ケイコ 目を澄ませてのレビュー・感想・評価
全216件中、101~120件目を表示
淡々とした日常
聴覚障害のボクサーと彼女を取り巻く人々を描いた映画。
東京・荒川の河川敷をはじめとする庶民的な景色は懐かしさを感じる。
映像もざらっとしておりフイルムのような感じ。
主人公は当然言葉を発しないため全体的に台詞が少ない。
こういうラストもあるのかというくらい起伏の少ないエンディング。
主人公行動について説明がないシーンも多くあった。
観ながら自分の中でいろんな想像が働きそれもこういった映画の面白さだろう。
時には心も澄ませて。
聴覚障害を抱える実在の女性プロボクサーをモデルにした物語。日中は客室清掃の仕事、午後は下町のジムでトレーニングに励むケイコ。尊敬する会長の声も、ゴングの音もその耳には届かない。そして一度ボクシングから離れたいという本音もうまく伝えることができない。
周囲の期待に応えたい気持ち。自分自身のこれからのこと。心が強く見えるケイコにだって弱い部分はもちろんある。淡々と流れる下町の空気感。あちらこちらの雑音。なんだか感傷的になります。
正直になれないもどかしさやお世話になった会長への義理。入り乱れる感情を隠すようにリングに立つケイコの姿にぐっときました。岸井ゆきののいつもと違った表情が素晴らしいです。ただ、全体のテンポが私には合わなくて途中ちょっと退屈してしまいました。
力のある、いい作品だけど……
力のある作品です。
ざらっとした質感の映像、シンプルなストーリー、岸井ゆきのの揺るぎない存在感……。
それらがひとつになって、ひじょうに味わいぶかい内容に仕上がっていました。
まず冒頭のトレーニングのシーンが圧巻です。ケイコとトレーナーのパンチの音は、まるでパーカッションによるセッションのよう。そのリズムがなんとも心地よい。
あまり起伏のない物語なので、途中、映画の世界から気持ちが離れそうになったけれど、決してそうはならず、またすぐに意識が画面に戻っていく。
中盤ぐらいからそんなことを繰り返していて、なんか不思議な作品だなと思いながら観ていました。
ともすれば離れそうになる僕の気持ちをスクリーンにつなぎ止めていたのは、言うまでもなく、岸井ゆきのという女優の存在です。
デ・ニーロじゃなきゃ『レイジング・ブル』があそこまでの作品にならなかったのと同様に、岸井の存在がなければ本作は成立しなかったでしょう。
ちなみに、昨年、僕は彼女の舞台『気づかいルーシー』も観ましたが、そのときのパフォーマンスも素晴らしかった。岸井ゆきのは、わが国のエンタメ業界の未来を背負って立つ俳優です! これからも応援するよ、ゆきのちゃん♡
いや、また気色悪い文章になってきた。映画の感想に戻ります。
さて、岸井ゆきのの好演とともに伝わってきたのは、監督がこの作品をひじょうに丁寧につくっているということでした。
本作のテーマを損なわないように、安直な「感動物語」にしてしまわないように、注意ぶかく制作しているということがわかりました。
その一方で、「でもなあ」という思いも湧いたのです。
前述したように、たしかに力のある、味わいぶかい、いい作品なのだけど、正直言うと、やっぱり映画として、もうちょっと面白くしてほしかったなぁ、と。
スパーリングのリズムに魅せられた
岸井ゆきのさんがよかった。演技力と役への情熱の熱さが伝わってきました。
なんと言ってもスパーリングのかっこよさ。あれで一気に物語に引き込まれてしまいました。
いつも頑なに自分を守ってるケイコが美しく、楽しげに、自分を解き放つ瞬間。
オーナー役の三浦友和さん。とてもよかったです。びっくりしました。
頑なだったケイコが(それでよいと思っていたケイコが)自分の身体の事情を伝えられず、思いを伝えられないジレンマにもがいて、でも意外な人がケイコに挨拶に来るところでケイコの心情が変わる場面。
あの場面でケイコはまた前を向いたのだと思います。岸井さんの表情が。なんとも。よかったです。
音楽がなく、シンプルな映画作り。その潔いよい作り方が深く刺さる映画でした。
文学小説と創り方が同じ
主人公のケイコがほぼ話さないから、説明が少なくていいね。心情を推し量りつつ観るしかない。
ケイコは言いたいことはないのかというと、そんなことはなく、うちに秘めてるものが、飛び出してくる瞬間がある。そこで心を打たれるし、「弱い犬ほどよく吠える」って本当だなって思ったよ。ケイコは強い。
ラストは「ここで切ったら凄いな」って観てたら、切った。すごい。
説明の少なさも、余韻を残すラストも、文学小説みたいと思ったよ。
あしたのロッキー
なんだかふざけたタイトルになっちゃいましたが、端的に言うとそんな感想だったのでしょうがない。フィルム撮影も相まって、かなりグッときました。良い。
ケイコ(岸井ゆきの)とおやっさん(三浦友和)は勿論なのだが、出てくる人みんな良い。終わり方も「生きる希望」に溢れていて大好きでした。何よりも、フィルム撮影の質感と、劇伴も台詞も最小限(勿論主人公に至っては無い)の所での録音。素晴らしかった。色々なものが詰め込まれているが、台詞が極小というのもあってお仕着せ感はなく、自然と身体に染み込んでくる感じもエンドロール後に反芻したくなる心地よさを孕んでいましたね。
作って欲しくはないけれども、続編が出来ちゃったら必ず観に行く。そんな映画でした。
【”サイレント&センシティブ&ソウルフルなボクサー。”岸井ゆきのさんの目(目力)と表情と身体のみで演技する確かな演技力に、今更ながら引き込まれた作品。劇伴、一切なしの演出も効果的な作品である。】
■ボクシング映画が面白いのは、演じる俳優さんの気迫がスクリーンを通して伝わってくるからだろう。
だが、女性ボクサーを主役にした映画は少ない。
邦画だと、安藤サクラさん主演の「百円の恋」
洋画だと、クリント・イーストウッド・主演、監督でヒラリー・スワンクを一躍スターダムに押し上げた「ミリオンダラー・ベイビー」と、渋い所では脱北者の女性ボクサーを主人公に据えた「ファイター、北からの挑戦者」が印象に残っている。
主演した女優さんは、皆スターダムを駆け上がっている。
だが、トレーニングを含め、相当な覚悟が必要なんだろう。
■今作では、更に聾者という設定が被されている。
つまり、岸井さんは台詞で演技が出来ないわけである。
だが、今作で彼女はこの難役を見事に演じきっている。
ボクシングシーンも含めて・・。
今までは気づかなかったが、岸井さんの目力は相当凄い。
特に、小柄な彼女が”下から上”を見る時の目が凄い。
■演出面で言うと、一切の劇伴を無くした事で、ボクシングジムでミットを叩く”バシ!バシ!!”と言う音や、都会の騒音、川の流れの音がリアリスティックに響いてくることであろう。
<今作での、岸井ゆきのさんの声なき演技は、天晴というしかない作品である。
コロナ禍の寂しき風景や、脇を固める三浦友和さん、佐藤緋美さんの演技も良い。>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■2月公開の「レッドシューズ」も楽しみである。
サブタイトルがダサい。
音が聞こえない、音を出してはいけない系の映画にハズレは少ない。観客が集中するし絵も手が抜けない。
レビューもかなりの数あるし、評価も高い。
ストーリーに目新しさは無いが、心の揺れを細かく感じられるのはやはり「音」が無いせいだろう。
ドキュメンタリーぽい距離感も良いのだ。
岸井ゆきのの成長著しい。三浦透子、古川琴音とか昔は見分けがつかなかったが3人とも良い作品に恵まれて一気に開花した感じでユマニテウハウハだ。
(3人とも事務所が同じ)
三浦友和のイケおジジ具合が良い。
仙道敦子が元気でよかった。
さらに中村優子の顔も見れてお得であった。
最近忙しくて、落ち着いて映画が見れない。
こんな時こそ映画見た方が良いと思うんだけど、心に余裕がないの、、、、。
2023/01/18
かつてプロボクサーだったわたしは「強くなりたい」とか「チャンピオンになりたい」みたいな思いはそんなになくて、単純にボクシングが楽しくて続けていたら、ボクシングがある日常が普通になっていた。ロードワークして仕事してボクシングして帰る、それが当たり前の日常だった。
世の中にあるボクシング映画は人生やら恋人やら、でっかーい何かを背負ってリングに立っているドラマチックなものばかりで、自分みたいなのからすると別世界のような気分になるものばかりだった。
この映画は、当時の自分のように、日常の中にボクシングがある、ただそれだけ、そんな1人の女の子の日常を切り取っているだけなのがとても心地よかったし、こういう映画があることが嬉しかった。
ボクシングだけではなくて、耳が聞こえないということも、彼女にとっては当たり前のこと。そういう当たり前のことを過度にドラマチックにすることなく描いているのがとても良かった。
バンテージ、わたしはネットに入れて洗濯機で洗ってたけど、ピンチハンガーに同じように干してました。
あとあの美しいコンビネーション練習を見ていたら、久しぶりにボクシングをやりたくなりました。
難しい役を見事に好演
生まれつき聴こえない難しい役柄を表情による表現力で演じ切った岸井ゆきのさんの演技力に引き込まれました。特に何かが起こるわけではなく淡々と展開するストーリーですがじわじわと心に響く作品でした。
上映館拡大で浦和に来てくれてありがとうございます。
是非映画館で🎦
10
気がつけば見終わってた
ストーリーに大きな起伏やエピソードがぶち込まれるわけでもなく、割と淡々としていました。が、何かを訴えてくるものがあります。一言で片付けられないような何か。叫びながら相手に打ち込んでいく姿が心に残る。
はい
語らない主人公だけに登場人物と同じく彼女の仕草を追いかけてしまう。わかりにくい表情であるが、もやもやしているようである。決定的な何かがあったとも言えない。何かが違ったのか?自分に気づきゆっくりと傾く。
言葉で濁せぬ演技で答えた岸井ゆきのがやりきる。周囲の演技もそれを支える。久しぶりの仙道敦子がよかったな。
薄味ではあるがしっかりと味がある。聞けなかった彼女の独白。切り裂くような呻き。生きていることに気づき、そしてまた走りはじめる。
静かに淡々と
何かが起こるわけではなく、だけど耳の聞こえないボクサーのいろいろな思いを感じます。
言葉によらない感情表現、ボクサーとしての動き、身体、主役の人はかなり努力されたんだろうなぁと感じました。
三浦友和さんは、さすがです。
フィルムの良い点、良くない点。
きめ細やかな作り。
縄跳びの縄が床に当たる響き、
靴、
グローブとミット、
鉛筆とノート、
電車、車、、、の響き。
セリフが少ないので、
目を澄ますと、
脳に響いてる何かが際立つ。
音楽が、入る所は、
上記は全無音。
それぞれの音が脳を透過して心臓に響く。
体感してから、
頭で解釈する、
身体で感じたものを、
脳で解析(映画に解析なんて不要、という前提で。)するタイプの作品。
2人のシャドウは、
年間でもトップクラスに残っていいほど気持ちのいいシーン。
耳を澄ます、
のではなく、
目を澄ます、
と、
心に響いてくるものがある。
のであれば、
寄りの絵の暖かさはいい。
引きの絵の何枚かの、
フィルムの粗さは、
これでよかったのかは疑問が残る。
こちらは目を澄ませてるのに、、、。
フィルム好きであればこそ、
ノスタルジーで語るのではなく、
暖かさとかでごまかすこともなく、
更にもっと引いた感覚も必要かと。
とはいえ、
そんな粗さも
ケイコの、
立たなきゃ昨日へ逆戻り、
感に、
倒されてしまった。
好きそうで好きじゃなかった
すごい映画だなとは思った。でも好きか?とか夢中になれたか?とか面白かったか?って言われると、うーん。
感動的に終わる映画とか派手な演出とか嫌いなので、こういうひたすら地味だけど丁寧な作品好きな感じがするんだけどそんなことなかったな〜。
期待値もすごく高かったからかな。
あ、演技はすごく良かったです。すごかったです。1番の見どころだと思います。
ボクシング映画だと、あゝ荒野を思い出すけど、やっぱりボクシング映画はジム潰れるんだな〜って思っちゃった。それにしてもボクシング映画見れば見るほどボクシングって不幸のスポーツなのではって思う。映画でボクシングしてて幸せな人見たことない。
斬新ではあるが・・・
岸井ゆきのさんといえば毒舌キャラの印象でしたが、今作で難聴×ボクサーという設定で斬新だったし、邦画にしては扱いにくい内容だったので期待して観に行きました。90分で綺麗にまとまっていて、文句はありませんが、『コーダ 愛の歌』のような明るい印象は感じなかった。
決して悪い映画ではないですがボクサーとして道半ばで映画が終わるので、プロでありながら難聴という状況がまだ浅い現状だったので、個人的には「もっと観たい」という気持ちが残りました。
冒頭の鏡に映る岸井さんの背筋の仕上がりには敬意を表したいですが、原作は読んでいませんが、中途半端な内容で、不完全燃焼な感覚が残りました。
タイトルなし
しっかりと“結”まで描かれていないからこそ、ただ日常を切り取ったのだということが感じられて良かった。
映画だからと言って、
大袈裟な盛り上げなんて必要ない。
全てを説明し尽くす必要もない。
と再認識。
ただそこにケイコという女性が生きてて、ケイコを取り囲む人たちが映されていた。
また、フィルムの優しい光がとても愛おしかった。
こういう映画を観たあとは世界がもっと綺麗に見える。
全216件中、101~120件目を表示