ポトフ 美食家と料理人

劇場公開日:

ポトフ 美食家と料理人

解説

「青いパパイヤの香り」「ノルウェイの森」などの名匠トラン・アン・ユン監督が、料理への情熱で結ばれた美食家と料理人の愛と人生を描き、2023年・第76回カンヌ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞したヒューマンドラマ。

19世紀末、フランスの片田舎。「食」を追求し芸術にまで高めた美食家ドダンと、彼が閃いたメニューを完璧に再現する天才料理人ウージェニーの評判はヨーロッパ各国に広まっていた。ある日、ユーラシア皇太子から晩餐会に招かれたドダンは、ただ豪華なだけの退屈な料理にうんざりする。食の真髄を示すべく、最もシンプルな料理・ポトフで皇太子をもてなすことを決めるドダンだったが、そんな矢先、ウージェニーが倒れてしまう。ドダンはすべて自分の手でつくる渾身の料理で、愛するウージェニーを元気づけようとするが……。

「イングリッシュ・ペイシェント」のジュリエット・ビノシュが料理人ウージェニー、「ピアニスト」のブノワ・マジメルが美食家ドダンを演じた。ミシュラン3つ星シェフのピエール・ガニェールが料理監修を手がけ、シェフ役で劇中にも登場。

2023年製作/136分/G/フランス
原題:La Passion de Dodin Bouffant (The Pot-au-Feu)
配給:ギャガ
劇場公開日:2023年12月15日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第76回 カンヌ国際映画祭(2023年)

受賞

コンペティション部門
監督賞 トラン・アン・ユン

出品

コンペティション部門
出品作品 トラン・アン・ユン
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(C)Carole-Bethuel (C)2023 CURIOSA FILMS - GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA

映画レビュー

4.0目と心を満たす、滴るような味わいを宿した秀作

2023年12月26日
PCから投稿

『青いパパイヤの香り』『夏至』で人々を魅了したトラン・アン・ユン監督が、あれから20年以上経って、かつての滴るような味わいを宿しつつ、さらなる次元へ進化を遂げている。時代は19世紀。ここには料理に情熱を注ぐ男女の弛むことのない究道があり、美食家たちの文化や様式に関する興味深い描写の数々、そして決して止まることなく巡りゆく季節と生命がある。時間を割いて織りなされる調理シーンは、まさに言葉を超えた吐息と滴る汗と所作の連続。香りや味わいと相まって男女の間でほのかに交わされる感情すらも繊細に沁み入ってくるのがとても感慨深い。依存し合うわけでも、甘い言葉を囁き合うわけでもなく、ただひたすら至高の一皿を求め続ける。その真剣な眼差し、信頼しきった表情、その果てにたどり着く感情が美しい。食して終わりではなく、永遠にも等しい理想を生涯かけて求め合うかのような、二人にしか表現し得ない愛がそこには刻まれていた。

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共感した! 3件)
牛津厚信

4.0料理が紡ぐ人間関係が行き着くところは

2023年12月21日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

知的

代表的なイメージショットは、今年9月に公開された同じフランス発のグルメ映画『デリシュ!』と同じなのだが、描くテーマはほぼ正反対。『デリシュ!』は宮廷を退いたシェフが謎めいた女性料理人の助けを借りて、それまで貴族のためにのみ存在したフランス料理を民衆に解放する物語。その過程でシェフと料理人の間には愛が芽生えていく、という展開だったが、本作『ポトフ』は同じフランスの定番料理の名前をタイトルにはしているが、主人公の美食家と、彼の希望を具現化していく料理人は、もっとクールで、だからこそ強い絆で結ばれている。見ていてそこにぶっ飛んだ。食を介して人間関係を描くと、どうしても情緒に傾きがちだが、トラン・アン・ユンの演出は最終的にその種の傾向とは無縁なのだ。

しかし、次々と登場するフランス料理の完成度は『デリシュ!』以上。東京でもフレンチレストランを経営する三つ星シェフ、ピエール・ガニェールが監修した舌平目のクリームソース、子牛のポワレ、アイスクリームが中に入ったノルウェー風オムレツは、映画の後味はどうであれ、視覚から食するに値するもの。このシーズンに打って付けの作品だ。

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共感した! 4件)
清藤秀人

4.0繊細で深みのある愛情表現は元パートナー同士ゆえか。調理を流麗にとらえる映像に引き込まれる

2023年12月18日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

幸せ

萌える

優れたダンス/ミュージカル映画が冒頭に素晴らしいパフォーマンスのシークエンスを配して観客の心をがっちりつかむのと同じように、「ポトフ 美食家と料理人」も始まって早々、美食家ドダン(ブノワ・マジメル)と料理人ウージェニー(ジュリエット・ビノシュ)がアシスタントのヴィオレットを指示しつつ手際よく食材をさばいて加熱し仕上げていく過程を、流れるようなカメラワークで躍動感いっぱいに撮影している。トラン・アン・ユン監督の演出意図を体現した俳優たちの演技と、彼らの表情、手や調理器具の動き、そして調理が進むにつれ音を発しながら色と形を変えていく食材を優雅に踊るようにカメラのフレームに収めた、撮影監督ジョナタン・リッケブールの貢献も大きい。

マジメルとビノシュは1999年に『年下のひと』で共演した縁でパートナーになり女児をもうけたが、2003年に別れている。彼らが演じるドダンとウージェニーも公私にわたるパートナーでありながら長年結婚しないままだったという設定であり、互いを想う繊細な感情の表現はそうした私生活の過去の経験がプラスに働いた印象を受ける。

ズアオホオジロのローストを食べる時に皿の真上に寄せた頭の上からナプキンをすっぽりかぶるという、変てこでユーモラスなマナーも描かれている(美食家でない評者は今回初めて知った)。ネットで理由を調べたら、香りを保つため、恥ずべき行為を神の目から隠すため、骨を吐き出す姿を他人に見られないようにするためなど、諸説あるらしい。

絶対味覚を持つ少女ポーリーヌを演じたボニー・シャニョー=ラヴォワールの無垢な魅力もいい。作中では料理の職人技の継承を担う役どころだが、フランスを代表する大女優ビノシュから未来のスターへバトンが渡されたような気にさえなる。本作が映画初出演のようで、今後の成長と活躍が楽しみだ。

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共感した! 5件)
高森 郁哉

4.0女装映画鑑賞第5回 貧乏がアカンねんで…貧乏が…

2024年4月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

女装映画鑑賞も、もう5回目になりました。
「もう止める!」とか言ってませんでしたっけ?知らんがなそんなもん。スカート穿いて映画観るの楽しぇもん。
そんな準備をするため、しばらく.com様をお休みしていました。
「いつもこんな恰好で観に来て申し訳ありません」とのテンプレ謝罪対して「いえいえ、楽しんでいってくださいね」と、とても優しいアンサーをいただきまして。
そのお言葉に、大福餅をハチミツで三日三晩煮締めたほど、甘えに甘えて観てきましたよ。あまり困らせたらアカンぞ。
以前にこちらも女装で観てきた『秘密の森の、その向こう』と同じく、インテリ向きのおフランスの映画なので、さっぱり楽しめないかも…と危惧していましたが、そんなことはありませんでした。
相も変わらず起・承・転・結がわかりにくかったのですが。
それでも2時間ちょいを、十分に楽しませていただきました。

物語が始まって早々に参ってしまったんですよね。SEが思いっきりいい仕事していると感じたの。
農園の野菜を根元から刈る「ザクっ…サクっ…」という音だとか、汲み上げる井戸水の「ザバザバ…ビチャビチャ」の音だとか、スゲー臨場感あったの。
鍋を火にかけ、「コトコト」と煮込む音やら、肉を焼く「ジュワー!」って音とかも。
見てると、お腹空いてきたの。
その逆に、咀嚼音の一切はカットされてたのね。このあたり、おフランスのマナーを徹底させていたのね。
刃牙でのジャック・ハンマーがステーキ食べる時の「ガプ…ギュイーン…ナポ…」みたいな音は出ないのよね。
???ってなって強烈に印象に残ったーシーンがあるんですよ。
ウズラ?か何かの小鳥の丸ごと煮込みみたいな料理を食べる時、頭からナプキン被ってた例のあのシーン。
あれ、何ぞや?と思って調べてみたです。どうやら「オルトラン」という料理らしくて。
食べる時に香りを逃がさないようにするためだとか、神聖な食事を行う際の敬意を表すためだとか、この料理は一部で非難されているから、その行為を隠す意味合いもあるだとか。←禁じ手かよ!
などの理由で、ナプキンで頭を覆うらしいですね。ただ単に咀嚼音をシャットアウトするためかと思ってました。
フランス料理のマナーって小うるさい!中華みたいにドババーっと盛って、ガガガガガ―っと一気に食すスタイルの方が好きなの。ごめんなさい、また本筋から外れちゃったですよね。

そのお話なんですが、料理人のウージェニーが病で逝っちゃたじゃないですか。てっきり主人公だと思い込んでたのに。
「こんなんでお話どう続くねん!」と思っていたら、美食家のドダンが主人公だったのですね。タイトルからして、こちらもてっきり海原雄山みたいなわがままオヤジなんかなーって思っていたら、わりと優しい人っぽくて安心しました。新しい料理人の選抜試験では、結構辛辣でしたけれど。
その場所に同席していた女の子がウージェニーの後を継ぐのかな?と思ったら、投げっぱなし。
そして、最も肝心のポトフの件も投げっぱなしですやん。そこまで描くんかなーと、勝手に思い込んでたんですよ。
思い込み激しいぞ自分。
そして、料理人の腕前がどうとか、グルメがどうとかじゃなくて、この物語って、純粋なラブストーリーだったことに最後の最後に気づかされたの。

ラストシーンでウージェニーの「私はあなたの妻だったの?それとも料理人?」みたいな問いかけにドダンは、きっぱりと「料理人だ」と答えたじゃないですか。病床の妻を前に、どんだけ雄山やねん!と思っちゃったんですよ。そこがどうにも引っかかって。
鑑賞後にあれこれと考えてみたです。ドダンにとってのウージェニーは、最も大切な舌を満足させてくれた人だったと思って。なのでウージェニーこそ自らが全幅の信頼を寄せていた人だったと思って。
そんな期待の全てに応えてくれた彼女こそ、彼の人生を一番彩どってくれた人だと思って。
「愛する妻だ」と言っちゃうのは、とても簡単で、当然のことで。そこをあえて「調理人だ」と万感の思いを込めて、言い切ったんだと思って。
何言ってんだか自分でもよくわからないんですが。

でもね…フランス料理って、やっぱり苦手なの。
美味しそうではあるんだけれど、余白の方が多いお皿をちまちまと小出しにされたり「なんでそんなややこしいねん!」っていうカラトリーの使い方に「しゃらくせぇ!」って思っちゃうの。外側から順に使うって基本中の基本しか知らないの。
やっぱり中華みたいにドババーっと盛って、ガガガガガ―っと一気に食すスタイルの方が好きなの。
和食みたいに箸一膳で完結される料理の方が好きなの。
貧乏がアカンねんで…貧乏が…
牛丼の食べ比べ程度しかできん財布の事情がアカンねんで。
ちなみに牛丼は、さっぱり味の松屋推しです。お味噌汁付いてるし。
そして、評価の印象に“美味しい”って項目がないのが惜しいです。

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