劇場公開日 2023年12月15日

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「料理という芸術、たゆたう様な心地よい映画」ポトフ 美食家と料理人 百万両さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0料理という芸術、たゆたう様な心地よい映画

2024年5月4日
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鑑賞方法:映画館

料理は芸術だというが料理という芸術が映画という芸術と見事に相乗効果をなしている。
食に少しでも興味のある人はあのめくるめく調理シーンに惹き込まれて時間を忘れるのではないだろうか…
この映画は大きく3つの料理シーンで成り立っている。「料理人」ウージェニーが圧巻の腕を振るう冒頭40分あまりの友人との夕食シーン、逆に「美食家」ドダンがウージェニーを饗するシーン、そして「その後」ドダンがもがき苦しみ再生する調理シーン。そのいずれもが息を呑む。
特に最後の再生のシーンは厳密に計算された無駄と冗長を極限まで省いた感嘆すべき演出。
どん底に喘ぎ料理に関するあらゆる関与を拒否していたドダンが次のシーンでは何の「説明」もなく少女ポーリーヌとチームプレイで料理人のオーディションを行っているというあの見事な省略には心を揺さぶられうならされる。
逆光を意識した照明は終始素晴らしいが、最後ポーリーヌとドダンの「再生の料理」シーンでは明かりが時を追うごとに生気を帯びてくる!
効果音も素晴らしい。
とにかく非常に繊細でドラマティックな映画。
『青いパパイヤの香り』のあのたゆたう様な心地よいテンポを思い出した。

百万両