前作超えの15億円程度は狙えた気がします。
ところが、実際の放送日は2020 年1月10日(金)なので、「アナ雪2旋風」と「スター・ウォーズ旋風」が吹き荒れている状態を想像すると、もう少し早めに援護射撃が欲しかった、というのが本音です。
なので、とりあえずの目途としては、興行収入が10億円を超えられるかどうか、というのが焦点になりそうです。
それにしても、このところメガヒット作はアメリカと同日公開が増えてきましたが、そうなると試写を回す余裕もないくらいの日程にならざるを得なくなり、「映倫審査」でさえ公開ギリギリという、なかなか大変な状況に…。
日本では、世界的に話題となるアメリカとの同日公開がいいのか、あるいは、前作のようにズラして宣伝期間を確保して公開日を迎えるのがいいのか、「ジュマンジ ネクスト・レベル」の日本での興行収入の行方と、世界の興行収入にも注目です!
筆者紹介
細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。
首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。
発売以来15年連続で完売を記録している『家計ノート2025』(小学館)がバージョンアップし遂に発売! 2025年版では「全世代の年金額を初公開し、老後資金問題」を徹底解説!
Twitter:@masahi_hosono