コラム:人間食べ食べカエル テラー小屋 - 第11回
2019年12月26日更新
クリティカルヒットな掘り出し物も!良作ショートホラーはコレだ!!
OSOREZONEでは毎月様々なホラー作品が追加されているが、12月はショートホラー特集と題して、世界各国から集めた10~20分ほどの短編作品が一気に追加された。いずれも、これまで日本語訳されていなかったものばかりで、この度の配信にあたって日本語字幕もOSOREZONEで作る気合の入りよう。今回のコラムでは、そんな珠玉のショートホラー群から、個人的に気に入った、または強烈に印象に残った作品を3つ選んで紹介したいと思う。
まず1つ目の作品は「ザ・キュア」だ。薬物依存症の治療を行う女性のもとに、依存を断ち切る特効薬を持った男が訪れる。登場人物は2人で、舞台はほぼ女性が住む部屋の一室のみという、シンプルな作りのシチュエーションスリラーである。
ウィズイン・テンプテーションの新曲かな?と思うようなやたらカッコいいBGMが鳴り響くCOOLなOPで、開始早々に心を掴まれる。短編は長編映画以上に最初の掴みが大事だと考えているが、その点本作はバッチリだ。主人公の女性のもとに男が訪れた後のくだりも、色々な意味で目が離せない。
特筆すべきは男の不気味すぎる行動の数々。やたら大仰で、よく言えばしなやか、悪く言えば物凄くクネクネした動きで主人公に迫る。顔も終始笑顔なのだが、笑顔すぎて顔面が引きつっている。ジェネリックのジョーカーだろうか。彼の姿を見ているだけでも十分楽しめるのだが、やたらアクロバティックなどんでん返しと驚きの着地を見せる展開も必見だ。
続いて2つ目の「ザ・ブラック・ベア」はかなりの曲者。数名の男女が森の奥をウォーキングしていたら、突如現れた熊に襲われる!
ストーリーだけ聞くとよくあるパニックかなと思うが、ガチャピンとかムックみたいなタイプの、中にガッツリ人が入った完全に着ぐるみの熊が現れるのでビックリする。登場人物たちは、それに対してマジの熊と遭遇したかのような反応を示す。しかも、熊の殺傷能力だけは何故かデフォルメ無しなので、こいつに襲われたら普通に腕は千切れるし、首もちょん切れる。ゴア描写も、手作り感はあるがかなり力が入っている。
結果、着ぐるみの熊にちょっと腕を掴まれただけで血しぶきと肉塊が飛び交う異常な映像が完成。襲われた側はあまり痛がる様子がないところも、狂気に拍車をかけている。
普通のパニック系を想定して臨むと、あまりにもシュールな作りなので面食らうが、ゆるふわ不条理系着ぐるみスラッシャーとして観れば、この空気が次第にクセになってくる……かもしれない。良くも悪くもインパクトの強い作品だ。アニマルホラーに対してこういうアプローチをする作品は初めて見た。
最後に紹介するのは「歯」という作品。これは一番お気に入りの作品だ。
フランスでは、ネズミは乳歯を回収して代わりにコインを渡す精霊であると伝えられる。父と息子の2人が眠る中、部屋を駆け回る小さな影がいた……、というお話。
導入パートでは、平穏な親子の姿が描かれる。子供部屋の壁には「コマンドー」「グレムリン」「エイリアン」などのポスターが貼ってあり、中々いい趣味をしているなと思いながら観ているうちに、やがて夜が訪れる。
親子が眠りにつくと、物語は一気に加速する。不気味なオルゴールの音とともに部屋を駆け回る小さな影。それは伝承通り歯の妖精のネズミだった。
しかしこのネズミ、妖精感ゼロの凄まじい凶暴性を持っており、相手を殺してでも歯を奪おうと一切の容赦なく親子を襲う。序盤の静かな雰囲気は何処へやら。後半は、壮絶な攻防へと発展していく。小さい身体なのに戦闘力は抜群で、凄まじい勢いで2人を追い詰める。これが思ったより遥かに怖い。
ファンタジーな設定だけどホラー要素が全面に出た作りで、ザックリ言えばギレルモ・デル・トロ監督が好きそうな感じ。静から動へ切り替わるタイミングなど、話運びがとても上手く、短い時間ながらも引き込まれてしまう。また、不気味なOP&ED映像からもセンスを感じる。この監督は今後頭角を現してきそうだ。
というわけで、3作品とも中々見応えのある作品だった。今回取り上げた作品以外にも、粒ぞろいのショートホラーが揃っている。ストレートに面白いものから、クセが強く人を選ぶものまで幅広いラインナップとなっているので、きっとお気に入りの作品が見つかることだろう。私の場合は「歯」がクリティカルヒットしました。マジで面白かったです。デル・トロ製作で長編化お願いします!
<OSOREZONEとは…>
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筆者紹介
人間食べ食べカエル(にんげんたべたべかえる)。人間食べ食べカエルです。X(旧Twitter)で人喰いツイッタラーをやっています。ID @TABECHAUYOで検索してみてください。WEBや誌面で不定期に寄稿をするほか、新作へのコメントなどを書いています。好きなジャンルはホラーとアクションで、特にモンスターに人が食べられるタイプの映画に目がありません。「ザ・グリード」に出てくる怪物を目指して日々精進しています。どうぞよろしくお願いします。
Twitter:@TABECHAUYO