ラヴソング

劇場公開日:

解説

偶然に出会ったふたりの男女がそれぞれの夢を叶えるために別々の道を行き、再び出会うまでの10年間を、香港とニューヨークの雑踏の中に描き出すラヴ・ストーリー。監督・製作は「君さえいれば 金枝玉葉」のピーター・チャン。撮影は「レッド・ブロンクス」のジングル・マー。音楽は「君さえいれば 金枝玉葉」のチウ・ツァンヘイ。出演は「イルマ・ヴェップ」のマギー・チャン、「天使の涙」のレオン・ライ、「君さえいれば」のエリック・ツァン、「ブエノスアイレス」など香港の名キャメラマンとして鳴らすクリトファー・ドイルほか。97年香港金像奨グランプリほか、監督・脚本・主演女優(マギー・チャン)・助演男優(エリック・ツァン)・撮影(ジングル・マー)・美術指導(イー・チュンマン)・衣裳デザイン・映画音楽賞(チウ・ツァンヘイ)と、各賞を独占。

1996年製作/118分/香港
原題または英題:甜蜜蜜/Comrades, Almost a Love Story
配給:BMGジャパン=ビターズ・エンド
劇場公開日:1998年2月7日

あらすじ

86年春。天津から電車で香港にやってきたシウクワン(レオン・ライ)の夢は、金を貯め、残してきた恋人のシャオティン(クリスティ・ヤン)を呼び寄せて結婚することだ。広東語すら理解できなかったシウクワンだが、叔母の家に世話になりながら働くうち、次第に香港の生活にも慣れてきた。ある日、生まれて初めてマクドナルドに行ったシウクワンはアルバイトのレイキウ(マギー・チャン)と出会い、必ず仕事のプラスになると英会話学校を紹介される。彼女は故郷の母に家を建ててやるためさまざまなアルバイトをしていて、そこでも紹介料を稼いでいたのだ。年末、苦労して貯めたお金でレイキウはシウクワンと共にテレサ・テンのカセットを売る露店を構える。しかし大陸出身だと知られたくないため誰もカセットを買わない。香港人を気取る彼女も実は広州出身で、テレサ・テンという絆を見いだしたふたりはその晩はじめて夜を共にする。ホテルの同じ一室で会い続けるうち、故郷の恋人との間でシウクワンの心は揺れる。翌年秋、株が暴落してレイキウは貯金のほとんどを失い、実入りのいいマッサージ嬢の仕事を始めた。慣れない仕事に疲れている中、故郷の恋人へのブレスレットと同じものをプレゼントするシウクワンの無神経さに傷つき、レイキウは彼のもとを去る。……90年冬。店の福料理長になったシウクワンは、シャオティンと香港で結婚式を挙げた。披露宴の席で久しぶりに再会したレイキウは、マッサージの客だったヤクザのボス、パウ(エリック・ツァン)の愛人となり企業グループの社長となっていた。彼女は望み通り金持ちになって故郷に家を建てたが、その完成を待たずに母は亡くなってしまったという。ある日、ふたりが乗る車からテレサ・テンの姿が見え、シウクワンは上着の背中にサインしてもらう。彼が去ってゆく背中を見つめるうち、レイキウは抑えていた思いを再燃させ、ふたりは以前幾度も抱き合ったホテルの部屋で再び愛を交わす。シウクワンは妻に打ち明けると言い、レイキウもまたパウに別れを告げようとする。だが事件に巻き込まれて船で香港を脱出しようとしているパウを見捨てることができず、レイキウはシウクワンを波止場に残したまま、パウと共に香港を離れる。シウクワンは妻に別れを告げ、単身ニューヨークへ向かった。93年、ニューヨークにたどりつき、ようやく落ちつこうとしていたパウとレイキウだったが、パウは路上での些細ないざこざから殺されてしまう。不法滞在で強制送還される途上で、レイキウはシウクワンの姿を見つけ、護送車を飛び降りるが、ついに見失ってしまう。95年5月8日、広州へ帰国する直前のレイキウは、テレサ・テンの急死をニュースで知る。テレサの古い映像を流すテレビ画面を、街頭のショー・ウィンドー越しに見つめるレイキウ。隣にもやはり画面を見つめる人がいた。シウクワンとレイキウは、最初に出会ってから10年後、ニューヨークの街で再び出会った。……画面は再び冒頭の86年に戻る。香港に着き、あわてて電車から飛び降りるシウクワン。背中合わせの後ろの席にいたのは、レイキウだった。ふたりは背中合わせから反対方向に歩き続け、10年を経てようやく向かい合うことができたのだった。

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映画レビュー

3.0レイキウとシウクワンとの、その二人にまた独特の関係性

2025年4月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

そもそも、シウクワンとレイキウの二人が香港へ来た理由からして、「シャオティンとの結婚資金を稼ぐため」のシウクワンと、「借金返済の原資を稼ぐため」のレイキウとでは、ハナから「稼ぐこと」「儲けること」に対する温度には、大きな落差、温度差があったということだったのでしょう。

英会話学校のパートタイムをしながらマックでもバイト。テレサ・テンのレコードやカセットテープを売ってみても、思うように売れなければ、今度は「マッサージ嬢」に鞍替え。

レイキウは、その職業を世間に公言することを憚(はばか)っていいるようですし、「サービスしだいでは(まるまる副収入になる)チップも増える」という仕事ということですから、マッサージとはいうものの、「それなりの内容のお仕事」だったのだと思われます。

「贈り物の一件」からすると、シウクワンに対するレイキウの間にも、知り合った当初から、恋愛感情のような思慕が皆無だったとも言い切れなかったことは、確かなようですけれども。

しかし、その後、シウクワンは、婚約どおりにシャオティンと結婚。
後には、料理人としての地歩を固めていたー。

一方のレイキウは、女性企業家として成功とはいうものの、しかし、その後、シウクワンとの再会を果たしたニューヨークでは(中国人観光客相手の?)観光ガイドを生業(なりわい)としていた。

再会の折りには、シウクワン・レイキウの二人は、すっかり別の人生を歩んでしまっていたのですけれども。

しかし、辛く不遇な(?)香港時代を経験した二人には、単なる恋愛関係や、ましてや「大人としての女と男との関係」などは遥かに超越した、独特の思慕が交錯していたのだろうと、評論子は思いました。

その点で、充分な佳作だったと、評論子は思います。
別作品『パストライブス…』とは、また違った地平にある作品として。

<映画のことば>
元々、私たちの住む世界は違うわ。
自分が何をしているのか分からない。
安心できるところもないわ。
母に電話で「大金を稼げる」と言ったの。
でも、私は無一文で、あるのは借金の山。
明日、自分の身に何が起きるか分からない。
とても怖いわ。

(追記)
レイキウが女性企業家として成功した陰には、おそらく、マッサージ店の常連客で、当時はすっかり(情婦として?)「大人の女と男との関係」になっていた極道のパウの資金があったたろうことも、想像に難(かた)くないところです。

しかし、シウクワンのと再会の前には、前記のとおり観光ガイドとして稼働していたということは、パウの亡き後は(=パウを後ろ楯とする資金が途絶えてからは)、彼女の企業も、一気に傾いてしまったということなのでしょう。
英会話学校のパートタイムとマックでのバイトのかけもちから身を起こし、シウクワンとの再会を果たすまでのレイキウは、起伏の少なくない、波乱の道を歩いてきていたのでしょう。

それだけに、シウクワンのと再会は、彼女にとっとも、ひとしおの感慨があったのだとも思います。

上記の佳作の評価には、その点も加味していることを、付け加えておきたいと思います。

(追記)
カセットテープとレコード全盛の時代。
レンタル店の商品は、DVDではなく、VHSのビデオテープ。

本作の設定から、自分が生きてきた時間の長さを実感として感じとったのは、評論子と同じ世代のレビューなら誰もが抱く感慨として、独り評論子だけのものではなかったことと思います。

(追記)
本作は、卒爾(そつじ)ながらレビュアーのお名前を失念してしまったのですけれども…。
どなただったか、別作品『パストライブス 再会』に寄せられたレビュアーさんのレビューに食指を動かされて鑑賞したものでした。

別作品『パストライブス…』は、20年余を経た、かつての男の子と女の子との淡い恋愛感情の切なさを見事に活写した一本でしたし、本作は、上記のとおり「必ずしも恋愛感情には留まらない、この大人同士の二人の間に独特な思慕」の美しさを描ききった作品として、また別作品『パストライブス…』とは違った男女の関係性を浮き彫りにしていたのではないかと、評論子は思いました。

いずれにしても、本作は、当サイトのレビューを読んでいなければ観なかった一本。

自分で佳作を引き当てるのも、むろん映画の楽しみ方なのですけれども。

他方では、こうして、教えてもらって佳作に巡り合うというのも、また映画ファンとしての楽しみ…幸せのひとつなのではないかとも、思います。

ハンドルネームを失念してしまった「名無しの権兵衛」のレビュアーさんにこのレビューを捧げて、気持ちばかりのお礼に代えたいと思います。

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talkie

4.0ロマンチック

2024年1月28日
iPhoneアプリから投稿

中国語の勉強のために鑑賞。(ほとんど広東語だったから、字幕をガン見)

80年代後半から90年代の雰囲気が味わえる。
物語自体は、前にもあったような、オチも見えているんだけど、そのオチを観るために最後まで見入ってしまう。
この作品には、そうさせる演出に魅力があると思う。結局泣けたし。

冒頭で明らかな伏線があったのに、すっかり忘れていて、最後に回収された時、
「あ〜!それがあったんだったー!」と悔しかった。笑

割と王道なストーリーなのに、令和に観ると特に、よりロマンチックに感じる。
携帯もない時代、やっとキャッシュカードが普及してきた時代で、出会い、別れ、再会。
今なら簡単でも、昔はありえなかったことが、物語を豊かにしていく。
そんな恋人たちの姿を残せる映画って、やっぱりいいなと改めて感じた。

個人的に好きだったのは、マフィアのボスが、ミッキーマウスの刺青を入れてたところ。

極端に悪い人が出てこなかったのも、私は好きだった。

愛は強し。

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Miwako

4.5香港の香り

2023年8月19日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

幸せ

マギーチャンという俳優を知って世代じゃないけど映画館で鑑賞。
フィルムの色合いは新鮮でテレサテンの歌も味わい深い。
令和に生きていると忘れている、昭和の発展途上の空気のエネルギッシュさが非日常に連れて行ってくれる。
王道のエンタメ的なラストシーンも良かった。

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つむり