コラム:細野真宏の試写室日記 - 第288回
2025年8月22日更新

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。
また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。
更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)
試写室日記 第288回 「ジョン・ウィック」シリーズのスピンオフ「バレリーナ」のポテンシャルは?“一見さん”でも鑑賞可能か考察

今週末8月22日(金)から、「ジョン・ウィック」シリーズのスピンオフ作品である「バレリーナ The World of John Wick」が公開されました。
日本では、同シリーズの第1弾「ジョン・ウィック」が2015年に公開されました。キアヌ・リーブス主演のエッジの効いたアクション映画という感じで、当初は興行収入3億円台と、「知る人ぞ知る」という部類の作品でした。
それが、2023年に公開された第4弾「ジョン・ウィック コンセクエンス」では興行収入10.4億円と初めて10億円を超える大ヒット。いよいよ「ジョン・ウィック」シリーズが広く認知されるようになってきました。
そんな流れの中での劇場版初のスピンオフ作品となるので、タイミング的にもバッチリな作品と言えます。
個人的な体感では、「ジョン・ウィック」シリーズが大きく確変した第4弾「ジョン・ウィック コンセクエンス」から急激に完成度も面白さもアップしたイメージがあって、その流れの中でのスピンオフだったので、本作にも期待できました。

そもそも「ジョン・ウィック」シリーズは、「3人の男を鉛筆1本で殺した」など数々の逸話を持つジョン・ウィックというキャラクターの設定に面白さがあります。
つまり、鉛筆をはじめ“あらゆる物”を武器に変えて暗殺者と戦い続けるのです。
このDNAは、主演がキアヌ・リーブスから、「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」でも知られるアナ・デ・アルマスに代わっても引き継がれています。
スピンオフである本作の位置付けは、時間軸としては第3弾「ジョン・ウィック パラベラム」の少し後のようです。
そのため、第3弾を見返してから本作を見た方が良いのかもしれませんが、私は第3弾の記憶がほぼ無い状態で本作を見てみました。
結果としては、全く問題を感じなかったので、特に予習は不要かと思われます。

ただ、「ジョン・ウィック」シリーズを1つも見ていない状態で本作を見るのは、ややハードルがあるのかもしれません。
というのも、これまでのシリーズで培われてきた世界観のもとに本作があるので、予備知識ゼロの状態で見ると、面白いポイントを発見し切れないのかもしれないからです。
とは言え、むしろこのスピンオフ作品から「ジョン・ウィック」シリーズに入るというのは、意外と現実的なのかもしれません。
主人公のアナ・デ・アルマス演じる新キャラクター“イヴ”の目線で物語が進行していくので、これまで全くシリーズに接した経験の無い人は、この作品でシリーズの雰囲気を感じた後で過去作を見てみるという流れが、「ジョン・ウィック」シリーズを楽しみながら見られる最も有効な方法のようにも感じます。


個人的には、アナ・デ・アルマス×「ジョン・ウィック」チームによって、(現時点での)“シリーズ最高傑作”だと思っている第4弾「ジョン・ウィック コンセクエンス」に近いレベルで面白かったです!
「ジョン・ウィック」シリーズは第5弾の製作も決まっていますが、このスピンオフで面白味がさらに増した感があります。
ますます加速する「ジョン・ウィック」ワールド。ただし、本作は“スピンオフ”なので、興行収入は前作(シリーズ第4弾)よりは落ちるでしょう。その一方で、せっかく上昇傾向のシリーズなので、第3弾の興行収入5.4億円突破を目指し、“口コミ”で「ジョン・ウィック コンセクエンス」にどこまで迫れるのか注目です!
筆者紹介

細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。
首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。
発売以来15年連続で完売を記録している『家計ノート2025』(小学館)がバージョンアップし遂に発売! 2025年版では「全世代の年金額を初公開し、老後資金問題」を徹底解説!
Twitter:@masahi_hosono