劇場公開日 2023年12月15日

  • 予告編を見る

「ポトフは pot-au-feu. 🇫🇷 語」ポトフ 美食家と料理人 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ポトフは pot-au-feu. 🇫🇷 語

2024年1月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

【ポトフとは】
「ポット・オー・フー」なんですよ。
「お鍋」=「 オンザ」=「 Fire ファイアー」ね。
これ、語感がいいんだよねぇ ♫
「火 hi」は=フランス語では「フーfeu」。
なんて可愛いんだろ♥

料理が大好きな僕なのですが、
若い頃、オリジナル・ポトフを10年に1度だけ作って、友人たちを呼んで振る舞っていました、
名付けて「10年に1度の大男スープ」。

丸のままのじゃがいも、🥔
そのままのにんじん、🥕
骨付きのチキン、🍗
もしくはビーフか豚の骨付きバラ肉、🍖
丸ごとの玉ねぎにローリエ、🧅🌿
コンソメ・ベース。大ぶりのマシュルームや🍄
トマトをホールで後入れすることも有り。🍅
素焼きのどんぶりです。木のスプーンです。
お店の名前は「3匹のくま」🏡
Bon appétit!

後に信州で暮らすことになり、ワイン醸造所でしばらく働いたのですが、自分のお店とか やったら楽しかったろうなぁ✨と今でも時どき思います。
料理・レストランものの映画は、そういう訳で目がない僕なのです。

・・・・・・・・・・・・・

【隠し味は男女のハート】
映画の原題、および脚本のもとになった小説は「美食家ドダン・ブーファンの生涯と情熱」。
その名からわかる通り、邸主のドダンが物語のメインに据えられているはずなのですが、
実際のスクリーンで我々が魅せられるのはジュリエット・ビノシュ演じるスー・シェフ=ウージェニーの、彼女の存在の圧倒的な大きさ。
そして冒頭からの 圧巻の調理シーン。

ドダンがフランベする、
ウージェニーが炒める、
ドダンがコンソメを引く、
ウージェニーが香草を散らす、
ドダンがオーブンを覗く、
ウージェニーがドレッセする、

カメラが皿を追う。人間を追う。
二人対等の、たっぷり時間をかけての美食と人生の、調理シーンでした

今回の映画は
かつて実際に婚姻関係にもあった!という二人、
ブノワ・マジメル と
ジュリエット・ビノシュ のW主演。
倒れたジュリエットのためにマジメルが駆けつけて、彼女のためだけに「療養食のフルコース」を作ってやるんですよね〜
まったくもって粋なキャスティングじゃないですか💕

・・・・・・・・・・・・・

【五感で味わう映画】
映画館 東座の社長=合木こずえさんは、今回またまた町内の小さなビストロとのコラボを企画してくれました。
映画を観たあと、余韻に浸りながら通りをぶらぶら歩いて、そのビストロで1週間限定のポトフメニューを頂けるのです(要予約) 。

映画を五感で味わおうというこの東座の企画は、最近では
◆「あのこと」で、性教育スペシャリストによる上演前講演。
◆「共に生きる 書家金澤翔子」では書道家さんのお話。
◆県内に住むパントマイミストの舞台は「沈黙のレジスタンス」に合わせてのステージ。
そして
社長さんご本人による寸劇も行われましたよ。
「世界で一番美しい少年」にぶつけて、俳優になるために劇団で苦労し、辛い思いもしてきたという合木社長の来し方を喜劇に仕立てたものでした。

演出の楽しさを知っている映画館の社長。
人口8万人の小さな街だからこんなユニークなタイアップ企画が実現してしまいます。

どうです、いい映画館でしょう⁉️
えっへん😆👍

・・・・・・・・・・・・・

【弱った心と体には手料理が一番】
フランスでポトフなら
日本ではさしずめ「お粥」だろうかなぁ・・
誰だって辛いときには、優しくされたいもの。

「どう具合は?」
「食べられそうかな」
「ちょっとでも食べてごらん」

そう言っておでこに手を当ててもらう。これが最強のお薬。
そしてよく寝て、少し元気になったらデザートは「ミカンの缶詰め」で決まりです。
優しさは、どんな高級な独逸製の注射よりも僕らを元気にしてくれるんだよね。

多くを語らなくても、作ってくれたその人の愛情がわかり、心細い思いも温めてくれるのが pot-au-feu。
ブノワ・マジメル と
ジュリエット・ビノシュの恋心を、ドダン手作りのポトフは満たしてくれたようです。

・・・・・・・・・・・・・

監督は、かつての「フランス領インドシナ」=ベトナム出身のトラン・アン・ユン。
フランス映画にありがちな さばさばとした冷たさや、観終わったあとの ぐったり感はありません。
ヌーベルバーグで失ってしまったフランス映画の良いものを、監督はアジアの眼差しで取り戻してくれました。
監督はフランス人の日常を、潤いのある人肌のものへと復活させてくれました。

厨房ものではあるのですが、(珍しく) 食べるお客さんがみんな清潔で良い人。
そしてウージェニーもお手伝いの女の子たちも、ちゃんと全員が丁寧に扱われていて、フルコースで まかない食を味わう映画なのです。

主人のドダンが単なる美食家ではなく、
「作ること」、
「ふるまうこと」、
「一緒に食べること」、
この三拍子ね。
その食卓の光景のすべてが猛烈に好きな人物であった という設定が◎なんです。

だから
美味しいものが好きなひと、
料理が好きなひと、
そしておもてなしが大好きなひと、
そういうあなたには絶品。オススメの映画です。

・・・・・・・・・・

東座の帰り道、
ブルゴーニュワイン「シャンボール・ミュジニー」をスマホでポチりました。もちろんあのウージェニーが愛したワインでしたね。
届くのが楽しみです。

病床のウージェニー:
「作ってもらうのが癖になりそうだわ」
心込めて作った人 ドダン:
「君が食べている姿を見たい」
「ありがとう」。

名優に拍手、
C’était bon! / セ テ ボン / ごちそうさまおいしかったです。
🍝🍷✨

·

きりん
sow_miyaさんのコメント
2024年2月25日

長野の相生座で、昨日やっと鑑賞してきました。鑑賞後に改めてこのレビューを拝読して、より深く作品が理解できた思いです。いい映画でした。

sow_miya
きりんさんのコメント
2024年2月18日

↑カールⅢ世さん
いいですね~‼️
かぶり付きたいです
腹ペコです
肉食系きりん

きりん
カールⅢ世さんのコメント
2024年2月18日

ドイツ料理ですが、アイスバインも男の料理って感じです。豚のスネの骨付き肉。ワイルドだろ~って感じ。

カールⅢ世
きりんさんのコメント
2024年2月1日

予約してあったビストロ、行ってきました!

豚の頬肉、バラ肉、スネ肉、そして牛肉が素晴らしい煮込み具合で盛り込まれ、
根菜が滋味あふれる味わいをかもし、
加えて煮崩れしないようにと硬めに火を通した黄色いズッキーニに、
そして今年初の鮮やかな緑のサヤエンドウが嬉しい。
スープが濁らないように手をかけ、心を尽くし
春の始まりを告げる、ご主人のお手紙のような一皿でした。
本当に奇跡のようなポトフを頂きました。

6人掛けのテーブルを囲みました。映画鑑賞者の皆さんと「ポトフ」の鑑賞後感をしみじみと語り合い、もちろんご自身も試写会をご覧になったというご主人ともお話をし、
寿命がのびたコラボの昼食会でした。

合木さん、
Sストアのご主人、
ありがとうございました。

きりん
sow_miyaさんのコメント
2024年1月28日

いいねを連打したいようなレビューでした。東座、やっぱり魅力的ですね。

sow_miya