コラム:シネマ映画.comコラム - 第34回

2024年6月14日更新

シネマ映画.comコラム

PARALLEL パラレル」東京と大阪での凱旋上映&特集レポート

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田中大貴監督の長編デビュー作「PARALLEL パラレル」が一斉配信に先駆け、オソレゾーンセレクト作品として、シネマ映画.comで先行独占で好評配信中です。

PARALLEL パラレル」は、田中監督が製作・脚本・撮影・照明・編集・特殊造形・VFXを兼任し、“傷を抱えた少女”と“アニメの世界に行きたい殺人鬼”の恋愛模様を描いて賛否両論を巻き起こした異色のスプラッター×ラブストーリー。主演は楢葉ももな芳村宗治郎。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021でグランプリ、第15回田辺・弁慶映画祭で映画.com賞を受賞しています。

田中監督は独学でアニメも作り上げ、劇中オリジナルアニメ「人造魔法少女カイニ」の新作短編アニメを追加製作。昨年7月のテアトル新宿で本編終了後に公開して好評を博しました。「GANTZ」の作者である漫画家・奥浩哉氏から応援イラストが寄せられるなど、インディーズ映画としては国内外で異例の熱狂的な盛り上がりをみせています。

声優には「ハチミツとクローバー」花本はぐみ役や「BanG Dream!」の氷川紗夜役など、声優を中心に様々な分野でマルチに活動する工藤晴香、新たに登場する物語の鍵を握る少女の役には、人気YouTuberのゆん、カイニの相棒であるシンジ役にはボーイズグループOWVのリーダーであり、今回声優初挑戦の本田康祐などバラエティーに富んだキャスティングもあり、テアトル新宿の予約が1日で満席となりました。

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PARALLEL パラレル」(2021年製作/84分/R15+/日本)

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<あらすじ>

幼い頃に両親から虐待されていた舞は、自身のつらい過去と折り合いをつけることができず、親友・佳奈とただ時間を忘れて遊ぶだけの毎日を送っていた。そんなある日、舞は美少女アニメキャラクターのコスプレ姿で殺人を繰り返している殺人鬼に遭遇する。舞に興味を抱いた殺人鬼は、正体を隠して彼女に接近。舞は自身の心の傷を、殺人鬼は自分の本当の姿を隠しながらも、2人は強くひかれあっていくが……。


テアトル新宿での単独公開から大阪、京都、名古屋などでの上映が続き、好評を受けて今年4月に東京、5月に大阪で凱旋上映。3年間連続での劇場公開というインディーズ映画としては異例のロングランとなり、東京と大阪での凱旋上映と特集上映のレポートが田中監督から届きましたので、本コラムに掲載します。

■3年間連続劇場公開というインディーズ映画として異例ロングラン

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田中監督 2022年、2023年の東京上映はテアトル新宿、大阪上映はシネ・リーブル梅田での上映でしたが、今回は劇場が変わり、東京での凱旋上映はシモキタ-エキマエ-シネマ「K2」、大阪はシアターセブンでの上映となりました。この2年間の全国各地での上映や海外での評判からか、東京の凱旋上映は満席続出の上映となり、上映期間が延長するなど3年目の上映も大きな盛り上がりとなりました。大阪の凱旋上映ではシアターセブンで「田中大貴監督特集」として過去作品をまとめて上映するプログラム「PARALLEL」の一つ前の時間帯で開催。特集上映と最新作の「PARALLEL」を同じ劇場でハシゴ鑑賞できたことで、より上映を楽しめたという声が続出し、大阪でも連日大盛況を記録しました。


■脚本執筆段階から沖縄在住の中江裕司監督らがサポート

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田中監督 東京と大阪で連日行われた舞台挨拶には、出演キャストはもちろん、本作の脚本執筆段階から作品をサポートしていただいた、沖縄在住の中江裕司監督(「土を喰らう十二ヵ月」)を始め、2022年の最初の東京上映でもゲストで登壇した高橋ヨシキさんとジャガモンド斉藤さん、名古屋上映の舞台挨拶の時から「東京で上映する際は駆けつけます!」と作品を応援していただいているアイドルグループTEAM SHACHIの大黒柚姫さんと秋本帆華さんなど多くのゲストも駆けつけ、作品の裏側やそれぞれが魅了されたポイントなど上映後のトークまで大盛り上がりとなりました。大阪の舞台挨拶では、現地に駆けつけることができなかったキャストはオンラインで舞台挨拶に参加し、大阪の観客にも撮影時のエピソードや感謝の気持ちを届けました。私がリモートで登壇した際は映画で使用した小道具などを紹介する一幕もありました。


■神戸と沖縄で拡大公開、即興で動画を撮影するイベントも開催

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田中監督 そして東京と大阪の凱旋上映を観に来た映画館の関係者がその盛り上がりを見たことで、神戸と沖縄での拡大公開のお話をいただき、7月13日から神戸の元町映画館にて1週間、7月27日から沖縄の桜坂劇場にて1週間の拡大公開が決定しました。大阪上映では急遽、大阪で活動する役者を募集し、舞台挨拶までの空き時間を使って私と舞台挨拶のために大阪に滞在していたキャストと共に即興で動画を撮影するイベントも開催。募集開始と共にすぐに定員オーバーとなるなど、王座英の役者が参加し、撮影が行われました。完成した動画は近日発表予定です。7月13日からの神戸・元町映画館での上映でも動画を撮影するイベントを開催予定となっています。


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田中監督 3年目の上映となると既に鑑賞済みの観客が多く、3回目、4回目の鑑賞という観客の方も多かったのが印象的でした。そして複数回鑑賞する方が皆さん口にするのが、「3回目、4回目の方が面白かった」という感想。これは脚本段階で緻密に構築された世界観や、1回目の鑑賞だけでは気がつけなかった人間関係や演出、設定などを紐解く楽しみや作品の解釈を深める楽しさが味わえる本作の魅力の一つでしょう。そして、全国各地の劇場で驚かれるのがその客層の広さです。一般的なイメージとしてレイトショーのホラー映画の上映となると男性の一人客が多い印象ですが、本作の客層には女性もとても多く、そして年齢も様々です。


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田中監督 SNSや映画レビューサイトには熱烈な感想の書き込みも多く、「余韻が忘れられない」「最後に泣いてしまった」など、アニメキャラクターにコスプレをした姿で殺人を繰り返す殺人鬼が登場する映画の感想とは思えない感想が並び、まさに口コミで広がり続ける異色のホラー映画となっています。これから神戸と沖縄での拡大公開や一斉配信も始まり、さらにどれだけ広がっていくのか、これからも「PARALLEL」という作品をぜひ注目していただきたいです。


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■自主製作映画の配信営業を松竹が手掛けることに!

映画.com 4月25日から先に韓国で配信がスタートしましたが、配信営業を松竹が手掛けることになった経緯について教えてください。


田中監督 自主配給で宣伝などを頑張ってきましたが、配信に関してはわからないことだらけで、自分たちで配信の営業や交渉などやっていけるのだろうか、、と不安でした。ですが上映を続ける中で、本作を見に来ていただいた配信の事業をされている会社の方々、数名からお声がけをいただくことができました。まさか松竹さんを含め他の会社さんも自主製作映画を配信してくれるはずがないと思っていたのですが、皆さん作品のことはもちろん、僕の今後のことなども考えて様々なお話をしてくださり、本当にありがたかったです。お声がけいただいた会社の方々とたくさんお話しさせていただき、今回は松竹さんに配信の営業をお願いさせていただくことになりました。インディーズ映画が松竹さんと一緒に何かできるなんて、本当に奇跡みたいだなと思っています。


韓国版ビジュアル
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■映画の興行がいかに大変であるか、あらためて痛感

映画.com これまでの興行で製作費は回収できたのでしょうか。


田中監督 今回配給や宣伝も個人でやってきたのですが、映画の興行がいかに大変であるか、あらためて痛感させられました。本作は自主制作映画なので制作費もかなり低予算なのですが、それでも毎回上映にかかる経費なども考えると現在の回収率は7割程度なので、7月の神戸と沖縄の上映でも盛況を記録し、制作費を回収できたら僕個人の生活費的にとても助かります。


■挑戦したいオリジナルの企画がいくつかある

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映画.com 次回作の構想について教えてください。。


田中監督 次回作に関しては、まだ内容は言えないのですが、挑戦したいオリジナルの企画がいくつかあり、それを実現させたいと考えています。ありがたいことに劇場で作品をご覧いただいた、いくつかの配給会社の方とこれからお会いさせていただく予定となっていますので、ご縁が繋がり自主制作の予算規模ではできなかった映画を完成させられるように頑張りたいです。ですが、予算が大きな作品になればなるほど、撮影に入るまでにたくさんの準備期間が必要になってしまうため、その期間には自主制作などでも短編や中編の映画を制作したいと考えています。6月15日・19日には東京で、6月24日には大阪で演技のワークショップも開催させていただくなど、役者さんやスタッフさんとの新たな出会いや作品制作の機会もどんどん増やしていきたいと思っています。


ワークショップへの応募はこちら:https://cinepu.com/education/cbjZa2Ntyp_/

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