コラム:若林ゆり 舞台.com - 第59回

2017年9月8日更新

若林ゆり 舞台.com

第59回:ポップ&摩訶不思議な「オーランドー」の多部未華子は性別も時代も軽々と超える!

多部は1つのイメージにとらわれることなく、これまで幅広い役柄を経験してきている。たとえば、デビュー間もないころの「HINOKIO ヒノキオ」で演じたのは、「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」のサガを思わせる、少年っぽいガキ大将少女、ジュン。ドラマ「大奥」では、女でありながら将軍として生きなければならない家光。普段の多部はものすごくフェミニンな雰囲気をまとっているが、いわば両性具有的なキャラクターでも魅力を発揮している。

「完全な男性というのは初めてなんですが、男性のときのオーランドーと女性のオーランドーでどうメリハリをつけるか。そこも難しいところですね。女性に変わってからのセリフでも、『これって男性のときの感情だよね?』というものもある。だから、本当にいかようにもなるというか。『オーランドーはあのときこうだった』というのは女性としても言えるし、男性だった昔のことでも言えるし。悩みどころです」

撮影:若林ゆり ヘアメイク:倉田明美 スタイリング:岡村春樹
撮影:若林ゆり ヘアメイク:倉田明美 スタイリング:岡村春樹

また、舞台女優としての多部は、野田秀樹脚本・松尾スズキ演出の「農業少女」、宮本亜門演出の「サロメ」、松尾スズキ脚本・演出の「ふくすけ」「キレイ~神様と待ち合わせした女~」、蜷川幸雄演出の「わたしを離さないで」、長塚圭史脚本・演出の「ツインズ」など、難解なテーマや読み解くべき何かがデンとあるような作品に挑んできた。そして、その難解さを軽々と飛び超え、圧倒的な説得力を発揮するのが多部という印象だ。

「基本的に、いつも話の内容があんまりよくわかっていないんです。だから今回は、いままでの中では断トツに『わかってるな、私』って思います(笑)。ひとつひとつのセリフの意味はまだ理解していないことの方が多いのですが、話の流れはわかっています。いつもだと千秋楽のちょっと前ぐらいに『あ、こういう話だったのか』と思うので、今回は早いんですよ!」

では、多部にとって映像と違う舞台の魅力は?

「舞台ではけっこう突飛な役をやることが多くて。映像には求められない役柄があるので、それはやはり楽しいです。それに、開演してから2時間くらいを全力でがんばらなければいけないので、短距離走みたい。自分でどこまでできるか、というのもありますし、本番前に1カ月、みんなで稽古してきてのチームプレイを味わうのが楽しいです。だからお客さんに感動を与えたいとか、お客さんを前にしてナマでお芝居ができるということももちろんですが、チームプレイのほうにも楽しさを見いだしてしまいます。今回も共演者が楽しい方ばかりなので、和気藹々とストレスなく稽古に励んでいるんですよ。白井さんの稽古時間は覚悟していた以上に長いんですけど(笑)」

画像2

オーランドーは男性から女性になることで、女性としての利点や不利を意識せざるを得ないが、多部自身は女性であることに対してどう思っている?

「私は、生まれ変わっても女性がいいです(キッパリ)。男性だと家族を養わなくちゃいけないのでたいへんそうですね。女のほうがいい意味で計算高いじゃないですか (笑)」

舞台女優としてとみに脂が乗ってきたと思わせる多部にとって、変幻自在なオーランドーという難役が、さらなる飛躍のきっかけになりそうだ。

「セリフの意味などは本当に難しいところですが、それをいかにわかりやすく伝えるかというのは白井さんも小日向さんもすごく考えていらっしゃいます。それに対して私も『ああ、じゃあこうしてみよう』という風に応えたいと思っています。オーランドーとコーラスの関係にしても、オーランドーをコーラスが操っているというか、誘導しているようなところがあるんですね。オーランドーという人間は葛藤して苦悩しているのですが、でも実は周りが細かく動いて誘導している、みたいなことをどう面白く見せられるか。難しく考えれば難しいけど、見た目としては難しくない。それを目指しているので、きっと楽しんでいただけるのではないかと思っています」

「オーランドー」は9月23日~10月9日、KAAT神奈川芸術劇場、10月26~29日、新国立劇場 中劇場で上演される(松本、兵庫公演あり)。詳しい情報は公式サイトへ。
 http://www.kaat.jp/d/orlando_kaat

筆者紹介

若林ゆりのコラム

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。

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