コラム:細野真宏の試写室日記 - 第45回

2019年10月30日更新

細野真宏の試写室日記

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)

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第45回「マチネの終わりに」。福山雅治の本格的な復活はいつに?

2019年10月29日@東宝試写室

今週末の11月1日(金) の“ファーストデイ”に公開される本作「マチネの終わりに」は、興行収入49.2億円を記録した名作「容疑者Xの献身」など「ガリレオ」シリーズの福山雅治×西谷弘監督の作品なので、作品のクオリティーは保証されているようなものでしょうし、実際に出来は良かったと思います。

しかも、本作の舞台は東京、パリ、ニューヨークと海外ロケも満載で、邦画としてはかなり意欲的な作品になっています。

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では、本作も大ヒットするのか、というと、そう簡単な話ではないのかもしれません。

個人的には、福山雅治という俳優は実に興味深い人物なので、早く本格的な復活を待ち望んでいるのですが、2015年の結婚報道以来、なぜか世の中の注目度が急速に落ちてしまっているような印象です。

そもそも、なぜ私が福山雅治の本格的な復活を望んでいるのか、と言うと、大きな要因としては2015年までの活躍の面白さにあります。

それまでは、かなり突飛な「男性限定LIVE」「10代限定LIVE」などを敢行しても成功を収めていて、「これだけ長く好循環が続くのは面白い」と注目していたのです。

逆に、「この好循環が途切れるのはいつなのだろうか?」とさえ考えるようになっていました。

それが2015年に訪れ、しかも想定以上に長く続いているので、今度は逆に釈然としなくなってきています。

確かに何をやっても上手くいく、というのは、一種のバブル的な要因もあったと思います。

とは言え、実力はあるので、決してバブルではないと思っています。

その意味では、2018年の「名探偵コナン」シリーズの最高傑作で興行収入91.8億円を記録した「名探偵コナン ゼロの執行人」のエンディングテーマ曲を運良く担当した際に、一度チャンスがあったんです。歌詞は作品と合っていて良かったのですが、あとは、曲のトーンさえ上手く大衆化できていれば、あそこで本格的な復活があったのでは、と本当に惜しいと思っていました。

さて、本作「マチネの終わりに」ですが、ダブル主演の石田ゆり子も自然体で良い演技をしていて、「大人向けの恋愛映画」として出来は良いと思います。

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ただ、読めないのが「大人向けの恋愛映画」の需要の大きさです。

例えば、同じく西谷弘監督作の「昼顔」は「大人向けの恋愛映画」で興行収入23.3億円を記録しましたが、この場合は連ドラで観客の興味を引きつけることに成功していたと思います。

一方で、本作「マチネの終わりに」は、原作はあれど連ドラはないので、見る前は、大ヒットする要素を見付けにくいという面があります。

そこで、私が見て良かった点を簡単にまとめてみます。

1. 映画のテーマがシンプルだけど、深い!

普通の感性では「過去は変えられない」と思っています。確かに過去に起こったことを変えることは現実社会ではできません。

ただ、未来から見ると、過去の出来事の解釈は変化していく、といった大きな視点は非常に面白いと思います。

2. 唐突に聞こえるセリフには、実は深い意味がある!

予告編でも使われている「結婚を止めるセリフ」は、かなりの唐突さを感じますが、映画を見ると、その隙間を埋められます。福山雅治が演じる蒔野はアーティストであって、表現者にとって特に作品や自身への理解度は、「時間」等の既成概念を大きく超えるものだったりするのです。

3. クラシックギターを弾く主人公なので、音楽が良い!

メインテーマ曲の「幸福の硬貨」は演奏シーンに向いていますし、サントラとしても効果的で、「音楽の映画」としても上質な雰囲気を醸し出すことに成功しています。

ちなみに「マチネ」という言葉は「ソワレ」という用語と一緒に使われる舞台関連の業界用語で、昼公演は「マチネ」、夜公演は「ソワレ」と呼ばれています。

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ネタバレしないレベルでは大まかにこんなところでしょうか。予告編からは伝わりにくいのですが、意外と深い物語となっています。そして、「どこで終わるのか」も重要な要素でしたが、終わり方も映画らしくて良かったと思います。

さて、本作ではどこまで興行収入が期待できるのでしょうか?

これは、日本での課題でもあるのですが、なかなか「大人向けの恋愛映画」がヒットしにくい面があるので、まずは興行収入10億円という通常の映画のヒットラインを超えられるかどうかに注目したいと思っています。

そして、福山雅治の復活とともに、やはり「俳優・福山雅治」の魅力を最大限に出せている西谷弘監督との「ガリレオ」シリーズの第3弾を早く実現してほしいと期待します。

筆者紹介

細野真宏のコラム

細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。

首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。

発売以来15年連続で完売を記録している『家計ノート2025』(小学館)がバージョンアップし遂に発売! 2025年版では「全世代の年金額を初公開し、老後資金問題」を徹底解説!

Twitter:@masahi_hosono

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