劇場公開日 2023年12月15日

ポトフ 美食家と料理人のレビュー・感想・評価

全78件中、1~20件目を表示

4.0目と心を満たす、滴るような味わいを宿した秀作

2023年12月26日
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『青いパパイヤの香り』『夏至』で人々を魅了したトラン・アン・ユン監督が、あれから20年以上経って、かつての滴るような味わいを宿しつつ、さらなる次元へ進化を遂げている。時代は19世紀。ここには料理に情熱を注ぐ男女の弛むことのない究道があり、美食家たちの文化や様式に関する興味深い描写の数々、そして決して止まることなく巡りゆく季節と生命がある。時間を割いて織りなされる調理シーンは、まさに言葉を超えた吐息と滴る汗と所作の連続。香りや味わいと相まって男女の間でほのかに交わされる感情すらも繊細に沁み入ってくるのがとても感慨深い。依存し合うわけでも、甘い言葉を囁き合うわけでもなく、ただひたすら至高の一皿を求め続ける。その真剣な眼差し、信頼しきった表情、その果てにたどり着く感情が美しい。食して終わりではなく、永遠にも等しい理想を生涯かけて求め合うかのような、二人にしか表現し得ない愛がそこには刻まれていた。

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牛津厚信

4.0料理が紡ぐ人間関係が行き着くところは

2023年12月21日
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楽しい

知的

代表的なイメージショットは、今年9月に公開された同じフランス発のグルメ映画『デリシュ!』と同じなのだが、描くテーマはほぼ正反対。『デリシュ!』は宮廷を退いたシェフが謎めいた女性料理人の助けを借りて、それまで貴族のためにのみ存在したフランス料理を民衆に解放する物語。その過程でシェフと料理人の間には愛が芽生えていく、という展開だったが、本作『ポトフ』は同じフランスの定番料理の名前をタイトルにはしているが、主人公の美食家と、彼の希望を具現化していく料理人は、もっとクールで、だからこそ強い絆で結ばれている。見ていてそこにぶっ飛んだ。食を介して人間関係を描くと、どうしても情緒に傾きがちだが、トラン・アン・ユンの演出は最終的にその種の傾向とは無縁なのだ。

しかし、次々と登場するフランス料理の完成度は『デリシュ!』以上。東京でもフレンチレストランを経営する三つ星シェフ、ピエール・ガニェールが監修した舌平目のクリームソース、子牛のポワレ、アイスクリームが中に入ったノルウェー風オムレツは、映画の後味はどうであれ、視覚から食するに値するもの。このシーズンに打って付けの作品だ。

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清藤秀人

4.0繊細で深みのある愛情表現は元パートナー同士ゆえか。調理を流麗にとらえる映像に引き込まれる

2023年12月18日
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鑑賞方法:試写会

幸せ

萌える

優れたダンス/ミュージカル映画が冒頭に素晴らしいパフォーマンスのシークエンスを配して観客の心をがっちりつかむのと同じように、「ポトフ 美食家と料理人」も始まって早々、美食家ドダン(ブノワ・マジメル)と料理人ウージェニー(ジュリエット・ビノシュ)がアシスタントのヴィオレットを指示しつつ手際よく食材をさばいて加熱し仕上げていく過程を、流れるようなカメラワークで躍動感いっぱいに撮影している。トラン・アン・ユン監督の演出意図を体現した俳優たちの演技と、彼らの表情、手や調理器具の動き、そして調理が進むにつれ音を発しながら色と形を変えていく食材を優雅に踊るようにカメラのフレームに収めた、撮影監督ジョナタン・リッケブールの貢献も大きい。

マジメルとビノシュは1999年に『年下のひと』で共演した縁でパートナーになり女児をもうけたが、2003年に別れている。彼らが演じるドダンとウージェニーも公私にわたるパートナーでありながら長年結婚しないままだったという設定であり、互いを想う繊細な感情の表現はそうした私生活の過去の経験がプラスに働いた印象を受ける。

ズアオホオジロのローストを食べる時に皿の真上に寄せた頭の上からナプキンをすっぽりかぶるという、変てこでユーモラスなマナーも描かれている(美食家でない評者は今回初めて知った)。ネットで理由を調べたら、香りを保つため、恥ずべき行為を神の目から隠すため、骨を吐き出す姿を他人に見られないようにするためなど、諸説あるらしい。

絶対味覚を持つ少女ポーリーヌを演じたボニー・シャニョー=ラヴォワールの無垢な魅力もいい。作中では料理の職人技の継承を担う役どころだが、フランスを代表する大女優ビノシュから未来のスターへバトンが渡されたような気にさえなる。本作が映画初出演のようで、今後の成長と活躍が楽しみだ。

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高森 郁哉

4.0料理という芸術、たゆたう様な心地よい映画

2024年5月4日
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鑑賞方法:映画館

料理は芸術だというが料理という芸術が映画という芸術と見事に相乗効果をなしている。
食に少しでも興味のある人はあのめくるめく調理シーンに惹き込まれて時間を忘れるのではないだろうか…
この映画は大きく3つの料理シーンで成り立っている。「料理人」ウージェニーが圧巻の腕を振るう冒頭40分あまりの友人との夕食シーン、逆に「美食家」ドダンがウージェニーを饗するシーン、そして「その後」ドダンがもがき苦しみ再生する調理シーン。そのいずれもが息を呑む。
特に最後の再生のシーンは厳密に計算された無駄と冗長を極限まで省いた感嘆すべき演出。
どん底に喘ぎ料理に関するあらゆる関与を拒否していたドダンが次のシーンでは何の「説明」もなく少女ポーリーヌとチームプレイで料理人のオーディションを行っているというあの見事な省略には心を揺さぶられうならされる。
逆光を意識した照明は終始素晴らしいが、最後ポーリーヌとドダンの「再生の料理」シーンでは明かりが時を追うごとに生気を帯びてくる!
効果音も素晴らしい。
とにかく非常に繊細でドラマティックな映画。
『青いパパイヤの香り』のあのたゆたう様な心地よいテンポを思い出した。

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百万両

4.0女装映画鑑賞第5回 貧乏がアカンねんで…貧乏が…

2024年4月8日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

女装映画鑑賞も、もう5回目になりました。
「もう止める!」とか言ってませんでしたっけ?知らんがなそんなもん。スカート穿いて映画観るの楽しぇもん。
そんな準備をするため、しばらく.com様をお休みしていました。
「いつもこんな恰好で観に来て申し訳ありません」とのテンプレ謝罪対して「いえいえ、楽しんでいってくださいね」と、とても優しいアンサーをいただきまして。
そのお言葉に、大福餅をハチミツで三日三晩煮締めたほど、甘えに甘えて観てきましたよ。あまり困らせたらアカンぞ。
以前にこちらも女装で観てきた『秘密の森の、その向こう』と同じく、インテリ向きのおフランスの映画なので、さっぱり楽しめないかも…と危惧していましたが、そんなことはありませんでした。
相も変わらず起・承・転・結がわかりにくかったのですが。
それでも2時間ちょいを、十分に楽しませていただきました。

物語が始まって早々に参ってしまったんですよね。SEが思いっきりいい仕事していると感じたの。
農園の野菜を根元から刈る「ザクっ…サクっ…」という音だとか、汲み上げる井戸水の「ザバザバ…ビチャビチャ」の音だとか、スゲー臨場感あったの。
鍋を火にかけ、「コトコト」と煮込む音やら、肉を焼く「ジュワー!」って音とかも。
見てると、お腹空いてきたの。
その逆に、咀嚼音の一切はカットされてたのね。このあたり、おフランスのマナーを徹底させていたのね。
刃牙でのジャック・ハンマーがステーキ食べる時の「ガプ…ギュイーン…ナポ…」みたいな音は出ないのよね。
???ってなって強烈に印象に残ったーシーンがあるんですよ。
ウズラ?か何かの小鳥の丸ごと煮込みみたいな料理を食べる時、頭からナプキン被ってた例のあのシーン。
あれ、何ぞや?と思って調べてみたです。どうやら「オルトラン」という料理らしくて。
食べる時に香りを逃がさないようにするためだとか、神聖な食事を行う際の敬意を表すためだとか、この料理は一部で非難されているから、その行為を隠す意味合いもあるだとか。←禁じ手かよ!
などの理由で、ナプキンで頭を覆うらしいですね。ただ単に咀嚼音をシャットアウトするためかと思ってました。
フランス料理のマナーって小うるさい!中華みたいにドババーっと盛って、ガガガガガ―っと一気に食すスタイルの方が好きなの。ごめんなさい、また本筋から外れちゃったですよね。

そのお話なんですが、料理人のウージェニーが病で逝っちゃたじゃないですか。てっきり主人公だと思い込んでたのに。
「こんなんでお話どう続くねん!」と思っていたら、美食家のドダンが主人公だったのですね。タイトルからして、こちらもてっきり海原雄山みたいなわがままオヤジなんかなーって思っていたら、わりと優しい人っぽくて安心しました。新しい料理人の選抜試験では、結構辛辣でしたけれど。
その場所に同席していた女の子がウージェニーの後を継ぐのかな?と思ったら、投げっぱなし。
そして、最も肝心のポトフの件も投げっぱなしですやん。そこまで描くんかなーと、勝手に思い込んでたんですよ。
思い込み激しいぞ自分。
そして、料理人の腕前がどうとか、グルメがどうとかじゃなくて、この物語って、純粋なラブストーリーだったことに最後の最後に気づかされたの。

ラストシーンでウージェニーの「私はあなたの妻だったの?それとも料理人?」みたいな問いかけにドダンは、きっぱりと「料理人だ」と答えたじゃないですか。病床の妻を前に、どんだけ雄山やねん!と思っちゃったんですよ。そこがどうにも引っかかって。
鑑賞後にあれこれと考えてみたです。ドダンにとってのウージェニーは、最も大切な舌を満足させてくれた人だったと思って。なのでウージェニーこそ自らが全幅の信頼を寄せていた人だったと思って。
そんな期待の全てに応えてくれた彼女こそ、彼の人生を一番彩どってくれた人だと思って。
「愛する妻だ」と言っちゃうのは、とても簡単で、当然のことで。そこをあえて「調理人だ」と万感の思いを込めて、言い切ったんだと思って。
何言ってんだか自分でもよくわからないんですが。

でもね…フランス料理って、やっぱり苦手なの。
美味しそうではあるんだけれど、余白の方が多いお皿をちまちまと小出しにされたり「なんでそんなややこしいねん!」っていうカラトリーの使い方に「しゃらくせぇ!」って思っちゃうの。外側から順に使うって基本中の基本しか知らないの。
やっぱり中華みたいにドババーっと盛って、ガガガガガ―っと一気に食すスタイルの方が好きなの。
和食みたいに箸一膳で完結される料理の方が好きなの。
貧乏がアカンねんで…貧乏が…
牛丼の食べ比べ程度しかできん財布の事情がアカンねんで。
ちなみに牛丼は、さっぱり味の松屋推しです。お味噌汁付いてるし。
そして、評価の印象に“美味しい”って項目がないのが惜しいです。

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野球十兵衛、

3.5食を芸術まで高めた美食家と天才料理人

2024年3月5日
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悲しい

知的

幸せ

19世紀末のフランスの田舎で、食を追求した美食家ドダンと、彼のメニューを再現する天才料理人ウージェニーの評判はヨーロッパ中に広まっていた。ある日、ユーラシア皇太子から晩餐会に招かれたドダンは、ただ豪華で品数の多いだけで統一性のない退屈な料理にうんざりして帰ってきた。お返しとして、最もシンプルな料理・ポトフで皇太子をもてなすことを決めたドダンだったが、そんな矢先、ウージェニーが倒れてしまった。ドダンはすべて自分で料理を作り、愛するウージェニーを元気づけようとしたが・・・さてどうなる、という話。

スタートからしばらく、料理を作って出すだけのシーンが続き、そんな単調な作品かと思ってたら、なかなか奥深かった。
ウージェニーとドダンの関係がなかなかわからなかったが、籍を入れてない夫婦みたいなのかな、って思ってたら、当たらずとも遠からず、だった。お互いを大切に思い、深く愛し合ってたのがよくわかった。
しかし、なんの病気だったのかな?心筋梗塞みたいな急に息を引き取るような病気だったのだろうけど。
素晴らしい感性と味覚を持ってた少女・ポーリーヌだが、やはりまだ若すぎて苦味の奥深さやワインの良さまで教えるのは幼すぎて難しいよね、って思った。あと10年くらい経てばウージェニーの後継者になれるかも、なんて観てた。
住み込みで使えていたヴィオレットは食の才能がなかったようで気の毒だった。

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りあの

4.0まるで印象派の絵画のような美しさ

2024年2月25日
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途中の森の中での会食場面など、まるで印象派の画家たちがモチーフにしてきたような世界だなぁと思って観ていたら、どうやら、描かれている年代が19世紀後半ということで、そりゃそうかだった。

「料理界のナポレオン」と呼ばれる美食家のドダンと、そのドダンの考えたレシピを20年以上に渡って実現し、時にはそれを超えた料理を創り出してきたウージェニー。その2人の物語なので、映画の大半が調理場面や食事場面なのだが、どの場面をとっても、文句のつけようがないほど美しい。そして、何よりどの料理も美味しそう。

最初、「美食家」と「料理人」との関係が、今一つつかめなかった。もっと言うと、観終わってからやっとわかった(ドダンは海原雄山なのか!)くらいなので、互いに求めあっていながら20年も結婚しなかった理由がよく分からなかった。けれど、その関係がつかめると、そこにあった彼女自身の揺るぎないプロとしてのプライドとか、彼女自身の映画の中での振る舞いの意味とかがだんだんとわかってくる。

映画のあまりの穏やかさに、近くの方から寝息も聞こえてきたが、それは、「ノーナレ」のドキュメンタリーのように、余計なナレーションや音楽を入れない演出によるものだろう。それが観ていて、とても自然で心地よかった。(ラストにタイスの瞑想曲が流れて初めて、そういえばBGMがなかったことに気がついた)

もう一つ、パンフレットがよくできていて、映画に登場する料理のレシピもついているのでおすすめ。

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sow_miya

2.0人間関係が希薄なこの映画は、監督の意向に反して、1/3くらい編集カットされてしまったのか?

2024年2月19日
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SLが好きで、グルメな先輩の勧めで、鑑賞してきました。

現代では珍しくもないが、映画中の"ノルウェイオムレツ"は食べてみたいと思った。

まず、とにかく"カメラに落ち着きがない" いじり過ぎ!
僕達 観客は、料理している最中や、サービス(運んでもらう)時の"手先がみたい"のに、
カメラは人物の顔を追い過ぎて、肝心な手元はうつさない。

暖炉や蝋燭の火はきちんんと映し、たまに木漏れ日までは映すのだが。。。
重要な時に、診さなければいけない"美食家の顔の表情"の露出が足りなかったり
暗い廊下と階段を、あてもなく無神経に暗く映し続けたり、撮影したカメラが安物かもしれないが
撮影には、まったくセンスの欠片がなく ド級の下手カメラ であった。

映画の中で、使われたコンロは、焚火での釜戸なのだが、
カメラが廻っている最中は、カメラが熱や水蒸気で、故障したり、レンズが曇ることを危惧し
撮影時は すべて釜戸に蓋をして撮影している"リアル感のない"ところは強く興ざめした。
中華料理でなくても、火を魅せる事は、調理映画なら重要なファクターな筈だ。
まして、フランス料理では、15㎝から30㎝クラスのフライパンを多用するのだが、
映画では、軽い焦げ目をつけたりすることもなく、油の代わりにワインを使う事もなく、
垂れにもこだわりが薄く、そのくせ英国料理の様に、皿の置き方や盛りつけに注視したり。。。
この映画のような 煮込み中心でしかないフランス料理は16世紀後半の昔であっても、チャンチャラおかしい。
よって、たまに 申し訳程度の湯気は映りこむが、調理時に温度や熱を感じる事もなく、効果音で誤魔化しているのは、料理映画として失格である。

舞台はプロバンス地方の田舎の様だが、映画の地勢を表現したり、映画の魅力を増す為に、
ただの畑や庭ではなく、周囲に広がっている筈の 田園風景 を写す場面が必要であった。
普通の監督は、そのカットを 映画のどこに差し込むか、悩むのだが
本作の監督は、そんなことに悩む以前の問題であった。

新人料理人の成長や、彼女の実家の工夫は? 新技術をポトフに使わないのか?
不採用だった新人料理人との展開は どうでもいのか?
美食家はオーナープロデューサーではあったが、職業は。。。貴族なのか?
結局、最高の料理は、完成せずに、投げ出して他の料理家のファンになったのか?
この映画に、ポトフ(おでん)は関係なかった。
オスマントルコ(ユーラシア国)皇太子との結末は?

この映画のストーリーは解らなかったし、何も残らなかった。

僕は20代中盤から10余年「東京会館」で毎月2回
この映画の様に、オーナー的である 常務・総料理長が属するクラブで、
この映画の"サロン"の様にオーナーと共にコース料理を食していたが、
この映画では、フランス料理の良さである"緊張感"が、何も伝わってこない残念な映画だった。

ただ、主人公:ドダンは、僕らが認識する"フランス男子"として、最高のカッコ良さだったので、ドダンを観る為と
調理と食事のシーンが長く、映画を観ていると、100%お腹がすくので、食前映画としては、最高の出来だった。

料理人の話では、新人調理人を扱った 日本のドラマ「バンビーノ」が好きです。

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YAS!

3.0ウージェニーの肖像

2024年2月9日
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ほぼ全編にわたって料理を作っているか、食べている映画だ。冒頭の延々と続く調理シーンは無駄のない動きが心地よく、感嘆する。時代背景も違うし、フランス人が皆あんなに凝った料理を毎日食しているわけではないだろうが、まさに“豊潤”という言葉がふさわしい。足し算もしくは掛け算の料理というか、ちょっと過剰にも思えるほどだ(日本料理は引き算?)。
ドダン✕ウージェニーの料理を味わうために足しげく集まる紳士たちは、ルイス・ブニュエルの「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」を彷彿させ、少しく滑稽でもある。
ジュリエット・ビノシュも「汚れた血」からもう37年も経ったのかと、感慨深いものがある。時の流れは速いものだ。歳月はそれなりの痕跡を残しているものの、佇まいは健在だ。
そのうち“厨房のポーリーヌ”で続編が作れそうな気もする。

映画のあと、感化されていつになく贅沢なランチにしてしまった。

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梨剥く侍

3.5佇まい

2024年2月4日
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幸せ

寝られる

萌える

カンヌで賞を獲ったらしいのでかなり迷ったが、予告編に惹かれて観賞。
ポトフというシンプルな料理で至福の時を演出する痛快さを期待したが、
さにあらず。想定とは違ったが、心に響くものがあった。

ストーリーに奇を衒ったところはなく、延々と調理と食事の場面が続く。
単調でウトウトする場面もあったが、調理には結構興味を惹かれた。
結構粗雑で美しさも感じられなかった。
食べ方も私がイメージするフランス料理の作法よりはかなり汚く、
興味をそそられた。
他人に厳しく自分に甘いフランスらしい(あくまでも私のイメージ)し、
2人の生き方も含めてナチュラルに描写されていた。
だからこそ2人の絆にはある種のシンパシーを感じたし、心に疼痛も残った。
2人の佇まいは魅力的だった。

但し、やっぱりラストはゲージツでわかりにくかった。
才能溢れる娘の必然性も最後に霞んでしまった。
わかりやすいラストではゲージツにならないのだろうか。

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みみず

5.0レシピを作る美食家と、それをキッチンで完成させる料理人。 実際の料...

2024年1月30日
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楽しい

知的

幸せ

レシピを作る美食家と、それをキッチンで完成させる料理人。
実際の料理シーンが凄くて…肉や魚をさばく、下ごしらえ、ソース作り、盛り付け、など、具体的に臨場感たっぷりに映されて。

食への追究、お二人の信頼に満ちた、最初から最後まで食欲をそそる映画でした。

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woodstock

5.0ポトフは pot-au-feu. 🇫🇷 語

2024年1月28日
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【ポトフとは】
「ポット・オー・フー」なんですよ。
「お鍋」=「 オンザ」=「 Fire ファイアー」ね。
これ、語感がいいんだよねぇ ♫
「火 hi」は=フランス語では「フーfeu」。
なんて可愛いんだろ♥

料理が大好きな僕なのですが、
若い頃、オリジナル・ポトフを10年に1度だけ作って、友人たちを呼んで振る舞っていました、
名付けて「10年に1度の大男スープ」。

丸のままのじゃがいも、🥔
そのままのにんじん、🥕
骨付きのチキン、🍗
もしくはビーフか豚の骨付きバラ肉、🍖
丸ごとの玉ねぎにローリエ、🧅🌿
コンソメ・ベース。大ぶりのマシュルームや🍄
トマトをホールで後入れすることも有り。🍅
素焼きのどんぶりです。木のスプーンです。
お店の名前は「3匹のくま」🏡
Bon appétit!

後に信州で暮らすことになり、ワイン醸造所でしばらく働いたのですが、自分のお店とか やったら楽しかったろうなぁ✨と今でも時どき思います。
料理・レストランものの映画は、そういう訳で目がない僕なのです。

・・・・・・・・・・・・・

【隠し味は男女のハート】
映画の原題、および脚本のもとになった小説は「美食家ドダン・ブーファンの生涯と情熱」。
その名からわかる通り、邸主のドダンが物語のメインに据えられているはずなのですが、
実際のスクリーンで我々が魅せられるのはジュリエット・ビノシュ演じるスー・シェフ=ウージェニーの、彼女の存在の圧倒的な大きさ。
そして冒頭からの 圧巻の調理シーン。

ドダンがフランベする、
ウージェニーが炒める、
ドダンがコンソメを引く、
ウージェニーが香草を散らす、
ドダンがオーブンを覗く、
ウージェニーがドレッセする、

カメラが皿を追う。人間を追う。
二人対等の、たっぷり時間をかけての美食と人生の、調理シーンでした

今回の映画は
かつて実際に婚姻関係にもあった!という二人、
ブノワ・マジメル と
ジュリエット・ビノシュ のW主演。
倒れたジュリエットのためにマジメルが駆けつけて、彼女のためだけに「療養食のフルコース」を作ってやるんですよね〜
まったくもって粋なキャスティングじゃないですか💕

・・・・・・・・・・・・・

【五感で味わう映画】
映画館 東座の社長=合木こずえさんは、今回またまた町内の小さなビストロとのコラボを企画してくれました。
映画を観たあと、余韻に浸りながら通りをぶらぶら歩いて、そのビストロで1週間限定のポトフメニューを頂けるのです(要予約) 。

映画を五感で味わおうというこの東座の企画は、最近では
◆「あのこと」で、性教育スペシャリストによる上演前講演。
◆「共に生きる 書家金澤翔子」では書道家さんのお話。
◆県内に住むパントマイミストの舞台は「沈黙のレジスタンス」に合わせてのステージ。
そして
社長さんご本人による寸劇も行われましたよ。
「世界で一番美しい少年」にぶつけて、俳優になるために劇団で苦労し、辛い思いもしてきたという合木社長の来し方を喜劇に仕立てたものでした。

演出の楽しさを知っている映画館の社長。
人口8万人の小さな街だからこんなユニークなタイアップ企画が実現してしまいます。

どうです、いい映画館でしょう⁉️
えっへん😆👍

・・・・・・・・・・・・・

【弱った心と体には手料理が一番】
フランスでポトフなら
日本ではさしずめ「お粥」だろうかなぁ・・
誰だって辛いときには、優しくされたいもの。

「どう具合は?」
「食べられそうかな」
「ちょっとでも食べてごらん」

そう言っておでこに手を当ててもらう。これが最強のお薬。
そしてよく寝て、少し元気になったらデザートは「ミカンの缶詰め」で決まりです。
優しさは、どんな高級な独逸製の注射よりも僕らを元気にしてくれるんだよね。

多くを語らなくても、作ってくれたその人の愛情がわかり、心細い思いも温めてくれるのが pot-au-feu。
ブノワ・マジメル と
ジュリエット・ビノシュの恋心を、ドダン手作りのポトフは満たしてくれたようです。

・・・・・・・・・・・・・

監督は、かつての「フランス領インドシナ」=ベトナム出身のトラン・アン・ユン。
フランス映画にありがちな さばさばとした冷たさや、観終わったあとの ぐったり感はありません。
ヌーベルバーグで失ってしまったフランス映画の良いものを、監督はアジアの眼差しで取り戻してくれました。
監督はフランス人の日常を、潤いのある人肌のものへと復活させてくれました。

厨房ものではあるのですが、(珍しく) 食べるお客さんがみんな清潔で良い人。
そしてウージェニーもお手伝いの女の子たちも、ちゃんと全員が丁寧に扱われていて、フルコースで まかない食を味わう映画なのです。

主人のドダンが単なる美食家ではなく、
「作ること」、
「ふるまうこと」、
「一緒に食べること」、
この三拍子ね。
その食卓の光景のすべてが猛烈に好きな人物であった という設定が◎なんです。

だから
美味しいものが好きなひと、
料理が好きなひと、
そしておもてなしが大好きなひと、
そういうあなたには絶品。オススメの映画です。

・・・・・・・・・・

東座の帰り道、
ブルゴーニュワイン「シャンボール・ミュジニー」をスマホでポチりました。もちろんあのウージェニーが愛したワインでしたね。
届くのが楽しみです。

病床のウージェニー:
「作ってもらうのが癖になりそうだわ」
心込めて作った人 ドダン:
「君が食べている姿を見たい」
「ありがとう」。

名優に拍手、
C’était bon! / セ テ ボン / ごちそうさまおいしかったです。
🍝🍷✨

·

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きりん

4.0私は秋がすき〜(2024年2作目)

2024年1月25日
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幸せ

すでに持っているものを求め続ける。素敵な言葉ね。
終始美味しそう。
私は食べることが大好きで料理もするのでいい音だなぁー。と楽しめた。
映画の中に嫌な人がいない。
丁寧に生きていて、丁寧な言葉を使う。
お願い、ありがとうが沢山出てくる。
愛している人に美味しいものを作ってあげたいっていうウージェニーとドダンの愛が綺麗。
今日は美味しいものを食べよう。

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きゃりー

3.0冒頭がクライマックスです。100年前の調理場面と料理を再現した素晴...

2024年1月24日
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冒頭がクライマックスです。100年前の調理場面と料理を再現した素晴らしさ。また、調度品や衣装など美術も豊かに表現されていて、いいものを見せてもらった、という眼福の作品です。

ドダン(美食家)とウージェニー(料理人)の深く奥ゆかしい愛情のやりとり、そして互いに自立し料理の高みを目指す崇高さに感銘を受けました。

『サン・セバスチャンへ、ようこそ』の直後に見たので「結婚とはなんぞや!?」と深く考えさせられました(笑)

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ほりもぐ

3.0圧倒的な料理シーンのビジュアル&サウンド

2024年1月20日
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冒頭から料理シーンが圧倒的なビジュアル&サウンドで展開されていき、
グイグイとスクリーンに没入していきました。
セリフもほぼないのですが、料理に向かいあう姿に猛烈に感動しました。
この冒頭がいちばん鮮烈に記憶に残りました。

物語はというと、説明らしきものは一切ない展開で私好みで、
とにかく美食家(と言いつつも料理人でもありますが)の生き様を描ききる。
それが伝え手の伝えたいことなのだなとラストあたりで感じました。

料理同様、実に味わい深い記憶に残るフランス映画でした。

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ひでちゃぴん

3.5女の子が魅力的

2024年1月20日
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淡々と見ているつもりだったけど、周りの人に聞こえるくらいお腹がずっと鳴って困った。

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night runner

4.0タイトルだけで優勝!

2024年1月19日
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知的

幸せ

なんて優雅で品がある、まさに口福の極み!

冒頭から料理大事典から飛び出してきた様な華麗な料理…スクリーンから香りや湯気までも溢れてきそうなほど芸術的な料理過程に魅了されっぱなし!
仔牛のポアレなんぞ恥ずかしながら喉が鳴りそうになりました💦

情熱の全てを料理に捧げる美食家と料理人…
深過ぎる料理への想いと絆で結ばれる2人の愛の物語であるところがザ!フランス!

美食家ブノワ・マジメルと冷静かつ甘美な魅力を放つ料理人ジュリエット・ピノシュ
贅沢過ぎる完璧なキャスティングだ!

そこに絡む絶対味覚の見習いの少女
絶対的・美少女な彼女に今後も注目したいし
料理の監修をしたピエール・ガニュールも皇太子専属シェフ役でちゃっかり出演したりして…

フランス代表作の奥深さを充分に堪能出来ました

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ねもちゃん

3.5静かなのに奥底では熱い

2024年1月19日
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ユーラシア皇太子に晩餐会に出された料理が不満だった美食家が、考えられる最上の料理で逆に皇太子をもてなそうとする。選ばれた料理はポトフ。ただの家庭料理とも言えるポトフでどうもてなすのか?料理人との試行錯誤が始まる…。
みたいな映画だと思っていた。いや、この内容ならポトフってタイトルにしちゃダメよ。ポトフなんて…と訝りながら食べ始めた皇太子が、むさぼるように完食するクライマックスを待っていたのに。
とにかく調理して食べての映像が繰り返される。冒頭なんかかなり長い調理シーンだった気がする。でも、三つ星シェフが監修しただけあって相当に美味しそう。料理好きな人ならこれだけでも観る価値はあるかも。
美食家と料理人の愛の物語として頭を切り替えて観ていたが、それもどうやら違う。料理でつながり、料理を通して関係を深めていった2人だからこそのラストシーンはグッとくるものがあった。イメージしていたものとはだいぶ違うけど、これはこれで悪くない。とても静かに話が進んでいくのに、奥底では2人の料理への熱い思いが燃えていた。まるで火にかけられた鍋のよう。はっ!だからポトフという邦題にしたのか!(たぶん違う)

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kenshuchu

4.0料理は芸術

2024年1月16日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

幸せ

萌える

料理(美味しい)は芸術にも希望にもなる。
ブレずに最高の美味しいを求めて同士もいる。最高の人生。

ヴィオレットに冷た過ぎて世話してもらってるくせに💢とイライラ

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ふわり

3.0【料理は愛情‼︎ by結城 貢】

2024年1月14日
iPhoneアプリから投稿

知識と教養に裏付けられた、機知に富んだ気障な台詞回しと世界に誇るフランス料理、これぞ自立した男と女の大人の仏映画。

レシピを粛々と熟していく調理工程の様式美と自然光に映える食材、ドキュメンタリーを観てるかのような長回し撮影と繊細な画角、料理は味覚だけでなく五感で堪能するもので、料理人は芸術家であり科学者であり哲学者だと思わせてくれる、併せて料理人の社会的地位が日本と比較にならない程に高いことにも妙に納得させられた。

調理器具に調度品、インテリアから当時の上流階級層の衣装まで、象徴的な照明と色合いも相まって楽しめた。

但し粉もん文化の庶民階級出身としては、蘊蓄抜きに美味いもんは美味いでええやないかとも⁉︎とりあえず料理も恋愛も準備と下拵えが大事だと勉強させてもらいました。

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Chang Koh