コラム:人間食べ食べカエル テラー小屋 - 第14回
2020年3月13日更新
“村ホラー”がアツイ!巨大な恐怖が潜む、異常カルト集団の村「アルカディア」
今、村がアツイ!! 「ミッドサマー」や「犬鳴村」がスマッシュヒットを記録したことで、確実に村ホラーへの注目度が高まってきていると感じる。「犬鳴村」に至っては村シリーズ化するらしいですからね。
ところで、2011年にも村を舞台にしたホラー映画があったことを御存じだろうか。モンスターの女性と人間の男性の恋を描く映画「モンスター 変身する美女」を手掛けた、ジャスティン・ベンソン&アーロン・ムーアヘッドのコンビが監督・主演を務めた「アルカディア」という作品である。
本作もまた、ウェルカムカルト村から物語が始まるのだが、そこから別ベクトルでとんでもない事態へと発展していく。今回は、その内容について紹介していきたい。
かつて、カルト集団が住むと言われる村アルカディアから脱走した兄弟ジャスティンとアーロン(今回、監督コンビは本名のまま主役の兄弟を演じています)。長い間、世間と隔絶された村で生活を続けていた2人は、脱出してから10年経っても社会に上手くなじむことが出来ず、友人も恋人もいない生活を送っていた。
ある日、そんな彼らのもとに、アルカディアの様子が映像に収められたビデオテープが届く。それを観て懐かしさを覚えた弟アーロンは、兄ジャスティンにもう一度村を訪問したいと訴える。もう二度と戻りたくない思いでいっぱいの兄だったが、弟の意志の固さに折れて、一緒に村に着いていくことに。やがて2人が村に到着すると、なんと住民たちが10年前と一切変わらない姿で出迎えてきたのだった……。
本作に出てくる村は、アルカディアという名前の村で、そこではカルト集団が自給自足で生活をしている。アルカディアとはギリシャにある地名で、理想郷の意味合いがある。
アルカディアの住民たちは、カルト集団だからといって明確に異常な行動を取ることはしないし、基本的に人は良いので、兄弟とは普通にコミュニケーションを取る。ただ、言動の端々に若干の違和感が残る。この直接的でない違和感が、妙な居心地の悪さと独特の空気感を生み出している。
それに加えて、兄弟は次々と異常な現象を目の当たりにすることになる。中でも特に印象的なのが、村に着いた日の夜に行う綱引きの儀式である。その儀式とは、文字通り綱を強く引っ張るというものなのだが、その綱は遠く闇の向こうまで伸びており、こちらから綱引きの相手は一切見えない。何より綱の方向がおかしい。明らかに月に向かって伸びているのだ。どう考えても相手の大きさが数十メートルあるとしか思えない。一体闇の向こうには何がいるのか……。
このように、姿を直接映さずに人知を超えた何かの存在を匂わせるシーンがいくつもある。見えないが故に怖い。観客の想像力に委ねることで恐ろしさを増幅させている。
序盤から中盤以降にかけて時間をたっぷり使って村への違和感と謎を描くと、後半のパートからは辺り一帯に何が起きているのかを徐々に明らかにしていく。ある程度真相が分かってくると白けて一気に失速してしまうパターンをよく見かけるが、本作の場合は、村で何が起こっているのか分かれば分かるほど、むしろ恐怖が増していく。
一切年を取っていないように見える住民たちに何が起きているのか。これには予想のだいぶ斜め上をいく強烈な理由が用意されている。まだ観ていない方のためにここでは詳しくは書かないけど、もし自分がこうなったらと考えると、ちょっと正気保てないですね。
本作は、奇妙さと恐ろしさを持ち合わせた非常にユニークな一本だ。村への違和感がやがて抗いようのない強大な力の恐怖へとつながっていく過程に思わず背筋が凍る。
冒頭で引き合いに出したものの「ミッドサマー」等とは似て非なる内容だし、本来比べるものでもないのだが、この村ブームに合わせて本作も再注目されるとそれはそれで嬉しいので、そんな思いも込めて今回紹介させて頂いた。また、怪しい村好きだけでなく、巨大スケールの恐怖に飢えている人にもハマると思うので、そういった方にも是非お勧めしたい。
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筆者紹介
人間食べ食べカエル(にんげんたべたべかえる)。人間食べ食べカエルです。X(旧Twitter)で人喰いツイッタラーをやっています。ID @TABECHAUYOで検索してみてください。WEBや誌面で不定期に寄稿をするほか、新作へのコメントなどを書いています。好きなジャンルはホラーとアクションで、特にモンスターに人が食べられるタイプの映画に目がありません。「ザ・グリード」に出てくる怪物を目指して日々精進しています。どうぞよろしくお願いします。
Twitter:@TABECHAUYO