コラム:映画食べ歩き日記 - 第2回
2019年12月17日更新
FFFTにフードディレクターとして参加する森枝幹シェフが出演し、寿司のルーツを辿る「寿司旅 起源から未来へ」からは、マグロの押し寿司を試食。酢を使わず、鮒寿司の米と普通の米を混ぜ、熟成した味わいのシャリが使用されている。さらに、ある女性が“愛の味”を探求する官能的な物語「愛の口づけ」は、フライドポテトや果物などがどこかエロティックに切り取られ、鑑賞後はイチゴ、トマト、ラディッシュが絶妙なハーモニーを奏でる「ジューシーサラダ」を味わう。薬師神陸シェフは「あなたはどんな味が好き?」というテーマでメニューを考え、食べ方によって味が変化するように設計したと語る。ここまで3本を終えて気付いたのは、一定の時間をおいて少しずつ食べるため、食欲アクセルが効果的に刺激されること。見れば見るほど、食べれば食べるほど、次の食事が待ちきれなくなるシステムだ。
続いて、115年続くピクルスメーカーの歴史と日々の仕事に迫った「ピクルス! NYソウルフードができるまで」では、ニューヨークから空輸したというピクルスを味わう。酸味が口の中いっぱいに広がり、これ以上にはならないだろうと思っていた空腹が全開に。そして、5本目にしていよいよ、主催者モッツ氏による「ヘルマンPRESENTSフライド・オニオン・バーガー」というハンバーガームービーを上映。オクラホマのクラシックバーガーは、薄くスライスしたオニオンがポイントだという。甘いオニオンと荒々しいパティにとろりとしたチーズがかかっている、たまらない一品だ。上映中は「映画を楽しみながら気軽に食べられるサイズ」ということで、一口サイズで提供される。しかし、やはりハンバーガーはフルサイズでかぶりつきたいもの。モッツ氏からは「上映後のアフターパーティでは、大きなサイズで提供するよ!」という期待をあおるアナウンスが入った。“おいしい映画鑑賞”のラストを飾るのは、和菓子作家・坂本紫穂氏が織りなす、日本の風土や季節によって移り変わる美しき和菓子の世界を映した「和菓子」。秋の落ち葉をイメージした、大豆を使った可愛らしいお菓子・吹き寄せで、フィニッシュを迎えた。
お楽しみのアフターパーティでは、映像に出演し、食事を作ったシェフたちのブースが登場。モッツ氏のフライド・オニオン・バーガーをはじめ、鮒寿司、タコのフリットとサツマイモのキッシュ、ブラウニー、黒糖の寒天、色鮮やかなフルーツデザートなど、ここでも盛りだくさんの食べ物が並んだ。オリジナルノンアルコールカクテルなど、ドリンクも充実。ゲストは見た目も美しい食事を味わったり、シェフとの会話を楽しんだり、思い思いの時間を過ごしていた。
食にまつわる社会問題を取り上げ、ゲストが環境について考えるきっかけを作り出すという目的を掲げた本イベント。食事の際に配られたおしぼりや、竹とサトウキビの繊維でできた紙の器は、全て土に還る素材で作られている。水産資源、陸上資源の未来と環境問題に深く関わる「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成に寄与することを目指し、収益の一部は食の問題解決に取り組む非営利団体に寄付されるという。
「The Food Film Festival Tokyo 2020」は、20年4月17~19日に東京・品川のB&C HALLで開催。17日は過去にニューヨークで上映された映像と食事を通して、FFFの雰囲気を再現する「Best of FFF NEWYORK」、18日は日本の海産資源の重要性を見つめ直す「The Night Aquatic(seafood)」、19日はモッツ氏がアメリカンバーガーを振る舞う「George Motz バーガーフェス」が行われるなど、それぞれ異なるテーマが設定されている。上映作品やメニューは内覧会とは異なるものとなり、上映プログラムなどの詳細の発表と合わせ、チケットは1月中旬頃に発売が開始される予定。詳細は、公式サイト(http://ffftokyo.jp/)で確認できる。
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