ザ・ウォール : 映画評論・批評

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ザ・ウォール

劇場公開日 2017年9月1日
2017年8月22日更新 2017年9月1日より新宿バルト9ほかにてロードショー

悪魔的スナイパーに狙われるシチュエーションスリラー。“壁”の象徴性も見逃せない

スナイパーものと言えば、米軍とイラク・ゲリラの狙撃手対決という点が本作と共通する「アメリカン・スナイパー」をはじめ、数年に一本のペースで作られ一定の人気を保つサブジャンルだが、「ザ・ウォール」の鑑賞時の体感はむしろ、コリン・ファレルが電話ボックスから動けなくなる「フォーン・ブース」や、ライアン・レイノルズが地中に埋められた棺の中で目覚める「リミット」のようなシチュエーションスリラーに近い。両サブジャンルを“いいとこ取り”した映画とも呼べそうだ。

ボーン・アイデンティティー」や「オール・ユー・ニード・イズ・キル」などで知られるダグ・リーマン監督が、ドウェイン・ウォーレルによる初脚本の映画化権を獲得したアマゾン・スタジオズと組んだ本作の舞台は、2007年のイラクの砂漠。とあるパイプラインの建設現場で、救助要請を受け派遣された米軍の狙撃手マシューズと観測手アイザック(アーロン・テイラー=ジョンソン)が、相次いで銃撃される。膝に被弾したアイザックは必死で廃墟の壁に身を隠し、“死に神”と恐れられるイラクのスナイパー、ジューバと対峙する……。

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ジューバのキャラクターと描き方が出色だ。この敵役はスクリーン上には映らないが、照準器をのぞく視点と、無線を通じてアイザックに語りかける声でその存在を観客に知らせる。明らかに知能の高いジューバは、脅したり諭したりしてアイザックに自分語りをするよう促す。その過程で、主人公の過去が露わになり、米国の対イラク戦と復興支援の欺瞞も暴かれる。

かくして、ゆるく積まれた石壁の象徴性がじわじわと浮かび上がる。正反対の概念――生と死、自己と敵、正義と悪――を分かち隔てる絶対的な境界だと考えられた“壁”の不確かさに気づくとき、観客はもはや傍観者ではいられない(ジューバ視点の映像も、彼の立場に観客を立たせる効果がある)。単純な二項対立の危うさと脆さは、ナショナリズムと排外主義が勢いを増す今こそ再認識すべきなのだ。

高森郁哉

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